危機感は、絶対に足りていない




 僕達三人は、現在。





「案外、普通ねえ」


 世界で一番高いと言われている、タワーの頂上にいる。

 もちろん電気は通っていたから、エレベーターで来た。



 ここに来るまでには、色々なことがあった。

 思い出すのも面倒だから、割愛しようかと考えたけど、ダイジェストでお送りしよう。




「邪魔だ邪魔だあ! ここは俺の道なんだよおお!」


 車や武器を使い、地面を再び血の海にする剛埼さん。


「あははは! 銃を撃つって、こんなに楽しいのね!」


 本人曰く、銃を初めて使っているはずなのに、とても正確にゾンビを殺していく雫石さん。


「が、がんばれー」


 二人がゾンビを殺しているのを、後ろで見ている僕。

 立ち位置としたら、ヒロインだ。

 二人が頼もしすぎて、ただただ守られているだけだった。


 しかし、別にヒーローになりたいわけじゃないので、守ってもらえるのは、とてもありがたい。



 そんなことを繰り返して、僕達はタワーまで来た。


 ここに行くことを決めた彼女いわく、一番高いところならば、街がどんな状態なのか分かるとのことだった。



 誰が生き残っているのか、パニックはどこまで広がっているのか。

 救いのある場所は、どこかにあるのか。


 二人には言わなかったけど、僕はそんなことを考えていた。

 ゾンビでパニックになっている状態が、いつ落ち着くのだろう。

 それが早ければ早いほど、生き残る可能性は高くなる。



 出来れば、この三人で助かりたい。

 会ってから、まだ半日も経っていないのに、僕はそこまで思うようになった。





 そういうわけで、上から街を見下ろしているのだけれど。


「……いつもと変わらないみたいだ……」


 街はパニックになっている様子もなく、あちこちで家事が起きていたり、壊れてもいなかった。

 ゾンビ映画でよくあるような感じでは、全く無い。


 しかし、それでも異常はある。


「人はいねえみたいだけどなあ」


 同じように外を見ていた剛埼さんが、その事実を口にしてくれた。



「そうね。みんなどこかに逃げたのか、それとも建物の中で籠城しているのかしら」


 双眼鏡なんて持っている人はいないから、遠くの方は確認出来ない。






「……いやあ。そうでもないみてえだなあ。あっちにいた」


 いや、双眼鏡何て必要なかったみたいだ。

 剛埼さんが指した先には、豆粒ぐらいの大きさの動いている何かがいた。

 僕には、それが人間か確認できるほど、視力は良くなかった。

 しかし一つでは無いので、複数人いるようだ。


「その人達は何人で、今何をしているんですか?」


 状況を詳しく確認できないから、僕は尋ねた。



「残っているのは四人だ。何をしているって……そうだなあ。サッカーしているみたいだ」




「……はい?」




「あれ、ゾンビの頭でやっているなあ。面白そうじゃねえかあ」




 言っている意味が、すぐには理解できなかった。



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