第422話―到来の息吹その3―
不安と緊張で手に汗をかくのを感じていた。インターフォン押して待っている間に、ぼんやりと庭を眺めていた。
長く放置していたのか峰島家の庭には雑草が
娘を守ろうとして引っ越しを決断してから放置していれば生い茂るのも仕方ないのか。
後で雑草を抜くこうと忘れずに頭にメモをしておこう。鍵が解錠音が鳴りドアをゆっくりと開けたのは冬雅。
「真奈も来てくれたんだねぇ。わがままを付き合うことになって、ごめんなさい。
お兄ちゃんと真奈には煩わせるようなことしたくなかったのだけど…たぶん不快な気持ちにさせると思います」
花が萎れるようになる冬雅。最後に口にした不快な気持ちとは何を指しているのだろうと反芻する。なるほど、そういうことか、完全に克服したと思ったが――
「不快な気持ちなんてならないよ。
それより冬雅……笑顔をみたいかな?あの笑顔を見ているとこっちまで明るくなって前向きになれて個人的に好きな笑顔を」
まだ後ろには冬雅の母親さんがいる。
なので静観しているだろうけど、冬雅の表情が曇っていてる。少し振る舞いに気をつけたほうがいいのだろう。
しかし優先度は冬雅が元気がないよりも下にある。
「……え、その、待ってください
お兄ちゃん。…急にどうしたのですか?」
脈絡もないセリフを面と向かって言えば十歳と離れた相手は驚く。当然の反応だけど、あの冬雅が俺に空いた口が塞がらないのは、なかなか無い反応だ。いつもなら俺がその表情をするからなぁ。
途中から戒めの言葉を聞こえないように小さな声で言う。
けど俺は周囲には聞こえない小声で、
我関せず、応えずに振る舞う。
「どうしたんだい冬雅?いつもの明るさがないし大好きのセリフも…
やっぱり、この耳で聞きたいって思っている」
「わああぁぁーー!?お、お兄ちゃん本当にやめてください。求めてくれるのは嬉しいけど…えへへ。じゃなくて!
ママとパパがいるんです。あとでイチャイチャしますから、おとなしく――」
「動揺している冬雅すごく可愛い」
「えっ……えへへへ、そうですか。
そう真面目な顔で言われると照れてしまいますねぇ。えへへ」
嬉しそうに悶る冬雅を姿にここで一句。静謐な呼吸、荒ぶるさざなみ、チョロいよ。波のように襲ってくる羞恥を訳のわからない句を即興で作って平常を取り戻ろうと試みた。けど効果は全然なかった。俺が、頭がおかしくなって奇行に走ったのには理由がある。
冬雅はネガティブになっている。見覚えがあるなぁと最初はそれが分からずに疑問を感じていた。
(誰でも月に一回ほどネガティブになるものだけど冬雅の場合はネガティブ思考が強すぎて度合いが大きくなっていく。逆に陽になるのも早くなる非常に分かりやすいのだけど…きっと
強すぎる好意がそうさせるのだろうなぁ)
原因が分かれば後は簡単だ。ネガティブと陥る思考などの対処方法は、効果が大きくなるタイミングでマシンガンのように褒めちぎることだった。
教育の一環として怒るよりも褒めた方が成績が伸びやすいと様々な研究データが出ているし。
すっかりデレデレになっている冬雅。
「忘れていた!そろそろ始めないと…さぁ、お兄ちゃんと真奈どうぞ遠慮なく入ってください。絶対に無理のないように手伝う程度にしてくださいなぇ」
「俺そこまで非力じゃないんだけど、まぁ、いいか。お邪魔します」
「お邪魔します」
すっかり元気を取り戻して喜びが全身に現れている冬雅。靴を脱ぎ玄関に上がったときに足音が向かって来るのが
「おーい、冬雅どうした?大声を叫んでいたが…お前か。いいか!娘は歓迎するが俺は歓迎しないし付き合うことには認めていないぞ。
もし手を出すのなら、お前を斬る!」
会って早々と告げられたセリフがお前を斬る!物騒なセリフにもほどがあるよ。
どう弁明をするか?いや違った。どう理解してもらえるか?すると真奈は俺の前に回ると口を開いて言う。
「お兄さんが誰かを襲うなんて、ありえないよ。暴力を振るおうとなんて絶対に無いですよ」
そんな真奈の言葉に唖然となるのは父親さん。俺は冬雅と顔を見合わせて苦笑を交わす。
「真奈そういう意図じゃないよ。
襲われると言うのは……」
あれ?説明しようと思ったけど、これ恥ずかしくて言えない内容だった。
これは異性の口からではなく同性で年が近い冬雅にお願いしようと振り向くが冬雅は無理無理と素早く首を横に振るのであった。
気が抜けたのか父親さんは、そのあと
簡単な注意喚起を食らった。そのあと手洗いを済ませてから2階へ上がって
冬雅の部屋へと入る。
荷物を入れることなどの力仕事は俺の担当で二人は整理などをして。3人で行えば、かなり短縮した。冬雅も真奈の二人は前よりも掃除が上手くなっていた。
俺は、冬雅と談笑をしながら少女マンガを本棚に置いて収納していく。
「…感慨深くなりますよねぇ。お兄ちゃんと二人で、わたしの家を掃除するのって」
「そうだな。唐突に、懐かしんで思い出を共有なるほど長い付き合いになるのか」
「長い付き合う…えへへ、ですねぇ。
これからも思い出を増やして築いていこうねぇ。いつか二人で何かをして今みたいに、ふと懐かしめるように」
二人で感慨深くなれる思い出か…急に羞恥心が襲われ俺は「そ、そうだな」と戸惑いながら返事をする。どう反応しているのかなと気になり一瞥すると
冬雅は頬を赤らめていた。けど、耐性があるのだろう俺の視線に気づくと、
あざとさがある顔の傾き加減で微笑むのであった。
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