第322話―ふゆコン参―
添い寝してから隣に並んで自分と真奈が映る鏡を目にしながら
歯磨きをする。
容姿だって暗い印象と整っていない化粧をしなくとも花を恥じらう美貌。
鏡は忠告してくれる。純粋無垢な真奈を
頭が当たっていた。
「っ―!?」
「…おひぃさぁん」
歯磨き粉を付けたブラシに磨いていたため声を発すると聞き取るのが難しい。ノイズな発音に伝えようとしたのはなんとなく分かった。
いつものように、お兄さんと呼ぶ。
不思議とマイナス思考はしなくなる。
(考えてみれば…真奈か近くに居てくれたから冬雅がいない
寂しさを感じなくてすんでいる)
口を漱ぐと敢えて何も触れずにリビングへ手を繋ぎ入る。それから弟に仕事のストレス発散とからかわれた。昼過ぎ、真奈の勉強を邪魔をしたくなく俺は極力、音を立てずに居間を出る。ラフな格好に着替え、エコバッグを持ち外に出ようとドアノブを引こうと――
「お兄さん待って。買い物に行くならワタシも行くから」
「いや、いいよ。たまには一人でゆっくりと考え事したいからね」
「で、でも……」
「受験を応援しているよ真奈」
勉学にいそしむ彼女に頑張ってと言うのは適切ではないと思い抽象的なエールを送る。今度こそ外に出ようとドアノブを引こうと手を伸ばすと反対の手から手を握られた。何十回、何千と感じた温もり。
「や、やっぱり行きたい。その、駄目なの…ワタシとじゃあ」
「い、いやそんな事はないけど。急にどうしたんだい?」
「………それは」
「デートに決まっているだろう兄者」
高々と応えたのは移山。振り返った真奈は一体どんな顔をしているのだろうか?なんとなく想像が
つくけど。それよりもデート?
「ち、違うから!気分転換に外の空気を吸いたいだけ」
「へぇーそうなのか。兄者それで真奈とは最後にデートをしたのはいつぐらいなんだ?」
「わ、分かっていない…」
あしらわれた事に唖然となる真奈。言われるまで気付かなかったがデートなんて最近していない。
「そうだな…かなり前になる」
「そういうことだ。お嫁さん候補の真奈がここまで積極的になったのは兄者が原因だ。そういうわけでデートに行けよ」
「どういうわけか分からないけど、その通りだよ。真奈」
「は、はい!」
ビシッと背筋を整え頬を鮮やかに赤く染まる真奈。今のやりとりを傍観して先の言葉を期待している。
「
急遽こんな形でデートとなったためプランがあるわけがなくショピングモールに来ていた。どうして休日のショピングモールはこうも、ごった返しなのか。
「お兄さん宣言するよ今から…
疑似デートではすまさないって」
突然と振り返るとそんな発言を。
「えーと疑似デートじゃ不満だった」
「そうだよ!どうして疑似デートなんですか。ここは、かっこよく俺と一緒にデートに行こうぜ!っと言って欲しかったよ」
ご立腹のようだ。普段は怒らない真奈が怒るなんて珍しい。
よし、怒る真奈を略し[おこマナ]と命名しよう。
「おこマナ」
「むぅー、また変な造語を。それなら仕返しだよ。お兄さんがワタシにドキドキしている。おにドキ」
なるほど勝手に造語を作られると反応が困るなぁ。とりあえず頷いた。
どうしても真奈がいるとゲーセンへと足を向けてしまう。ゆうマナ。
「お兄さんまた変な造語なんかを考えていません?」
「よく分かったね。ゆうマナ…誘導する真奈」
「シンプル!?もういいよ。それよりも、お兄さんプリクラを撮りませんか?お兄さん冬雅と比翼と一緒に撮っているから
詳しいですよねぇ!」
「別に詳しくないけど」
「二人とも自慢していたので。さぁ、中に入りましょうよ」
プリクラを撮り、真奈は宝物ように大事にショルダーバッグに入れる。次に向かうは映画、コロナで一席を空いた間隔になるが。
「それじゃあ何をしよう?やっぱり鬼滅の刃とかにする?」
国民的なアニメである鬼滅の刃。
オタクでもない人でも認知され子供にも人気が高い。
作画や戦闘シーンの迫力には夢中にさせるものがある。
「いえ、たまには別の見たいかな」
「別の?他には…えーと」
「れ、恋愛映画とかどうかな」
「えっ!れ…恋愛?」
「う、うん。普段ならワタシそんなに好きじゃないですけど……好きな人と見たいかなって」
絹のような頬を赤く変わり、もじもじと身体を揺らすのは何かしていないと堪えれないと出ている。
そこまで恥ずかしがると俺も伝染してしまうのだが。
「分かった。真奈の思い出になるなら喜んで」
「やった!楽しみだね」
嘘のように悶絶にあった真奈は上目遣いで屈託のない笑みを浮かべる。
加えて好意もあってドキッとさせられる。その奇襲は反則だよ。
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