第351話―暗闇の小雪7 ―
「そう言えば自己紹介まだだった
ねぇ。ワタシは平野真奈。
お兄さんとは一言では尽きない
関係かな。
高校三年だから遊ぶ時間を
もう冬だなと実感が湧く夜の空。
真奈は手を繋いだまま自己紹介をする。この手を離そうというのが微塵も欠片もないのが、緩めること証明になっていた。
夜の街中を2列になって歩いていた。先頭が俺と真奈、後方は花恋、ペネ、猫塚さんとなって……
上から見ればニの字になっていることだろう。
「わたくしはペネロペ・レードル・サファイアと申します。来年度は受験生の身となる2年生」
「あ、あの!私は
優雅な挨拶をするペネ、対照的に猫塚さんはガチガチとした挨拶。
ちなみに猫塚さんの下の名前は
けど知っているのは猫塚季澄というアイドルネームで本名は知らない。
「そう緊張しないで猫塚」
「は、はい!真奈さん絶対に緊張はしません」
真奈の親しみやすい言葉に猫塚さんは、より一層と引き締まるのだった。
絶対に緊張感が日常生活になっているような人気アイドルと自称しているのに面白いぐらい緊張している。
真奈が苦笑をしていると猫塚さんは何を思ったのか、口を開き驚く。
「ペネちゃん来年度は…って私より1つ年上だったの!?」
どうやら猫塚さんが驚いた理由はそれだった。サファイアの方へ向いた彼女は一年生になるのか。
「ええ、そうなります」
「先輩とは知らずに失礼な言動をしてしまい、すみません」
「先輩は、いい響きなのですけど敬語は不要で。友達なのですから上下関係なんて無いのですから」
「ペネちゃん…」
うーん、いい雰囲気。かなり野暮な感情が抱いていた。
敢えて言おう!まさしく百合だと!
それから俺達は明確的な目的地もなく歩き続いて、小腹を空いたら食べ歩きをしていた。
なんでもない場所を夜景としては称するには不足はしていたが
補填するように仰げば星と月が静寂な輝きを放つ夜空。
そして時刻は終わりを迫る。
「それでは皆さん」
迎えが来た高級車。車離れをしている世代の一人である俺は車種には疎いが、高いのだけは分かった。
もちろん迎えはサファイアだ。公園を出ての出迎えには俺も含めて驚いた。まるで来るのが分かったタイミングだからだ。
サファイアだけが驚かずに、じいや?らしき人に労いの言葉をかける。
まるで漫画やラノベみたいだった。
次は猫塚さんを家まで送らないといけない。電車を乗り3つほどで降りて駅を出た所で。
「あのワゴン車に迎えがいるから、ここまでいいよ」
楽しかった!ありがとうっと同じ言葉を何度も連呼してから猫塚さんは迎えの車に向かって駆け足で行く。
嘘とかなさそうだ、いや疑うのもどうなんだろう俺は。距離的に花恋の家は俺とそこまで離れていないので真奈を送り届けることになる。
家に近づくにつれ、しっかり繋いでいた手に力が強くなる。離れたくないという想いが流れてきて伝わるようだった。
そして真奈が帰る家の前に到着する。
「お兄さん」
隣から俺の前へとまわり上目遣い。
大袈裟と感じるほどに哀愁が漂っていて引き寄せられそうになる瞳に感化されて俺も離れたくない気持ちにさせる。しかし俺は強い感情を制して言葉を告げる。
「今日は楽しかったよ真奈。
また明日」
「うん、すごく楽しかったよ。
また…明日お兄さん。次も一緒に笑って見つめようねぇ」
強い衝撃が襲ってきた。そう表現に合うほど心拍数が上がっていて
自分の頬が熱さを感じる。
真奈は名残りそうに力を緩めていき、最後には手を離れると逃げるように走って帰っていく。
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