第368話―エンドパレード―

「いつまで抱きつくんだぁッーーー!!」


冬雅と長くハグをしていると強引に間に入って割り込んだのは花恋。


「きゃぁ!?えへへへへ」


離された冬雅は名残惜しいそうに不満そうにするが、すぐに先までの事を思い出したのだろう照れ笑いを浮かべる。


「な、なんてデレデレしているの冬雅さん!?理想のお姉さんは、どこかに行ったぁぁ!!」


花恋の理想としている女性は冬雅なのか。性格を取り除いたら文武両道の美少女だからね。もう一度、性格を以外なら。


「フフッ、良かったね。お兄さん」


傍に戻った真奈は嬉しそうに笑みを浮かべる。けど…恋慕に知っていながら冬雅に告白をする場面を見せてしまった。弁明の余地がないほど浅慮で身勝手だった。


「そんなこと無いよ、お兄さん。

それでも諦めない。冬雅に悪いけどワタシは、お兄さんしか愛せないから」


頬を赤らめて愛おしそうに告白する真奈。けど手は正直で微動に手は震えている。

え、えぇぇーー!?


「ま、真奈さん!?俺は…」


「難しいのは、よく知っている。

一つしかない道であってもワタシが新しい道を創造する。

お兄さんと一緒にいられる…」


真奈は、この手を容易に離さないように恋愛にも離すつもりない。


「うわぁーー!?真奈さんやめてください。聞いているだけで恥ずかしくなってくるよぉぉーー」


「わ、わたしも…久しぶりに嫉妬心が」


花恋は頭を耳を塞いで、これ以上は聞かないとする一方で冬雅の発言は右耳に左耳を通過して忘れる事に専念する。


「あ、あはは。これからも、よろしく真奈。気になったのだけど不死川さんがいないのは協力して外に出ていったのか?」


本来ここにいる俺を含めた四人は、家主でもない。それに不死川さんの家族が俺を見たら即アウト。

その疑問を応えてくれるのは手を挙げる花恋だった。


「はい、はい!上で皆と待機しているよ。確か東洋お兄ちゃんの弟もいるよ」


「…どうして移山いざんもいるんだ……」


そう嘆くと真奈は「無事に終わったから呼びに行くねぇ」っと2階に上がる。

そして真奈が連れてきたのは比翼、三好さん、香音、不死川さん、ペネ、猫塚さん、移山……

はは、どうやら聞かれてしまったようだ…はっははは……聞いていませんように、聞いていませんように。


「幸せになってね。おにいちゃんと冬雅おねえちゃん」


比翼の温かい祝福の言葉。


「まさか冬雅さんと冬雅のお兄さんが、それほどの関係だったなんて…トキメキました!」


まるで鑑賞した気軽な感想を述べる喜々と語る三好さん。


「真奈様に手を出せば…分かりますよね不倫宣言した変態さん」


沸々と怒っていらっしゃる香音。


「いやー、隠しカメラはどうかと思ったけど兄ちゃんの弟が構わねぇなんて言うもんで」


隠しカメラかぁ!不死川さんが首謀者を応えてくれた。


「お、お兄様…せっしゃだけの家臣になって…なんでもありません」


本当に申し訳けどそうさせてもらうよペネ。いつか俺に冷めるその日まで。


「う、裏切り者ぉぉーー!!

