第374話―1月5日のトピックは動画―
次の日、食材の調達にエコバッグを持って買い出しに行く。
(まさか買い置きしていた食材が、こんなに早く無くなるなんて)
冬雅と料理対決で食材を多く消費して、今の冷蔵庫には食材がほとんど残っていない。
今夜は6人分も作らないといけないのでサバ缶と野菜を多く入れた鍋料理、それに加えて真奈達がアポ無しでの対策を考慮して2日分ほど大量に購入すれば必然的に高くなるわけで…財布が行く前よりも軽くなった。
(あ、危なかった…もし執事の仕事が無かったら今頃は
エコバッグには食材が溢れるほど詰めて帰路に就いていた。
小説のアイデアが閃かないかと思考を巡らすが意識すればするほど閃かない。いつものように家の前に着いてため息をこぼす。
これからの展開が平穏とはほど遠い
呼び鈴は押さずに鍵を慎重に回して開けて中へと入る。
(もう始まっていたらと配慮しての行動なんだけど…
俺は盗人なのかな思ってしまうなぁ)
何をやっているだろう感に肩をすくめる。リビングのドアをゆっくりと開けるとテレビの前でゲームを
今やっているのは新作のスマブラ。
「うわぁ、うわぁ…ヤバい。新キャラ強すぎじゃない!?」
無邪気な笑みを零して遊ぶ美少女の一人、
他の3人は
冬雅はタブレットとペンで絵を描き、真奈はボロボロの参考書とノートを広げて勉強をしていた。
冬雅はドアの音に気づいたのか顔を上げて帰宅した俺を見て満面な笑みを浮かべる。
口を開いた…と思ったら両手で自分の口を塞ぐ。そして言葉の代わりに手を大きく振る。
(危うく喋りそうになる冬雅は今日も可愛いと。
どうやら、まだ動画撮影なのか…)
不死川さんが家主の俺に何も報せずに家に入ってすぐに「ここで動画撮影する!」と宣言したのだった。
俺は冬雅に手を小さく振り返してから買い物を冷蔵庫にしまう。
「久しぶりにゲームで腕が落ちていないか不安だったけど、おねえちゃん弱すぎるよ」
声に釣られるように炬燵の方へ
挑発的な言葉であったが声音に含まれるのは親しみ、今は児童施設に保護されている
長いストレート黒髪には毛先がはねりがある、パチリとした瞳は純粋無垢さが宿っている。
俺達に会う前は非人道的な扱いを受けていて心は暗く底が見えないほど。今はそんな比翼は年相応な笑顔を浮かべている。
「ま、待って。きゃあっ!?
モンスターボールを使うのは卑怯」
以外にも女の子らしい声を上げたのは
つややかな茶髪を腰ほど伸ばしていて、大きな瞳はどこか好戦的な印象を抱かさせられる力強さを宿っている。
言葉の攻撃力が高いのだが、ゲームをしている香音は普通の女の子みたいなリアクションをしていた。
ちなみにあともう一人は遊べるが冬雅と真奈は優先しないといけないことがあり遊べなかった。
「あっ、お兄さんだ。フフッ、隣に座りませんか?」
勉強に没頭していた真奈が俺に気づいてソファーから立ち上がり、そのまま近づき手を握るのだった。
「ちょ、ちょっと今は撮影中なんですけどぉぉ!!」
不死川さんは叫んだ。彼女の叱責を俺も向けられてしまったが真奈は動画にも関わっているので
大きな問題なく再開に戻り無事に終わるのだった。
「せっかくだし皆で動画を見ない?」
アクションカメラなど片付けて終えた不死川は炬燵の中で丸くなりながら提案した。不死川さん以外は頷いて応える。
操作を見ているとユーチューブを見るようだ。テレビの画面で。
「この動画がすごく注目されて気に入ってくれると思うよ」
タイトルは全力回避フラグちゃん。
フラグを擬人化したユーチューブアニメ。声優さんやストーリーのレベルが高くユーチューブで活動しているとは思えないほどだ。
SFでよく使われる物を科学的に説明などしたりして面白かった。
とくに最後にヒロインの「 待って〜」が良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます