第434話―フィクションな空の得恋―

一陣の風が吹くように、

パソコン画面を向かう俺はキーボードを素早く叩いて文字を綴っていた。

だいぶ前に冬雅たちがオンラインで行った小説の読書会、それで得られたのは大きかったが客観的な意見には落ち込んだりもしたが本当に色んな人の意見には助かった。

執筆者が気付けないところを読者は気づいてくれるのを認識はしていたがつくづくにその思いは強くなった。

こんな俺に、ここまで協力してくれるのに本当に感謝しているが彼女たちを稚作を読んでくれたことに多少の

罪責感ざいせきかんがあった。

そこは自分から進んでおりお願いはしていない。

だから俺から頼んでもいない事を勝手にしたのだから自己責任なんだからとは俺には、そう考えられなかった。

俺は大人であり子供に施しを当然のように受けるのは良くないし本来なら

俺が協力してやるのが義務があると思っている。けど、そんな理屈で

助けようとする精神や心遣いを無駄にしたくないのと口にするのも憚る。

いずれ施しをあとで返さないと。


「よし!これで15万文字、一冊分は終わった」


修正とエピソードの続きを書き終えて数時間が経過、気が緩むと遅れて襲ってくる達成感と脱力感に俺は椅子の背もたれに体重を預ける。

小説の一冊分とされる最低限の量は10万文字なのだけど区切りをなかなかつけられす予想よりも超えてしまい

書き終えるのは小説希望者でも

あると思う。


「お疲れ様。お兄ちゃん疲れているから紅茶と、お菓子を食べて

元気になってください」


俺の上を覗いて、にっこりと微笑むのは冬雅。早朝から家に上がってオンラインの勉強していた。無我夢中になって気が付かなかったが俺が終わるのを予測か待っていたのか、食事を持って労いに来た。

でなければタイミングが良すぎる。


「食べる前提なのか」


「迷惑でした?」


「そんなはずないよ。お腹空いていたし、甘いの取りたかったところだったんだ。

それに冬雅が作ってくれた菓子を食べるの楽しみだから甘党としては

断る理由は無いね」


「わあぁ!?目の前でそう言われると嬉しいけど恥ずかしいよ。

えへへ、でも凄く嬉しいよ。今日はお兄ちゃんの好物のシャルロットケーキですよ」


「なんだって!?それは本当に好物で小踊りしたくなるなぁ。

……やっぱり量が成人男性の1日分だけありそう」


「えへへ、たくさん食べてもらいたくて。でも喜ぶのを妄想もとい!想像しすぎましたねぇ。

一緒に食べましょう。

それに残ったら次の日に食べればいいですので」


「そうだな。無理して食べ切れる量じゃないからなぁ。俺からすれば明日も食べれるのは最高かな」


「今日のお兄ちゃんテンション高いですねぇ。えへへ、かわいい」


「そうかな?ともかく数万倍に可愛いのは冬雅のは間違いない!」


「えへへ、そうですか?それじゃあ、お互いあ~んして食べ合いっこ始めましょう」


ひしめき合うように湧き起こる幸福感

で疲れが嘘のように消える。

そんな幸福感は冬雅の笑顔を窺っていると幸せそうに笑顔している。

冬雅は、フォークでシャルロットケーキを一口サイズに分けて切ると、そのまま刺して俺の口に運ぼうとする。

この展開に抵抗をしても最後には食べる結果になるのを学んでいるため素直に口を開けて咀嚼することにした。

女性の帽子を見立て作られたのが、シャルロットケーキ。味の方は、

レシピを教えてもらいたいほど絶品。


「以前よりも美味しいよ冬雅」


「えっへへ、お兄ちゃんを喜んでくれる顔をしてくれるのを想像して

上達しました。……あのがんばった

女の子のお礼に、あーんを」


「そう、だね。分かったよ」


自己研鑽したシャルロットケーキに舌鼓を打つと冬雅は、一段と輝いて笑みを浮かぶ。

そして、食べ合いを求められたので俺は諦念の気持ちで冬雅の口にフォークで刺したケーキを慎重に運んだ。


「あのなぁ、イチャラブすることには反対はしないけどよ。もう少し

控えてもらえないか?

甘々な雰囲気が溢れ過ぎだぞ!

苦いはずのブラックが甘いんだげど

二人さんよ」


そう不満を吐くのは頬杖をついていた弟の移山。

俺の向かいで、のんびりと座ってスマホゲーム(おそらくウマ娘プリティーダービー)を俺たちに一顧だにせず遊んでいたのだがさすがに堪えらなかった

ようだ。


「あっ、ごめんなさい弟さん。

また周りが見えなくなっていました」


「愛は盲目的と言うけど、それを現実で見たことがない。

本当に兄者は幸せ者だな」


そう見られているのか。冬雅の雪化粧な頬がみるみると赤い果実のように染まって笑みを浮かべる。

そんな空気が醸し出されて俺は咄嗟的に否定をしようと思ったが否定的な言葉が浮かばない。同意を示すための

言葉が浮かばれて消えない。


「気になったんだが冬雅は高校を卒業したんだよな?」


「はい、そうです。今は大学生で勉強中ですよ。時間が、かなり出来たので、これからお兄ちゃんをデレデレさせようと画策しています」


はい、冬雅それ宣言しない。

もう当然すぎてツッコミをしなかったけど、本人がいることを忘れていませんかね。

デレデレさせようと策を立てていたのは初耳であったが止めれない

だろうなぁコレは。移山は何か愉快なのか大きな声で笑い出した。


「あっはは!そうか、なら兄者ともう婚姻届こんいんとどけをやっぱりもう出したか?そこまで進行してもおかしくないと思うんだが」


おかしいぞ移山!?どうして話を

飛躍するのかな。ほら、冬雅が恥ずかしくて俯いたじゃないか!

俺だって恥ずかしくて落ち着かないんだぞ。どうしてくれんだ……

この時期と大学生になったばかりなのに婚姻届を出すわけがないと常識的に考えてほしいものだ。

あれ?常識的に思われていないから

婚姻届と発想したのではないかな。

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