次の場所へ




「それじゃあ、自己紹介が終わったところで、今日はどこに行くかなあ」


終わったと言っていいのか分からないけど、とりあえずお互いの名前は共有した。

そうなると、次のステップに自然と進む。



外はすっかり明るくなって、地面にある惨劇が良く見えるようになっていた。

一面が多種多様の赤で染まっている様子は、なかなか見られる光景ではないだろう。


それを見て吐き気を催さないのだから、段々と慣れてしまったのか。

良い変化だとは、とても思えなかったけど。


「どこに行くのか、決まってないの?」


彼女は驚いたように、目を見開いた。


「うん。僕は特に、どこかに行きたいところは無いから」


「俺もなあ、武器がたくさんあるから、どうでもいいんだよなあ。ゾンビをぶっ殺せたら、何でもいいからよお。たくさんいるところにでも行くかあ?」


「そんな無計画で、ここまで来ていたの。……全く。だから男は、駄目なのよね」


呆れた様子で言われてしまい、僕と剛埼さんは顔を見合わせて笑うしかない。


「そうはいっても、こんな世界になったから、行きたい場所なんて思いつかないんだよね」


「ゾンビがいれば、どこでもいいなあ」


剛埼さんは、ブレない。


彼女の深い深いため息が聞こえてきて、そして更に呆れた声を出された。


「こんな世界になったから、こそでしょ。いつ死ぬのか分からないし、好きなことをいっぱいやりたいじゃない」


何だか、彼女らしい言葉だ。

そこまで言うのなら、彼女の行きたいところに行こう。


「それなら、どこに行く?」


「そうね……」


形がよく潤っている唇を触りながら、彼女は強気な笑みを浮かべた。



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