兄はどんだけ友達がいるんですか!?なんでか年下ばかり美少女だし…よく分らないけどイライラする」


サングラス装備の猫塚は怒っていた。けど怒りの原因はなんとなく察せられる。周囲の何人かは

目を瞬いているよ。


「ともかく、これでめでたしだな兄者。あっははは!」


豪快に笑って纏めようとする実弟の移山。後に知ったがセッティングや多くを集めたのは移山の交渉術によるものだし。

これで、めでたしとなるには時期早々。まだ解決していないのはある。

パーティーを始まるが、すぐ解散になり俺は冬雅の両親に説得しないといけない。


「ここに、引っ越しをしていたのか」


見上げるは峰島家の新たなる家。

新築3年も経過していないと思われる一軒家。ちなみにアメリカでは古い建物の方が価値があって重きを見ていて高く逆に新築は安い、日本だと真逆の価値観を持つ。

誰に対して、その解説しているのか自分でも分らない。ともかく―


「冬雅を幸せにすると決めたからには。真摯に説得するしかない。

厳しいけど冬雅と一緒にいるためなら」


「お、お兄ちゃん…わたしも一緒にいたい。

だから、どれだけ愛しているかをママとパパに理解してもらいたいです!」


十歳も離れて淫行条例に抵触する関係。禁断の恋を燃やすような背徳感それはない。

あるのはお互い幸せを願って自分を蔑ろにして想い人を傷つけたのを知って学んだ二人。

もう自分の幸福を軽んじない、それは隣にいる想い人が悲しむ。

間接的に傷ついてしまう。だからこそ、この恋はどこまでも清々しく尊くある。一切の年の差、禁断の恋による背徳感は無い。


「冬雅、行こう!」


「うん。一緒に頑張ろう!」


そして呼び鈴のボタンを押して心を引き締める。やはり冷ややかで警戒心を向けた対応だった。

母親がドアを開けると「…どうしているのですか?」っと詰問されたときは冬雅に助けられた。

そして話し合いの席に着く事が出来た。


「ここまでいくと称賛したくなる…厚顔無恥だな。

未成年の娘と付き合いたいなど正気なのか」


冬雅の父親は落ち着いた声音だったが殺気立っていて辛辣な言葉を吐いた。


「…仰るとおりです」


反論する余地がない。いやあっても反論はしない。謝れば自尊心を保つための俺の中では優先順位は

圧倒的に低い。頭を下げて誠意を伝えていくしかない。


「私からすれば娘をたぶらかした。貴方は約束を反故にした事は変わらないわ。

何を考えているの貴方は!」


冬雅の母親の怒りは収まりそうにない。どれだけ罵声を浴びても耐えるしかない。


「面目ありません…」


いつか納得するまで耐えしのぎ耐え続けるしかない。誠意を真摯を――


「なんで…ママとパパは、お兄ちゃんをそんなに一方的に悪く言うの!!」


俺の隣でおとなしく座っていた冬雅が我慢の原因だったようだ。

両手を机に激しく叩き立ち上がると両親に憎悪を向ける。

…そらは、やめてくれ。


「ふゆ、か?ほら落ち着いて。

ママは冬雅のために思っているのよ」


「そ、そうだぞ。冬雅を守るために――」


愛娘に不倶戴天の眼差しを向けられた二人は激しく狼狽する。

―もういい冬雅。落ち着いてくれ。


「今は?守っていないよねぇ。

わたしは、お兄ちゃんが大好きなのに引き離すのを我慢した。

また引き離そうとするのも我慢した。

でも、お兄ちゃんに悪口を言うならママとパパなんて…嫌い。

大嫌いだよ!!ぁ…うぅ……

こんな両親に生まれたくなんて――」


「冬雅もう、やめるんだ」


それは決定的な拒絶の言葉だ。

それを告げれば修復には、かなりの時間と労力を持ちいらないといけなくなるし最悪2度と戻らない。


「…お兄ちゃん……どうして、止めるの?わたしは、お兄ちゃんを守ろうと」


力になれると誓ったばかりの冬雅は止められた事に分からないと目を大きく開いて困惑する。

確かに嬉しかった、けど軋轢あつれきを生じさせるために来たのではない。ハッピエンドという荒唐無稽で不可能を達成しようとしているんだ。

だから、止めないといけない。


