第358話―花恋の性格は安定している―

冷たい風が吹き抜ける度に、身を震えながらカメのように縮みそうだ。

12月13日の正午が迎える前に私は東洋お兄ちゃんの家に向かう。


(お昼から一緒に楽しく食事をしていると東洋お兄ちゃんが急に感激して、花恋ずっと隣にいてほしい毎日ここで…きゃああ!!)


ハァッ、落ち着くんだ私!それで東洋お兄ちゃんが私にデートを誘われて…コホンと心の咳払いをするイメージで平常心を保とうと試みる。

しかし反省をしてもすぐに、ついついポジティブな方向へと思考は膨らむばかりで止まりそうにない。

それは東洋お兄ちゃんの家が迫るにつれ悪化…イメージトレーニングが加速していく。

もう家の前に着いていた。移動手段は、いつものように徒歩なのだが意識が遠く夢に浮かんでいたからなのか、たどり着いた自覚がない。


「………よ、よし」


いざインターホンを押すのに躊躇いがあった。あれ?と感じるように足と心が軽かったのが重たくなったようになる。それを不安なのだと自覚すると好きな人に

嫌われたくないとネガティブな感情が湧く。けど、すぐ片隅に置いてインターホンのボタンを押す。

ドアの奥から「はーい」と優しい声が聞こえる。ドアが開く音に遅れて東洋お兄ちゃんが現れる。


「おはよーう!ちゃんと眠った?」


しっかり寝ていたか気になって単刀直入に不自然に口にしてしまった。


「心配しなくとも、ぐっすりと眠れたよ。花恋おはよう」


こうして挨拶と雑談するのが幸せ。そこで冷たい風が吹いて身体が震えそうになる。感動をしているのに気を散らすなんて…空気を読めよと風に対して怒りたい。

早く上がって温かくなりたいと祈りが願ったのか東洋お兄ちゃんは上がろう短いセリフで

促された。

洗面所で手を洗ってすぐ居間にあるソファーまっすぐ進み横になる。うつ伏せで。


(こ、これって私と東洋お兄ちゃんの二人きりだよ!?ど、どうしようドキドキするんだけど)


ど、どうしよう。色んな男子と付き合ってきた経験があるけど、心が訴えかけるような速さを感じた事はない。

感情が顔に出ていないか不安もあって顔を埋めるようにうつ伏せになるのは見てほしくないと思ってしまったのだ。

少しは平静となると目的を思い出す。


「東洋お兄ちゃん運動とかしています?」


「運動?いや、ここ最近はまったく」


そうなのだろうと私は分かっていた。ここ最近は私といる時間が

多かったので、なんとなく把握はしていた。

何故そんな事を聞いたのかは冬雅さんのお願いだからだ。


(もう以前のように支えれないと悲しい顔をしていたなぁ…)


冬雅さんのお願いの一つ…この季節だとお兄ちゃんは極端に運動しなくなってしまうから健康も心配で。

お願いされた事には応えるつもりなんてなかったけど、私も東洋お兄ちゃんには想う気持ちは負けていない。

ついでに東洋お兄ちゃんの厚意を受けた恩返しも必要だし、元気になってほしいし。

けど誘いを断れて何とか説得して隣り合いジョギングをするが私が息を切れる前に東洋お兄ちゃんの顔は汗がたくさん。


「すごい汗…大丈夫なの?」


「あ、ああ。これぐらいは」


まだ走れると言っているが怪しい。こういう状況は冬雅さんが言っていた。お兄ちゃんは心配させないように反射的に強がると。

予感は的中していた。次は分かりやすく強がっていた。人に合わせるのが東洋お兄ちゃんなので、私が変わればいいのだ。


「うーん、今日は歩きたい気分ですので無理ですね。拒否権はないという奴だよ」


そうすると反発するような事なく大人しく歩いてくれた。うーん、年上で大人のはずなのに時々、年下に見えてしまう。

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