第318話―居て当然の彼女がいない日常その弐―

「えっ、マジで〜!?付き合っているの家族にバレってフミユンと

会えなくなったの?」


冬雅は居ない事に疑問を持った不死川さんの問いを応えると椅子から立ち上がって驚いていた。


「…わたしがいない間にそんなことがあったんだ。それで今は冬雅おねえちゃんどうしているの?」


比翼も衝撃を受けていたが手をあごに触れて取り乱した心を直ぐに整えて反芻はんすうに傾ける。まごまごする不死川さんとは対照的だった。


「聞いたわよ、その話。…ラブコメオタクと会えないて」


口調はいつも通りで目と声の起伏から怒り剥き出しするは隣に座る香音。

真奈から手を繋いでいると分かりやすいほど機嫌を悪くなっている。

それで焦るべきなのだけど冬雅が学校で悄然しょうぜんとなっているのを浮かび上がり…居ても立ってもいられない感情になる。


「ワタシ達、冬雅が落ち込んでいるのをどうしてか尋ねて…

何も無いって一点張りだったの。

それで疑問が雲のように湧いて質問を変えて聞いてみたら別れて落ち込んでいるのだけは分かったの。

…お兄さんワタシ達に何かあったのか話をしてくれない」


窓を開けているとはいえ新型コロナウィルス正式名称COVID19《コビット・ナインティーン》がある

とはいえ右隣で座る真奈の

距離は非常に近い。

その憂いの瞳には俺を気遣うのを余念がなかった。…この大人数を招いたのは、もしかして真奈ではないか。3人寄れば文殊もんじゅの知恵とことわざあることから頼れる友人を集めたのかもしれない。

そんなこと無いと思うが真奈の斟酌しんしゃくは俺が出会った人達と比較しても際立つ優しさ。


「実は…前に説明した以上は無いんだ。冬雅の家で目撃されて追い出され、そのまま帰って茫然自失となっていると逮捕された。

少し感情的になったけど真摯的に冬雅のご両親に説明して

許されて2度と会わないと誓った」


こうして今はダイニングテーブルで話せているのは慈悲で寛大深さがあってのこと。

話の途中でクールダウンした不死川さんはおもむろに座る。


「第三者視点から言う夫婦のような関係でインスピレーションの連続でした。

そんなうらやましい関係をこのような結末でいいのですか?」


そう強く主張したのは三好さんであった。夫婦関係と思っていた事に言いたい事があるが、

確かに俺もこんな終わりは納得してはいないが…引くべきではないかと迷ってもいる。


「キュンキュンするエモい二人が別れるなんて普通に無いじゃん。

早くモテパワーで解決して行ってマナマナと三角関係の続きをしてよ」


「そうですよ。結末はハーレムエンドという定番な終わりが理想です!」


テーブルを挟んで俺の向かいに座っていた不死川さんは目を輝かせて欲望を口にすると、

刺激されたのか三好さんも賛同する。よし、二人とも落ち着こう!

右にいる真奈が恥ずかしがっている。粉飾と偽善を知らない潔癖な彼女は羞恥で赤く染まっている。


「そこの二人おねえちゃん!良い事を言ってそれが目的じゃない。まったく…とりあえず帰り道に

待ち伏せすればいいんじゃない?

それなら引っ越しをしても

会えるチャンスはあるわけたし」


三好さんと不死川さんのコンビに指摘の言葉をする比翼は、

そう提案をしてきた。それならと言いたいがそれだと完全にストーカーじゃないか!?

却下だ、却下!別の案が必要だ。


「はは。ありがたいけど別の方法を検討をさせてもらうよ」


「やんわりと断れたなぁ」


魅力的な話だったが状況が年齢のせいもある。けど会わないと発展しないのも事実なんだよなぁ。

誓いを貫くか冬雅の想いに板挟みをしていると真奈が静かに見守っている。


「お兄さん応援しているよ」


それだけで励まされるなんて単純な思考で出来ていたんだな俺は。

憮然ぶぜんたる面持ちだったであろう俺は何をするのか

色々と考えて決意をする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る