第494話―深緑の上ファイヤーワークス―

夏休みという長期休暇は終わり、

俺は今日も就職活動を後回しにして執筆に専念しようとした。


(冬雅や花恋たちの夏休み期間ここ毎日はデート続きだった…。

つい時間があるからと付き合っていた緩みに執筆を疎かにしてしまった。

けど今日は俺しかいない!)


椅子に座りテーブルの上にはパソコンそして長期活動のためにコーヒーや参考の本を数冊と置いてある。

燻っていた熱意と意欲をここから開放して爆発させて時間を気にせずに思う存分に書くんだと今日の予定は

決めていた。

さあて、そろそろ取り掛かるとしますかなとキーボードを最初に打鍵音を鳴らした。


(久しぶりの執筆…こんなに心が踊るものだったのか。

楽しい、本当に楽しくなってきた!)


いい大人なので口にはせず心の中だけでハイテンションに叫びながら打鍵音を音を止まらず音を出し続ける。

そして満足のいくエピーソードを2つ分を書き終える。少し休憩を取るかと席を立って冷蔵庫からヨーグルトの容器を出すとスプーンですくい皿に

移して容器を元の場所に戻してから席に戻った瞬間、上階からスマホから着信音がな鳴り響いた。


「んっ?」


こんな時間に誰だろうか?

大学で講義を受けている冬雅と真奈は

正午にメッセージを送る。花恋たちの場合は授業が終わって友達と駄弁っているはず…いや、猫塚さんの場合は……ちょっと孤高なアイドルで、どのタイミングで連絡してもおかしく

ない。もし話し相手が欲しいなら

執筆を休憩している俺としては話し相手として付き合うかと居室を出た。

そしてそれが軽率な行動だと後に俺は悔やむことになる。


「あれグレイスさん?

俺に連絡を送るなんて何かあったのかな?相手を間違っていないかな」


スマホ画面にはグレイスさんと表示されていた。登録しても俺はさん付けしていることに我ながら変に清廉潔白

な面をしていると苦笑をこぼす。

あの人から俺を頼ることなんて無いだろうし要件は、十中八九にサファイア家の令嬢であるペネお嬢様だろう。

文面にはこう書かれている。

『SOS。人手が足りなくなった。すぐに馳せ参じなさい』


(この文面からして忙しいのが窺えられるなぁ。さてどう断ろうか)


なにを返事をしようかと俺は迷っていた。でも雇い主ではないとはいえ権限を多くを持つ麒麟児きりんじ

グレイスさんに逆らうと後からなにを言われて無茶な命令を下されるか想像にもしないし分からない。


「小説はかなり書いたし続きは夜中でもいいか」


承知しましたと返事を送って俺は身支度をスピード重視で済ませてから外に出るのであった。

電車に飛び乗ってから窓を閉めたかなと脳裏に過るのだった。

駅に降りて速歩きでサファイア家にたどり着く。エントラスホールには

走って駆け寄る美しい碧眼の少女。

いやグレイスさんがなぜかストレスを抱えているように眉根を寄せて出迎えにきた。


「すぐ支度を、ご夫妻様の大事なお客様がここに伺いになるので、その前におもてなしをしないといけません。

トウヨウの役目は料理の下働きと…色々です」


「わ、分かりました」


「それではお願いしますよ」


切羽詰まっている表情をしているが少し乏しいのはグレイスさんらしい。

そして行動は広さのある回廊を駆け足で進んでいるのを見ると時間がないのが如実に表れているのが

不足した言葉を補足するように俺は状況をなんとなく理解する。


「雑用か…その指示は曖昧だから判断するとして大事なお客様って誰だろうか…」


ともあれまずは仕事をこなさないと。

ついグレイスさんに返事を承知ではなくラフな印象のある分かりましたと

返事をしてしまった。

サラリーマンじゃ無くなって長く経過したからだろうかと置かれた環境を考えている場合ではないと俺も準備に手伝うのであった。

やっと膨大な量をさばいて俺とペネロペさんは使用人のため食堂室で食事を取っていた。

片付ける頃には大事なお客様と呼ばれる人が訪れたもよう。ただの盛り上げる役目にすぎない俺にはもちろん

呼ばれることはない。人とあまり接したくないのでそれは安堵もの。


「うぅーん、やはり汗水流して一仕事を終えたに至宝の甘々である

シェパーズパイは非常においしい」


イギリスのミートパイでおるシェパーズパイ。コテージパイとも別の名前でもある。なかなか笑みをこぼさない

グレイスさんも好物の前――もとい

舌の上では頬を緩めてしまうらしい。

使われる食材の基礎的なものとされるマッシュポテト、パイ皮、牛肉または羊肉で焼いて作られたもの。

古くからは余りもの肉や残りもので作られ経済的にいいとされる料理。


「ええ、あの人数で広大な屋敷を掃除でしたからね。

食べている姿を見ているとグレイスさん本当に好きだって思いますよ」


今いるのは俺とグレイスさんだけ。

テーブルに挟んで一緒に昼の食事を取っている。

俺も同じようなものにしようかと検討したが普通に海鮮丼と味噌汁にした。


「……んんウゥッ!?コホ、コホ」


勢いよく食べたせいかグレイスさんが聞いたことない声でせた。


「だ、大丈夫ですかグレイスさん?

そんなに急いで食べるのよくないですよ。一応は女の子なのですから」


「貴方が言う一応の女の子には後でじっくり聞かせてもらうとして。

……好きって。と、唐突になにを仰っているのですか!?」


「えっ?好きってシェパーズパイのことでは……あっ!ごめんなさい」


よく見ないと気づかない程度に頬は赤くなっており態度もどこかよそよそしく何かあったのかなと思ったが

ようやくなって自分の失言に気付かされる。さきほどに言ったことはナチュラルに告白のようで日常的に使ってしまうようなセリフ。


「はぁ?…あー、そうですか。

どうやら私は貴方のお得意とされる淑女を翻弄させる詐術さじゅつに掛かったのですか」


「語弊があると言って否定したいけど…今回はあまり強く言えない。

あの意図的のように思いますけど言葉が省いてしまい言葉がナンパみたいになったのです」


「そんなバカな話を信じれと言うの無理があると自覚なさっては?」


「そ、そうなのですけど…」


そんなバカな会話は日常茶飯事にやっている。とくに奇策が得意である冬雅に影響を大きく受けている。


「余談でありますが。

ペネ様を楽しませるだけよ貴方から見て、お嬢はご友人とは上手くやっていますか?」


「ええ、年齢の近い友達と楽しく遊んでいますよ。……アクティブな

ところもありますが」


最初に出会ったときも自由奔放がさらに磨き掛かるように奔放。

そんな質問されるのは会話あまりしていないのかなと少し心配になる。

それを聞いたグレイスさんは優しそうな笑みをこぼすのだった。

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