第444話―不可避エクスペンスの荒波2―
「お兄ちゃん決めました」
「決めたって、また急に。それで冬雅なにを決めたのか、省かずに説明を」
「今日の予定は、お兄ちゃんイチャイチャ決めていましたが取りやめます。
今からすぐに、かわいい女の子をじっくり眺めながら絵を描くことを宣言
します」
「………」
男性のイラストを描きたいとお願いをされて俺は快く協力することになって
数分後に冬雅がスラスラと止まらずに動かしていた筆を止めて、口を引き締めて真剣な表情になったと思って
俺は重要な話をするんだと心に覚悟を決めて受け入れる準備、そして
先程の発言。絶句した。頭が真っ白になった。ここで整理をさせるために、少し振り返よう。
大学のリモート講義を終えた冬雅が、今日は自宅から俺の家にやってきた。
開口一番が、ただいまなのは最早ツッコミはせず。
それから手洗いして、リビングに行き例の告白を受けて表情に出さないよう意識しながらお礼を伝えた。
軽い談笑のあとは絵のモデルになって欲しいとお願いされ承諾、そういう流れだった。フム、だとすれば。
(みんなが冬雅を変態、変態と騒いでいたのは
本当に…冬雅は変態なのか?)
これが俺をからかいの類や反応を試すようには見えない。
それに目だって純粋で真っ直ぐだし並々ならぬ気迫のような感じるほど表情もしているのだ。
これがそうだとして、そうであるであるなら俺はどうすればいいのか。
だとすれば俺は、何って言えばいいのか……いや、待って。そもそも本当に冬雅がそんな動機だろうか?
そんな醜いような劣情を抱くような子じゃないはずだって俺がよく知っているじゃないか!!一瞬そう疑ってしまった自分に後悔と羞恥の念が湧く。
「そうなのか。ちょっと驚いてしまったけど急にどうしたんだい?
美少女を描きたいなんて」
「わたしには持っていない魅力と言いますか?個性的なかわいさを描きたいんです。
つい食べたなるぐらいのかわいさをです!」
「そ、そう…なのか……」
ど、どど、どうしよう。個性なかわいさとか食べたくなるぐらいのかわいさを照れるどころか堂々と言葉にしている。まさか…冬雅が同性にも恋愛対象を持っていたとは。
(これを仮定すれば…見方が変わってくる。冬雅と仲がいい女の子のほとんどが容姿端麗だ。女の子と笑って話す姿をよく見るし、たまに男性と話をするのを見るけど完全に壁を作って
業務的な会話だけ。
確信した。冬雅は可愛い女の子が好みなんだ)
「あの、お兄ちゃん難しく顔をしていますけど何か悩みでもあるのですか」
「いや、見てのとおり平気だよ」
「そうですか」
脊椎反射に応えると冬雅は眉根を下げる。どうして悲しそうにしているのか不思議に思ったが俺の返答が原因だ。
普通なら落ち込むような応えじゃないが冬雅の立場と性格を考慮すれば、他の人とは違い受け捉え方が違う。
悩みを打ち明けるかさえも
「うわぁ!?よく眺めたら冬雅すごく可愛くなっているね」
「あはは、ありがとうねぇ言ってくれて嬉しいよ…お兄ちゃん」
喜んでネガティブを忘れさせようと褒めてみたが意図を読まれて失敗した。
これは露骨すぎるなぁと言った直後に自分でも気づいたことであるけど。
(
とりあえず推測を続けるとして、冬雅が女の子が好き百合であるなら納得する箇所がたくさんある。
百合か…冬雅と相手は真奈だとすれば―――はっ!あまりにも尊い過ぎたあまりに思考が飛んでしまった)
俺は百合には大いに寛大。いやはっきりと主張しよう!女の子同士が照れたりデートする場面が、すこぶるに大好きなのだ。あるときは百合成分が足りずに精神の栄養不調で倒れそうにさえもあるほどだ。
「その、お兄ちゃん休憩しませんか?
