第325話―ポジティブなJKによる瓦全で定期的な告白2―

孤独を覚える日々には一人で考える時間が増える。趣味に没頭したり自己研鑽を手に入る代償に忙しくて見えなかったものが見えたりする。

定職に就いていないのに無聊ぶりょうにかこつなんて変な話であるが。無為徒食むいとしょくだと自虐的もする。

そんな考えをしなくて済むのは―


「フフッ。こんばんは、お兄さん」


ニッコリ浮かぶ笑顔に、今日も癒やされながら真奈は日が沈む少し前に訪れて挨拶をする。


「こんばんは真奈。今日は…一人なんだね」


塾帰りとはいえ香音や三好さんがいないのは正直レアだ。


「頑張らないといけないからねぇ。それで、ワタシがいなくて寂しく無かった?」


眉尻を下げる真奈、冗談の類ではないと発言に溢れる愛情が現れている。


「寂しくはないよ。どちらかと言えばひまな時間があるからこそ小説を書けるし自己研鑽をする余裕だって出来るから

楽しいよ」


楽しかった記憶を掘り起こすと俺は全力で笑顔を作り人生を謳歌していると豪語する。素直になれない。

いい大人が女子高生に弱音を吐くわけにはいかない。目覚めて冬雅に挨拶と食事がなく告白も無い毎日に寂しいとあるなんて言えるわけがない。


「…そうなの。本当は?」


「えっ?」


「お兄さん無理していない?

また大人とか子供って考えているみたいで秘密にしている雰囲気だったよ。それで、本当は?」


慧眼な真奈にはそれが嘘だと看破して問い詰めようとする真奈。


「本当も何もそれが本当なのだけど」


「それですか。本当は」


「だから…寂しくなんが無くて楽しんでいる」


「ふーん。それで、本当は?」


読心術を会得しているのか、真奈は俺の口で寂寥感を発しようと強い意思が伝わる。


「…ハァー。ああ、そうだよ。

寂しいんだ…いつもそばにいた冬雅がいないだけで抜け殻みたいに脱力感があるんだ。

ごめん真奈、こんな情けない話をして幻滅させてしまって」


問い詰められた圧力に屈してしまい無気力になった事を剥き出しの感情に任せて言った。

好意を抱いてもいる人に決して口にはしないと固く決意したというのに何をしているのだろうか俺は。


「幻滅はしていないよ。だって、ワタシお兄さんの…友達で。ううん違う……本当に大好き!」


「ま、待ってほしい。そんな事を急に言われても」


一度は引っ込めようとした言葉を真奈は頬を赤らめながらも奮い立たせて告白した。そしてこれも情けない事に真剣な想いを包み隠さない感情をぶつけられれば混乱するし挙動不審にもなる。


「お兄さん待ってて。今ママと相談して泊まっていいか確認しておくねぇ」


スクールバッグからスマホを取り出して母親に成人男性が寂しく暮らす家に泊まろうと許可を得ようとする真奈。

それは、いくらなんでもと事情を知らない人は一蹴するだろうが真奈の母親は真奈ファーストで楽観視は出来ない。


「ま、真奈…それはやめたほうが」


「……あっ、もしもしママ」


一瞥だけで静止の声には取り合うつもりないらしい。お兄さんが落ち込んでいてワタシが隣にいたいのだけど泊まっていいかな?…うん、もちろん家に帰ってから準備するつもり…聞いたところ、

進行していますね。


「じゃあ…お兄さん!泊まっていいと許可してくれたよ」


「大事な娘なんだから快く快諾したら駄目じゃないか。えーと、本当に?」


最後の確認は真奈の圧力を仕掛けてきたワードみたいだなと思った。


「はい。お兄さん一緒に来てくれますか?不審者に襲われるかもしれないので隣にいてほしいかな」


そんな言葉を使うなんて、なんだか真奈らしくないな。母親の入れ知恵だろうか。ともかく日が沈むのも遠くないし同行つもりだったので断るつもりはなかった。

そして一緒に電車に乗り真奈の実家へ。受験で大変な上に、もし同級生に目撃されたらどうするのか?

家に着くと真奈の母親に感激され父親には顔を顰めて憎々しいそうにする。


「次に帰ってきた時には孫の顔を見れるのかしら?」


「なにっ!?キサマ表に出ろぉぉ!!」


「ママ違うから!パパ落ち着いてぇぇぇーー!!」


今日も平野家は賑やかだった。危うく真奈の父親に討たれて敵将、討ち取ったり!なんて高々と叫ぶかもしれい勢いはあった。

別の言い方をするなら怖かった。

真奈は長居するつもりなのだろう、大きな旅行バックを持って外に。

夜の帳が降りた道中で俺は――。


(背徳感がスゴイんですけど……)


真奈の両親から認められた(真奈の父親は除く)が本当にいいのだろうか?いや普通に駄目だろう。


「真奈、やっぱり帰ったほうが良くないか?弟の移山は今日はいないから俺と真奈だけ二人になるんだ。そんなの真奈だって不安

じゃないか?」


「そんな事はないよ。不安なのは、お兄さんがワタシを大好きなのか点です。そ、それに二人きりなんて………同棲みたい」


「けど倫理観的には問題が――」


住宅街のど真ん中でお互いのロジックに持論して討論、次第に熱くなり論破や譲渡するが神謀鬼算の真奈に叶うわけがなく敗れる。

おかしいなぁー、こう見えても元はビジネスマンだったのに負けてしまった。

社内では交渉が出来ないと上司や部下にも指摘されたレベルだけど。


「ただいま…フフッ、なんて」


玄関に上がる真奈は舞い上がっていた。俺はドアを開けて先に入るよう促すと嬉しそうに真奈が中へ、俺は外の景色を振り返り見る。


(あのひさしにジャンプして飛び越えてから2階の屋根に飛び移り忍者のように駆けたい)


現実逃避をした。大した事をせずに生きて来た意味の瓦全がぜん、そんな普通な生活をしたかったぜぇよ。


「お兄さん!自分の家の屋根を見ているけど何かあったの?」


さて、現実に回帰しようり訝しむ真奈に「何でもないよ」返事をして玄関に上がる。そして持ってきた必需品などを一緒に片付ける。

真奈が持ってきたのは歯ブラシと化粧品。


「お兄さんこれって、もしかしなくても冬雅の?」


俺の部屋に入って真奈は落ちていた化粧品を拾うと、これが誰のか理解して俺に質問をする。


「だと思う。本棚の狭い所からして掃除が出来ない去年の物かもしれない」


「ふーん。中はカラなのでてておきますねぇ」

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