「それを言えば冬雅の両親は深い傷を刻むことになる。それは言った冬雅だって…そうなんだ」


「それでもいいよ。

お兄ちゃんがわたしを大好きだって告白した気持ちは色褪せないからこそ、捨てたくないんだよ。

お願いだよ、お兄ちゃん…わたしの勇姿を見ていて」


冬雅は俺をおとなしく傍観することを望んでいる。優しくて愛されている深さ、まるで海のように。

それでも!傍観という選択肢はない。


「それは頷けない頼みだよ冬雅。

いくら冬雅の懇願であっても…

癒えるか分からない傷をおとなしく見ているわけがない!」


この決意は覆せすつもりはない。

俺は冬雅のために止めるんだ。


「そんな…悲しいよ。お兄ちゃんに敵になるなんて。でも、論破するよ。遠慮なく、お兄ちゃんのために」


なんて悲しいんだろう。俺のためなのに追い詰めている。想い人を否定しないといけない。冬雅が俺を愛しているから。それは俺も似たような感情で論破する。

初めて冬雅に論理や根拠もない、あらゆる想いを混ぜった感情論を想い人にぶつける。

これほど激しい喧嘩を冬雅とするのは初めてだ。


「…認めるしかないのね」


しかし感情論しかぶつけないロジックバトルは繰り広げる前に冬雅の母親が呟いた言葉で止まった。


「「え?」」


俺と冬雅の声が重なる。眉を顰めていた顔は今や緩和していた。


「呆れるしかないわね。お互い好きだから守るために喧嘩するなんて…もうそれしか理解できないけど。

深い愛は伝わったわ。認めるわ。

先ほどの失礼な言葉の数々、陳謝させてもらうわ山脇東洋さん。

娘を守るためと言って無礼な言葉…本当に申し訳ないわ。

ごめんなさい」


深々と冬雅の母親は頭を下げて陳謝した。理解してくれたのは嬉しいけど状況に置いてけぼり感があるほど急展開に困惑がある。

隣の冬雅を一瞥しても俺と同様の反応をしていた。


「ほら、あなたも!」


左手を伸ばして肩を揺らして促す。冬雅の父親は渋い顔をする。

理解しているが認めたくないような表情が窺える。


「ぐぅ…いいだろう。ヒドイ言葉だっただろう、すまない。

俺を嫌いになっても冬雅と妻だけは嫌いにならないでほしい」


両手を膝の上に置いたまま頭を下げる姿は豪快であった。


「…えーと、それは冬雅のお付き合いを認めてくれた解釈で、よろしいのでしょうか?」


俺は現実味を感じなくもないがらも冬雅の両親に、おそるおそると尋ねる。


「ええ、そういうことよ」


冬雅の母親は笑顔で認めてくれた言葉だった。それから冬雅が飛びつかれ落ち着かせるまであやかす事にした。

けど冬雅の父親から「いつまで抱擁するんだ」っと注意された。

そんなに長くしていたかなと時間を確認すると30分も経っていた。

…なるほど根気よく待ってくれたんだ。逆に長く見守ってくれて心から感謝をしよう。礼!ビシッ。

夜風が吹いて凍えそうな外に出る。右には冬雅と並行して歩く。


「えへへ、お兄ちゃんの家に久しぶり帰れるんですねぇ。ドキドキしますねぇ…えっへへ」


「うーん、まぁ。そうだね」


もはや冬雅の発言にツッコミをしない、俺の家が自分の自宅かのようでも。談話、いやドキドキさせようと冬雅が仕掛けてくるのを

避けたりしながら進んでいたが、

何もない所で足を止めた冬雅。

どうしたのだろうと思いながら振り返るとスマホを取り出して何かを見ていた。


「お、お兄ちゃん大変ですよ。

もう少しで年が明けますよ!?」


「ああ!なるほど合点したよ。

だから夜道に人がいつもよりも多いわけか」


おそらく準備が出来ず迎える事に忸怩じくじたる思いなのだろう。


「の、のんびりしていられません。

お兄ちゃん走って急ぎましょう、わたし達の家に!」


「え、えっえぇぇーー!?」


有言実行をするのが冬雅。無言実行もあるが。

ともかく俺は冬雅の背を追って運動不足の足を酷使こくしを強いるのであった。

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