新たな仲間もクセしかない
タワーの上で見つけた、新たな生存者。
しかし話を聞く限り、助けに行かなくても大丈夫そうな気がする。
ゾンビの頭でサッカー。
四人がどんな人達か分からないけど、あまり近づかない方がいいのではないか。
「いいなあ。サッカー。俺達も混ぜてもらいに行かないかあ?」
僕がそう思っても、剛埼さんは違ったみたいだ。
とても楽しそうに、そんな提案をしてきた。
「そうねえ。仲間は、多い方が良いでしょう」
そして、それに対して雫石さんも楽しそうに同意する。
その仲間というのは、僕達の方のなのか、それともサッカーの方なのか。
どちらにせよ、僕の胃は痛くなりそうだ。
しかし、僕は助けに行くことに反対はしなかった。
こんな世界なら、生き残った人は多い方がいい。
それが、どんなにおかしな人だとしても。
来た時にゾンビを殲滅していたおかげで、タワーから降りる時は、スムーズだった。
僕だったら、自分の仲間の残骸だらけのところには行きたくないので、当然の結果だろう。
車に乗りこみエンジンをかけると、剛埼さんは勢いよく発進させた。
大体の場所は把握しているみたいで、迷いなく道を進む。
その横顔を見て、僕は彼に運転させっぱなしだったことに、今さら気がついた。
「ご、剛埼さん。運転疲れないですか? 疲れたのなら、変わりますよ」
本当に今更だと言われる可能性があるけど、気がついてしまったら気になって仕方が無いので、僕は耐えきれなくなって聞いた。
「ああん? いらねえ気遣いはしなくていいぞ。この車は、俺専用に改造してあるから、運転しづらいはずだからなあ」
「そう、ですか。疲れたら言ってくださいね」
しかし逆に気遣われてしまい、僕は引くしかなかった。
僕はまた助手席におさまって、流れる景色を眺める。
このまま数分走れば、生存者の元にたどり着くだろう。
そうなったら、まずどうやって友好を示そうか。
相手が友好的じゃなければ、こちらには剛埼さんがいるから、最悪戦争になりそうだ。
そうなった時は、避難して落ち着くのを待とう。
僕がそこまで考えた頃に、車がゆっくりと減速した。
もうすぐ、その姿を見られる。
僕は緊張して、知らず知らずのうちにシートベルトを掴んだ。
「確かあ、この辺りだなあ。そこの公園の方にいたはずだ」
剛埼さんは、丁寧に車を停めると指した。
そこは確かに公園みたいで、木々が生い茂っているから、中があまり見えない。
だからまだ、人がいるかどうかは、ここからでは分からなかった。
「それじゃあ、行くかあ」
銃を取り出した剛埼さんは、僕達の返事を待たずに運転席から降りる。
それに続いて、僕も慌てて降りた。
入り口から中を見た僕は、どう反応をすればいいのか困ってしまう。
公園には、確かに生存者が四人いた。
しかし、サッカーはしていなかった。
「おー。面白そうだあ」
のんきな剛埼さん声が、耳を通り抜けていく。
四人は、サッカーはしていなかった。
ボウリングをしていた。
そしてもちろん、ピンはゾンビ達だった。
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