第433話―絶対は無く真奈と離れて生活―
ゴールデンウィークが終わって翌日。
その日は真奈は元気で、落ち込んでいた。どうしたのか聞いても笑って誤魔化すばかり。それは午後3時になって告げられた。
どうやら両親が真奈と離れて寂しさに堪えられなくなってしまったこと。
正直、未成年である真奈に既成事実を勧めるのは駄目だと呆れていたが真奈がいないのを考慮すれば同感だ。
冬雅と絶縁に近いときには真奈に支えられたことがある。
「お兄さん家まで送ってくれて、ありがとう。ワタシがいなくても冬雅がいるから頑張って」
夜の帳が下りて家に送る。もう女子大学生だからとはいえ痴漢とかあるかもしれないし、変なスカウトに断れないのも考えれば送るのが当然。
門扉に足を踏み入れて振り返って、
真奈は俺を思っての利他的な発言を
する。
「真奈は心配性だね。俺よりも新しい学校とか自分のことじゃないかな」
「それには心配ありませんよ、お兄さん。充実していますので」
六大学の中で頂上にあたる東大を合格した真奈。もし真奈を会わずにいたら俺は緊張感で、住む世界が違うとバカな事を考えて距離を置こうとしていたかもしれない。
いつも隣にいて支えられぱっなしで居てくれないと困る大事な一人。
「お兄さんその…慕っている。好き」
「ま、真奈!?」
人間的に好きと言うにはリンゴのような顔や声を考察しなくとも告白!?
「好き好き好きそれと大好き。
お兄さんの中では、冬雅を選んでいるのは知っています。でも、お兄さんが隣にいないのは…苦しすぎるから。
絶対に、ワタシがいないと満足しないようにみせますので覚悟してねぇ」
勢いで言い切った真奈は息切れをする。面と向けられた俺は頭が真っ白になって思考が停止になる。
「………」
あの真奈が冬雅のような告白?真似をしようと出来るようなことじゃない。常人、いやメンタル強い荒波を受けて生きてきた超人であっても出来るようなことじゃない。
「あ、あの…バイバイ。お兄さん」
激しく狼狽した真奈は手を振る。
「あ、ああ。真奈、また会おう」
逃げるように走って真奈は振り向かずに家の中へと帰っていくのであった。
なんだか寂しい。
「あ、あの…静かに見守っていたのですけど。もしかして傍からみると、わたしって告白するとき先程みたいに
熱例なのでしょうか?」
いつもと違い妙に他人行儀な訊き方をしたのは冬雅。えぇー、それを俺に聞くの?また恥じらうのを狙っての
質問かと疑ってみたが、どうやら違うようだ。恥ずかしさに耐え悶えている可愛いでごわんす。
「それ以上だと答えておきます」
「…そ、そうですか」
そりゃあ冬雅は、普段からどれだけ過剰なアプローチをしているのか自覚する良い機会だったと思う。
これで少しは落ち着いてくれるはず。
そして次の日が訪れた。
「お兄ちゃん遅くなりましたけど帰ってきました。えへへ、キス代わりに大好きだよ!お兄ちゃん。えっへへ」
玄関を開けると満面な笑みで挨拶するかのように熱烈な告白してきた。
昨夜のあの返事はなんだったのだろうかと思っていると諦めた。だって冬雅だ、理由を尋ねても大好きだからと
返ってくる。
「おかえり冬雅。それで今日は弟の
「弟さんが。早く挨拶しておかないと、いけませんねぇ。わたしたちが、どれだけイチャイチャしたのかを
刮目してもらうために」
靴を脱いで冬雅は、迷わない足取りでリビングへ向かって入っていく。どこにいるのか伝えていないのに。
って、それよりも今は大きな声はまずいのだ。
「待ってくれ冬雅」
突入する冬雅を追いかけて飛び込む。
ソファーの上で大きないびきを出しながら寝ているのは移山。ゴールデンウィークでも働いてビジネスホテルで休んだりと繰り返していた。
ようやく帰ると、こんな有様である。
「グウゥー、フウゥー」
