第321話―ふゆコン弐―

「お兄ちゃん大好きです。どんなに離れても…想っていました。お兄ちゃんはわたしの事を好きですか?」


恥ずかしさか高揚感か、冬雅は赤らめて告白をする。目を一切として逸らさず見つめる。

空は俺と冬雅を祝福するかのように眩しいほど晴れている。

場所はドイツの世界遺産があるケルン大聖堂の前。ケルンはドイツの都市であり二千年の長い歴史を誇る。市街地はライン川を挟まれている。圧巻されるほど風光明媚なここは夜になると闇を照らし、また違った壮大な景観に驚嘆するはず。


「冬雅…」


時刻は昼なのに人気ひとけも気にしないのは冬雅らしかった。


「ああ…俺も大好きだよ。

当日で旅行プランもなく行くことになったのは驚いたけど」


「えへへ、サプライズしたお兄ちゃんの驚く顔を見たかったという野望で一人で計画を立てましたからねぇ。

なんだかハネムーンみたいでドキドキします…えっへへ」


その行動力はいつも常識を覆すほどの原動力を持つ。


「そんな満面な笑顔を言われると普通に恥ずかしいんだけど…。

ゴシック様式で世界最大規模のケルン大聖堂は一度でいいから行きたかったからなぁ」


「叶えて良かったですねぇ。それじゃあ手を繋いで行きましょうか?」


「えっ?ふ、冬雅!?」


受け流そうと思い返答する前に握られてしまい引っ張られてしまう。


「かわいい…。そろそろ慣れていても不思議じゃないのに少年

みたいに照れて」


「普通に驚いただけだよ」


嘘だ。意中の人だから咄嗟に握られて鼓動が高鳴らないわけがない。

ポツンと意識は転送された感覚になって戻ってくる。…冬雅に会えない事に夢を見てしまったようだ。


「まぁ、夢に決まっているか。そんな展開があるわけがない…んっ?」


突破不可能な堅牢な壁をどう足掻いても無理なのに…女子高生との恋愛に発展はしても上手く行くわけがないのだ。

それは倫理的に許されないし俺も賛成なはずなのに…そこまで考えていると夢にも感じた右手に心地よい温もりが。

その疑問を忘却をくれる正体を確認しようと仰向けから隣へ目だけ動かすと…真奈が寝息を立てていました。


「うわわああぁぁぁーー!!?」


衝撃のあまりに叫んでしまった。

離れようとするが手をしっかり握られたままではベッドから離れなかった


(思い出した!?怖い映画を一緒に観賞していた…それで真奈が怖いからと涙目でベッドで

寝てほしいって懇願された。眠たかった俺は眠気の誘惑もあって楽観していた)


「…あれ、お兄さん?タヌキが化けられたみたいな顔をしている」


随分と可愛い表現で真奈が目覚めた。叫んだ事や握られた手を引いたなら覚醒して当然の結果になる。


「おはよう真奈。いい天気だね」


「ふふっ、おはよう。お兄ちゃん台風14 号を忘れていませんか?」


「ああ、それもそうだね。真奈もう怖くないか?」


「はい。おかげさまで。あの、見つめ合っているみたい」


今まで微笑んでいた真奈は一緒に寝ていると気付いたのだろう。

二人用ではないベッドでなんとか横になっているのもある要素も。

俺は端に離れても近いものは近い。

天候は芳しくない10月10日の土曜日の朝は刺激が強かった。

添い寝なんてしていた事を雰囲気で読まれた弟の移山に散々それで俺と真奈は朝の居室で揶揄からかわれ続けられた。

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