第490話―ツムギ様はくじけない―
オリンピックが終わりコロナ2年目の夏休みはそろそろ終わりを迎えようとしていた。
今年の期間は俺の時代とは違い全国での期間が8月24日までとなっているようで花恋たち高校生組はそんな話題で盛り上がっていたのを耳にしたことがある。もうそんなに残っていない期間を花恋たちは勉強に励んでいる。
そんなわけで今日のメンバーは大学生などメインで遊ぶことになる。
冬雅と真奈の大学生それと現役高校生の
「せっかく高校生を卒業しましたのでちょっと大人ゲームを手に入れて来ましたよ。
えへへ、このゲームはなんだと思いますか?お兄ちゃん」
にこやかな冬雅は両手で大きな箱を持ち歩いてテーブルの上に置いたのは
カジノルーレットと書かれた箱。
もう答えが目の前にあるわけなのだがボケたほうがいいのかな?
置いた物とは関係なく別の事を言っているのだろうか。
どちらにしても唐突なのだけど。
「うーん、レーティングがゼットのゲームとかかな?」
「あー、惜しいです。
わたしが持ってきたのはカジノにあるルーレットの家庭版です」
「裏を読んだら表だったか…。
ともあれどうしてカジノのルーレットなんかを?」
「理由は、さきほど説明したつもりでしたけど大人ゲームだからです!」
「そ、そうか。よく分からないけど分かったよ」
伝家の宝刀であるスーパー冬雅ロジックに俺はもはや疑問を抱くのを無視して無理に納得することにした。
それに興味は置かれたルーレットの方に惹かれている。
ルールとか完全に知らないけど虚構の中ではカジノのルーレットを取り扱ったのは定番と言っていいほどある。
「お兄さんが興味のあるゲーム楽しめそうだけど冬場ワタシが知ると、
このボードゲーム版の箱ってうろ覚えだけど、とても高かったような」
「さすかは真奈。
伊達にあらゆるゲームに流通していないですねぇ。うん、その通り
これでデート出来ると思っていたら高いのを注文しました。
なので、わたしの手元はまたも軽くなりました」
俺の位置から右に座っていた真奈が質問してから声を発していないことから引いているのだろう。
そして俺の関心はカジノの箱にある裏の説明文であり黙読中である。
ふむふむ、カジノにあるルーレットはおよそ約300年の長い歴史にある最も古いとされるカジノゲームなのか。
「兄ちゃんのためそこまでするか…。
でも大好きな人の為にそこまでする
フユミン少しだけ
言動だけでも猪突猛進なのに
購入の判断基準も俺と遊ぶためならと迷わず買うのも行動力を発揮しなくとも思うのだが。
それだけ想ってくれての行動力には少踊りしたくなるほど嬉しいが、その
愛情分だけ今度は俺が努力して返さないといけない。
そうしないと対等でさえないような気がするからだと俺は思う。
「率直な疑問すけどフユミンどうしてカジノルーレットを買ったの。
ボードゲームにするなら、カジノもどきじゃなくてパーティー用で向いているゲームならたくさんあるじゃん」
そんなひらっとした疑問を不死川さんらしく言った。
そこまで気にしていない声の質から
軽快で答えても断ってもどっちでもよさそうな捉え方がされる。
おそらく意図的にそうした雰囲気は出してもいないかもしれないが。
これ以上を考えても答えが無さそうなので思考をどしてこれかと向ける。
(いくら冬雅たちと多種だなゲームをしたとはいえ、まだ色んなゲームがあって遊んでいないのがある。
だからこそ、何故このカジノルーレットのボードゲームにしたのか)
ちょうど説明文と基本的なルールを頭に入れてから俺は冬雅のいる向かいに視線を送る。
すると目があって冬雅は3度も目を逸らしてから戻す。もしかすると心の準備とかじゃなく急襲みたいにされると顕著な反応を示すのかなと
振り返ってみるが過去にそんな反応は
あった。
「えへへ、なんだか真の狙いがあるとか策謀を巡らしているような流れになっているけど、本当にただ
面白そうなゲームだなと衝動的に買っただけですよ」
困ったように苦笑して赤く染まる頬を小さな指で掻く。
あの反応は嘘ではなさそうだ。
すっかり固定概念となっている冬雅は
策士で勇敢な女性であることに。
恋愛となればどんなことでもするような彼女を。けど、そうした期待の
ような人物像がただ本能的に欲しかったことを。
どんな立派な人でもそうした物欲と本能的に従うことに未来的な予測なんて回っていない。そんな当たり前のことを失念してしまった。
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