ずっと同じ体勢だと疲れますので」
すごく心配させている。涙目とまではいかないが整った顔立ちが憂いの色となって心の底から体調を気遣っている。そうなると本当に申し訳ないのだが考えている内容は決して言えない。
いつもであるなら包み隠さずに行こうと決めてはいるが内容が内容で、変態なのか疑念を持っているなど言えるはずがない。
「今日はぐっすり睡眠を取ってはいるし今日はとくに体調が絶好調だから
休憩はもう少しでいいよ」
「……分かりました」
すごく納得していないと顔で、分かりましたと冬雅は返事をする。
イラストを向上こためとはいえ迂闊だったかもしれない、絵を描いているから冬雅は俺を矯めつ眇めつ描かないといけないから細かいところまで見ることでもある。百合のことを妄想するのはやめておくとしよう。
(美少女の絵を描きたいと願望がある冬雅にどう対応をする?
もし、これが女の子を好きになったであるなら複雑な気持ちだが俺よりも好きな相手がいるなら心から祝福するつもりであった。
けど、問題は恋愛対象ではなく美少女の絵を描きたいセリフ。もし相手を尊重など無視をした欲望のままに走るのなら止めておかないといけない)
考えすぎかもしれない。
前にも俺は一人で考えて考え抜いてたどり着いた仮説。それが当たっているか確認など取らずに話を以前は進んで爆散した経験がある。今回はその失敗を踏まないように選択しないと。
「お兄ちゃん悩んでいますよねぇ」
「えっ?」
思考の渦から現実に切り替えり、冬雅の顔をよく見た俺は言葉を失った。
泣いていた。頬を伝う水滴は、あごにまで通達するほど時間の経過を報せるのであった。
「まだ不要に悩みを言えない事情は、なんとなく察しています。
ですけど、そこまで思い悩んでいるのでしたら教えてください。
わたし、お兄ちゃんの未来のお嫁さんですから」
手に持つタブレット端末とペンが落ちて音が鳴るのも気に留めず冬雅は
近づいて感情をぶつける。
頼ってもらえない悔しさと不甲斐なさ。きっと、こんな激情に駆られるのもしたくないのだろう。
もしかしたらこう思っているのかもしれない――悩みを打ち明けたい、悩みを打ち明けるだけの存在感になりたいという
それまでストレスで我慢していたかもしれない、これが引き金となって爆発をしたのかは判断材料が少ない。
「そうだよね。そうだった冬雅は、いつか妻になるかもしれない。
冬雅、ごめん。余計な負担をさせてしまっていたね。悩みを打ち明けさせてもらうよ。実は悩みというよりも
お願いになるんだけど」
「お、お兄ちゃん……うん!
どんなことでも全力で答えさせていただきます。
一緒に乗り越えましょう!」
頼もしい言葉で冬雅は言った。
その誠の気持ちは大変に嬉しい。だけど今から言うのは冬雅が変態となる前に辞めさせること。
性的な目的で美少女の絵を描くことを俺は決心して言うことにした。
そして最後まで聞いてくれた冬雅の反応というと。
最初はどんな言葉を聞き逃さない強い意思で耳を傾け、相槌を打つ。
途中から首を傾げたり疑問符を浮かべていた。
しかし確信になった恋愛対象が女の子でもあるところで放心状態となっていた。どこまで当たっているか分からないが全て伝えきった清々しい気持ち。静聴した冬雅の反応が、ポカンと茫然自失から復活したと思ったら
顔を赤らめて大きく口を開いた。
「お兄ちゃんそれ誤解ですよ。
美少女を描きたい動機は、鏡に映る自分を限界を感じたからです。
わたしとは違う女の子を参考にしたい意味でして邪な理由なんて、ありませんからねぇ!」
珍しく怒りが含まれた声で高々と叫ぶ冬雅なのであった。
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