第486話―告白の駆け引きは賭場のよう弐―

覚悟をしておこう。

確実に今日から冬雅は、過剰なアプローチで告白で惹きうけようとするはずたろう。あの告白は激流だ。

なんの対策も講じずに明日を迎えると為す術もなく冬雅の望んだ方向へと運んで進みそうで少々と警戒をする。

けど夜じっくり策を練るにしても迫りくる奔流の愛情をぶつけられて耐えれるか自信はない。

そして無計画のまま翌日を迎える。


「だいすき…えへへっ照れますね。

それじゃあ有言実行させてもらいましょうか?手を握ますねぇ」


「うるさい事を言うようだけど照れるようなアプローチしなくていいんだよ冬雅」


「いえ、絶対にやめません。

わたしがお兄ちゃんを告白するのは呼吸でルーチンのようなものです。

それを始めてから、ようやく自分という存在の息吹いぶきをするのですので」


「おぉー、カッコイイ…いやいや。

普通に告白する程度おさまるぐらいが良くないでしょうか?」


場所はリビング。門をくぐってから冬雅はすぐに行動を起こした。

真っ当から攻めてきたら俺は水を差すような言動して熱を下げされるという奇策を決めた。そもそも長い付き合いになる冬雅が通じなかった。


「ふーん、ふーん。西風が吹いて太陽が昇り始めてお兄ちゃんと歩くのです――」


という謎の歌を始めた。おそらく天然からとか舞い上がっての余興から起きた行動ではなく心をつかもうと狙いがあるのだろう。

でも調理や勉強などは手を放さないといけないので繋いでから数十分。


「むうぅ、手をずっと繋ぐのって現実的に難しいものなんですねぇ」


いちゃつくのは難しいと冬雅は難しいと呟いて素直に手を放した。

繋いでいる間はドキドキする一方で策を看破するための思考を巡らしていた。さて、そんなしのぎ合いみたいなことして朝の食事を一緒に取る。

すでに暗黙の了解でスマホを弄らず余裕あるなら一緒に食べるというルールが我がリビングに普及している。

そして冬雅はこのときも左手をテーブル下で俺の右手をさり気なくと握る。

考えてみれば、これ映画デートの彼氏がよくするシチュエーションでは?


「きょ、今日はとくに暑いですねぇ」


「いきなり手を握るとか思い切った行動すればそうなるじゃないかな?」


「えへへっそうかも。寒い時期には、もっとイチャイチャしないとですねぇ。……楽しみにしてください」


「不安しかない予告なんだけど」


この日に励んで積極的になっている冬雅を熱を冷めさせるには冷静な言葉では効果は皆無だったようだ。

いつもより静かな朝食を終えて俺は冬雅を外に出て駅前まで見送るため支度する。支度を終えて玄関に進んでいると脳裏によぎった。

いつもより静かと感じたのは冬雅が羞恥に堪えて口数が減っている。そんな本人から確認してもいない不確定な憶測なのに俺の心はたじろぐようになって冬雅を駅前まで会話をほとんどせず見送るのだった。このご時世なので手を握るのは控えます。けどドアノブとか触れていない綺麗な手なので通学中なら大丈夫ですよねぇと冬雅は俺の返事を待たずに右手を握りだした。


「冬雅…デルタ株が広まっている。ご時世だから手を握るのはどうかと思うんだが」


「でしたら」


大学を通学する冬雅はカバンから取り出したのはウェットティッシュであった。それを2枚を取り出して一枚を差し出してくれた。ふむ、これで消毒して手をにぎるデメリットを減らすのか。なるほど…そこまでやるのかと思いもしなかったけど冬雅ならそこまでする。


「さぁ、行きましょう。お兄ちゃん」


改めて小さな手を再び握られる。

これを習慣化されるだろうなぁと俺は後々のことを考えると嘆息したくなった。見送ってから俺は小説を執筆を始めた。イマジネーションが起こして執を進めるが、進捗は2000ページほど。

夕日が沈む時間帯の前にアクティブの日である冬雅が帰って来た。…いや、訂正しなければならない。帰ったのではなく遊びにやってきた。

まず先に冬雅が向かったのは例に洗面所で俺は先にリビングに入る。そして洗面所から出て居間に入ると冬雅は、積極的に手を握ってきた。


「手を洗いましたので続きをしましょうか。えへへっ、今日は手を離しませんよ」


「それは参った。

おっと、すまない冬雅トイレに向かうから手を離してくれないか」


「……仕方ないです」


もちろん恋愛的な空気を破壊するための言葉だった。それから俺はことごとく冬雅の攻撃を回避すること成功した。そして新たなるカードを俺は召喚をする。


「こんにちは、お兄さん。熱々と誘ってくれて本当にワタシ嬉しかった」


「は、はあっ!?東洋お兄ちゃんそんなクズな所業をしたの」


そう捉えても仕方ないと思ってしまうことを口にして舞い上がるのは平野真奈。そしてその隣には憤慨しているのが花恋。

二人を呼んだのは冬雅の行動を抑止するためでもある。ただ一方的にやられるだけだはない。俺も冬雅の対処法はそれなりに学んできているのだ。

あまり上策とはいえなくても効果は現れた。冬雅は現在リビングで真奈と花恋の三人でヨガを始めていた。

これを提案したのは花恋で身体を動かすのが趣味としている女子高校生。

この中で真奈だけが難色を示したが冬雅と花恋に押される形で参加することになった。

その間に俺は3人分のタオルを用意してダイニングテーブルで執筆を続ける。好きな人がいる中でラブコメを書くのはなかなか集中できないものだ。


「お、お兄さん疲れました」


汗を書いて隣の椅子を引いて倒れるように勢いよく座るのは真奈。

運動が苦手な真奈にしたら珍しく長く続けた。

そして当たり前のように、さり気なく、違和感なく手を握る。


「頑張ってね。はいタオル」


「ありがとう………」


「?」


「あ、あの!!お兄さんワタシを拭いてくれませんか」


「「「えっ!?」」」


真奈は顔を赤らめても逸らさず要求をした。これには思考はフリーズしてしまう。

言葉を意味を冷静に分析をするようになったのは少ししてから。おそらく汗がついた顔を代わりに拭いてほしいと真奈がそうお願いしたのだろう。

そう解釈した。それ以外の可能性は無いものとして排除して。


「あっ、そうか。真奈の顔を拭けばいいんだね」


「は、はい」


それでも真奈の顔を拭くのは途轍もなく抵抗感と背徳感があって結果、額あたりだけ拭くだけにした。

そして夜の帳が降りると真奈と花恋を家に見送ってから冬雅と一緒に帰路につく。帰り道はなぜか冬雅から会話が少なかった。

二人分のコーヒーを淹れたカップを持って座る。


「お、お兄ちゃん今から…わたしをタオルで拭きませんか?」


「…答えはノー」


即答をしたかったけど思った以上に誘惑に負けそうになって口に出すのに少し遅れてしまうのだった。

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