第357話―花恋の性格は安定しない―

最後の月と13日に花恋かなが来宅した。

早く家に上がらせてと表情に現れていたので玄関で無駄話を省いてすぐに上らせた。手を洗い、居間に入るとソファーに飛び込む、いつもの光景だった。顔ごと、うつ伏せの花恋が素早く顔を上げる。


「東洋お兄ちゃん運動とかしています?」


「運動?いや、ここ最近はまったく」


唐突な質問に疑問があったが、質問で返すのも良くないと考えて先に応えることにした。


「そう…ねぇ。今から私とジョギングしない?」


「えぇー、こんな寒い中で…」


手が悴むほど寒さではないけど、外には出たくなかった。深い理由はないが生粋のインドア派として

抵抗感でもあり億劫だった。


「断れた!?」


「せっかく誘ってくれたのに、ごめん」


これは私情の理由なので手刀を作って謝罪という緩めな謝りかたをする。

花恋は応えずに外方そっぽを向いて…いや顎に手を当てて何かを思考している。


「…ひ、一人で寂しいまま私だけ、この寒さに走れと言うの東洋お兄ちゃん!」


ひどい片言かたことだった。頬を赤らめて、目は泳ぎ、そして言葉の感情が一致していない。

喩えるなら演技を始めたばかりの役者のように拙さが目立つ。


「で、でも…一人でもジョギングしていたのでは?」


「…は、話し相手が欲しい。えぇーと、そのあとは…暴漢とかいるかもしれないし。

お願い東洋お兄ちゃん」


目を潤々としていない上目遣いと頬を引きつる笑みに無理をしているなぁと正直に思った。口にはしないよう配慮はする。

ここまで頼まれたら断れないか。

何か狙いがあるのだろう、きっと良き意味での狙いを。


「……ああ、分かった。付き合うよ」


「な、なんというか告白の返事を返されたみたいな…もちろん冗談ですけどね」


花恋は嬉しそうな反応だったので選択肢としては少なくとも間違っていないと感じた。そして、花恋の速度を合わせて走るかと

上位であるかのように自信を持っていたが…。


「ハァ、ハァ、ハァ…マスクして息がいつもよりも難しい…ハァハァ」


「仕方ないですね。ここで休んでいきましょう」


知っていたのに失念したという間抜けな結果になりました。木陰まで歩き、激しくなる息を整えようとするが強く要求されるように苦しさが起きて落ち着いて呼吸が難しい。


「すごい汗…大丈夫なの?」


「あ、ああ。これぐらいは」


一応とても少ない大人の矜持で強がってみせるが、カッコ悪く映るのは変わらないだろう。


「苦しそうですし、ここから歩いて行きましょうか」


「ハァ、ハァ…気遣いは結構だよ。休めばいくらでも走れる」


「うーん、今日は歩きたい気分ですので無理ですね。拒否権はないという奴だよ」


こんな優しい拒否権は無いのは初めてだな。サラリーマンとして務めていた時代では追い詰める意味で使われている人が多かった。

それと比較するのも失礼だろう。ここは素直に花恋の温情に甘えるとしよう。

あれから一時間ほど近く続いて疲労困憊して家に戻る。居間に入るとソファー座り天井を眺める。


「つ、疲れた…コホッ、コホッ」


「東洋お兄ちゃん咳をしてるけど平気?体調は良くないなら後で病院に行ったほうがいいよ」


そう伝えた後、花恋は動き出す。

何をするのだろうと気になりながら失礼と分かりながらも目で追うと薬箱が置かれている棚。

探していたのは風邪薬のようで、コップを水道水に注ぎ入れてからテーブル上に音を立てずに置いた。


「さぁ気休めかもしれないけど、飲んで今後は体調を気をつけるように」


「あ、ありがとう」


唯我独尊を地で行くような花恋が献身的になっている事に困惑する。

周りに配慮を向けるような性格とは思えなかったので心境の変化とかあったのだろうか?思春期だし

突然変異みたいになっても不思議

じゃ無いはず…だと思う。

夕食の肉を代用したサツマイモのキノコシチューを作ろうと席を立ってキッチンに向かい調理を始める。人参を輪切りを終えると――。


「東洋お兄ちゃん!たまには私もお手伝いをしますよ」


袖を巻きながら口角を上げて手伝いに来た花恋。さっき動物の動画を見ていたのに十分に満足して、

気が向いたのだろうか。


「ありがとう。まずはエプロンをしないとね」


「いいよ。別にエプロンなんか」


本人は面倒くさいと態度に出ているが、お気に入り私服を汚れるのも考えたら着用するべきだ。


「少し待っててくれ」


二階に上がり部屋にあるタンスを開ける。冬雅が以前に使っていたピンクのエプロンを持って台所に戻り花恋はサイズが合ったことに

女の子だと気づき誰のか!猛禽類のような鋭い目で追求される。

あやふやにするつもりだったけど追求の言葉が強く前に着たのを応えると大人しくなった…?冬雅の接点は公園のはずだけど、憧れの存在とか何かだろうか。

手伝う気持ちは嬉しかったものの作るのはシチューで複数で作るようなものじゃなかった。花恋は火を止めてルーを投入して軽く混ぜてから弱火にして後は待つだけ。


「…その気になったのだけど、東洋お兄ちゃんは冬雅さん―いえ、公園にいたキレイな女の子を今でも好きなのですか?」


「………」


真摯な瞳を正面に向けたまま問われて話題を逸らすのを難しくなった。


「…そうかもしれない」


返事としては満点とは誰からも縦を振らない曖昧な言葉だ。冬雅の件をどうするのか大半は諦めている。

けど意中なのは変わりない。そんな曖昧で保留なのかさえも分からない悩みを抱えたまま。


「へぇー…そうなんだ。食事しようか」


それからは冬雅の事は花恋は触れなかった。何か思惑のようなものがあったのだろう。

俺もそこには触れないでいた。そんな発言を気をつける夕食は気まずくなるような空気は…起きなかった。不思議といつものように

談笑する。食事を終えると花恋は食器洗いを私がしますので東洋お兄ちゃんは小説でも書いてください!強引にそうする花恋に今日は 積極的だなと怪訝に思った。


「そろそろ帰らないと!」


時刻は午後9時。門限としては緩い方な気がする。必然的に俺は女子高生を夜道を一人に送るような選択はあるわけがなく見送りに外を出る。


「東洋お兄ちゃん止まって」


「んっ?ああ」


街灯が仄かに照らす下で花恋は背伸びをすると俺の頭を優しくで始める。客観的に俺は呆気に取られていることだろう。


「東洋お兄ちゃんは…え、偉い…」


恥ずかしいのは途絶えそうになる声で想像はつく。小さい子の扱いと美少女に頭をなでなで単純に恥ずかしくなり加えて花恋の恥ずかしさも伝播する。


(…飄々ひょうひょうとした花恋が性格が安定しない日なのかな?)


的はずれな考えをするほど俺は少し混乱していた。撫で終えた花恋は俯いたまま会話がなく送り届けて別れの言葉を軽く済ませて踵を返して、そのまま家路に就く。

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