起こしては、まずいと冬雅は両手で自分の口を防ぐ。そんな、あざとい仕草を自然にするの初めて見たよ
現実では。
「…起こしたら、まずいですねぇ」
「そういうこと。上に行こうか」
「はい」
素直に頷いて冬雅は、付いてきて俺の部屋に入る。そういえば泊まっていた真奈の私物品が持ち帰るの一部だけ忘れているのがある。
あとで遊びに来たら出る前に渡して置こうと思って元の位置に戻していると
背後から抱きつかれた。
ここにいるのは冬雅と二人だけ。
犯人は誰なのか一人しかいない。もし、コナンでしたら真実はいつも一人…あれ一人と戸惑っていたかもしれない。その前に、これ事件のようで事件じゃないけどね。
「えーと冬雅さん?過剰アプローチ」
「えへへ、どこが過剰アプローチなのですか?キスとか…していないですよ。う、うん」
恥ずかしいならキスというワードを言わなくていいのでは?そんな自滅していくような半ば呆れながら部屋でイチャイチャするのは、まずいと俺の中で警鐘が鳴り響いている。
良識が高い真奈なら、ともかく初志貫徹で勇気と思いきや蛮勇の冬雅だ。
彼女なら策を弄するのは得意で雰囲気を作られたら問題なんて起きない確証がない。
「ワン、ワン」
「えっ?なにを犬の遠吠えの練習ですか? 」
肩を回していた両手を離され、反転して冬雅の頭の上にあるものを見て俺は頭を抱えたくなった。
しているのだ犬の耳カチューシャを。
「えへへ、かわいいワン?」
大学用の私服まま犬耳カチューシャ。
いつもの気合の入った冬雅らしくないクオリティであるけど少し違う日常感が上手く醸し出している。
「可愛い。すごく似合っていて可愛いよ。猫耳が可愛いと思っていたけど
冬雅の
ここまで可愛くなるとは思わず俺は舞い上がっていた。おそらく好きな犬の簡易な姿と言葉遣い、そして想い人の冬雅のダブルパンチは理性を吹き飛ばすには強い威力だ。
「そ、そうなのですか…あの。
そんなガッツリと可愛いを言われると、いくら変態のわたしでも恥ずかしいですよ」
前のめりになり過ぎた結果、冬雅は羞恥に顔をうつむけるのだった。
語尾にワンと忘れているし急に悶絶を見せられても俺が困る。
「なんだか、ごめん。あと周囲から変態と変態って言っているけど心の中では本当に変態だって思っていないよ
………たぶん」
最後の呟きは小さないので聞き取っていないはず。
「ううん、ここまで喜んでくれて嬉しかった。これ以上のドギマギを仕掛けるのは心情的に厳しいです。
………わたし変態ですし」
まさか聞こえていたなんて油断していたなぁ。けど冬雅の過剰なアプローチは無いようだ。これなら、
ゆっくりと過ごせそうだ。そう安堵を
していると冬雅は人差し指を椅子に 向けて上目遣いで顔を上げた。
「で、でも…始まったばかりですし頑張ります。お兄ちゃん椅子に座ってください。いっぱい気持ちよく
させます」
冬雅よ、言葉を意図的に使っているのだとしたら言葉を選んだ方がいいぞ。
俺はおもむろに椅子に座って何をされるのか考察をする。
膝の上に座る?頭を撫でるとかは?いや、それともハグされるとか。
「行きます!わ~ん、わ~ん」
よつん這いになると冬雅は、そのまま四足歩行で歩きながら俺の足元で頬を
「え、ええぇーー!?」
これ完全に変態の発想じゃないか!?
確定だ冬雅は変態であった。唯一の助けは首輪とかロウソクを使わなかったことぐらいだろうか。俺もその辺には詳しくないし今後それを知ろうともしなくない。
移山が目覚めたのは日が落ちてから。
ノックもなく部屋に入ってきた移山は、冬雅が俺の膝上で寝転がるという行動を驚いた顔で見ていた。
「ごゆっくり」とドアを閉じたときは誤解だ!と誤った解釈を解くのにかなり時間を要するのであった。
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