第262話―家デートのホラーゲーム―

窓から雨が振りそうな空の暗さ。

さりとて雨模様の外と陽光が射し込まず暗い部屋も同じとは限らない。

リビングのドアが音を立てて開く。


「ねぇ、ねぇ。7月だから夏休み!そこでホラーゲームをしたいと思います」


声を弾ませて入るのは比翼。

居室のソファーで紅茶とケーキを口にして談笑するティーブレイク中に比翼が唐突にそう朗らかに言った。


「ホラーゲーム?急にどうしんだい」


「おにいちゃん、いい質問!

夏休みと言えばこわい話で涼しくなるじゃん。そういうこと」


「あー、なるほど納得したよ」


「お兄ちゃん納得するの早くないかな?どうして今なのかな。

もう少し暑くなってからでも遅くないと思うよ。それに11時の昼前だよ」


冬雅が諭すように答える。

俺が納得するの速くなった原因は冬雅にあるのだが言わないことにした。本人は無自覚であろうし。


「いえ、シンプルにわたしがやりたいだけかな?面白いホラーゲームを見つけたから」


「ホラーゲームか」


そんなに詳しく俺は呟き、ため息をはく。乱読するタイプである俺だがホラーまでは読んだ事がない。

単に好きじゃないのもあるけど

震え上がらせる作品を冷めた目で俯瞰ふかん的に見るのもあるからだと思う。ともかく比翼

がやりたいと言うのであるなら

俺も隣で見てみるとしよう。

一人でプレイだけなら入って言わないから。そして俺は隣に座る冬雅に視線を向く。


「冬雅は苦手なら俺と比翼で二階でゆっくりゲームするけど、どうする」


「わたし、ホラーは平気ですので構いませんよ。お兄ちゃんが

怖がって抱きつかれるの楽しみです!」


明朗快活が現れるセリフをする冬雅に俺は苦笑して「そうか」とだけ答える。おそらくホラーは苦手じゃないのは、なんとなく

そう考えられる。冬雅が怖がっているのって滅多にないだろうし。


「それじゃあ、冬雅おねえちゃんから拝借してきたPCでホラーゲームをしたいと思うけど、まず先にわたしがプレイしていいかな?」


元々そのつもりだったので俺と冬雅は頷いて隣で傍観することにした。ダイニングテーブルでやることに。比翼からすれば両側から

年上に挟まれ明るさが加速していた。

さて、どんなゲームをするのだろうかと見ていたら画面タイトルに

映るのは、魔女の家。


(心臓の弱い方にはプレイするのやめたほうがいいホラーになるなぁ)


「えーと、魔女の家?

タイトルのBGM流れるのレトロで落ち着きますねぇ」


「ふーん。冬雅おねえちゃんはやったことある?」


「ううん、やったことないよ。

お兄ちゃんはプレイしたことありますか?」


「ああ、やったことはあるよ。

すごく・・・怖かったよ」


冬雅の問いに答えて初見でやり始めた当時を思い出してしまい心が震える。

魔女の家はフリーウェアでRPGツクールVXにより作成されたホラーアドベンチャーゲーム。

無料版と有料でリマスターがある。リマスターのグラフィックが良くて新たなる難易度も遊べる。


「えっ!お兄ちゃんやったことあるんだねぇ。えへへ、怖くなったらいつでも、わたしの隣に来てもいいんですよ」


「冬雅おねえちゃん好意を隠すとかしないの。ハァー、じゃあ

始めますねぇ」


どうやらリマスターをするようだ。もしかして冬雅が比翼のために払っているとしたら後で

冬雅に購入した額を返さないと。


「・・・えーと、名前はヴィオラ。年はわたしとそう変わらないか」


屋敷に入る前は怖くない。怖くなるのは壮観な屋敷に入ってからだ。


「あっ、黒猫が喋るのってファンタジー感があっていいですよね。親切にセーブも出来て、お兄ちゃんこれってホラーではよくあるんですか?」


「どうだろう?ホラー映画をまったく見ていないから」


屋敷の前にいる黒猫に話を開けてセーブする比翼。冬雅は黒猫が可愛いとお気に入りようだ。

当時の俺もそうだった。


「緊張してきた・・・では行きます」


最後は敬語になって比翼は屋敷の中へと入る。そこから暗い部屋が。前の扉に入り前へ進むと――ドン!壁が素早く迫り無残な最後となりゲームオーバー。


「・・・えっ?もうやられたの」


呆気ない最後に比翼は何が起こったのか分からずとリアクション。


「やっぱりホラーゲームなんだねぇ」


冬雅の言葉に比翼は賛同の首肯。警戒しないで行くと、こんな事は多々ある。セーブポイントからリスタートし床のスイッチを踏まないよう気をつけて壁に貼られている紙を読み終えて部屋を戻ると

知らない部屋と変わっていた。


「部屋が変わるのか。あっ、黒猫がいたからセーブっと」


比翼はセーブしてすぐに移動を始める。このゲームにはミステリー要素もありヒントを見つけ思考して進んでいく楽しむ醍醐味だいこみがある。


「ひいっ!?こ、こわっ」


進むと蝋燭ろうそくが倒れ

小さな悲鳴をする比翼。


「怖いよねぇ。黒猫がいるからセーブ出来るよ」


「う、うん・・・・・うわああぁぁーーー!!」


バタンとドアが開くと、大きな物が動き出して主人公が下敷きになりゲームオーバーとなる。


「わあぁ。恨みで目覚めていけない物かま目覚めて追いかけられたのはスゴかったねぇ」


「冬雅おねえちゃんは叫ばない事に、わたしびっくりだよぉぉ!」


「ああ。俺も初見では、声を出てしまったけど冬雅はそうでもないのか」


「わ、わたしだって怖いよ。

絶叫するかは個人だと個人的に思うよ。個人として!」


珍しく冬雅が戸惑った頬を引きる笑みで述べた。個人のワードがやや多かったのも含めて

それもそうかと俺は納得したが比翼は引いたまま。

進むにつれ謎解きで時間を楽しみ、伏線を回収と言わんばかりに唐突に襲ってくる怨霊のような者。

考察して詰んだ場所を教えていき順調に恐怖を味わっていき進んでいく。このゲームでは進んでいく内に、ただ歩くだけでも恐怖に堕ちいてしまう。

そして主人公ヴィオラが画家にされてゲームオーバーになる。


「うわあぁーー!?やばい、ヤバい、ヤバいヤバいヤバいやばいぃよ!!どうして追われたの。これ、絵になった後された方が意味が分からなくて、こわかったよ」


涙目になって震えた比翼が、そう叫んだ。クリアーしている俺も

追われているシーンは今でも怖い。

さて我が冬雅はfearフィアー(恐怖)度を窺おうと横目で向くと――


「わぁー、面白いねぇ!」


満面な笑みをしていました。以上、現場の山脇東洋からでした。

こんなシーンに明るい笑顔なのが恐怖を覚えました。耐性が高すぎる。

1時間半ほどプレイしていた比翼は休憩。怖いあまりに涙が流れるほどだったが、このゲームを

してよく起きることなので不思議でもなかった。


「えーと、怖かったら無理しなくていいよ比翼。先が気になるならお姉ちゃんが代わってあげるけど」


「・・・お、お願い冬雅おねえちゃん!マジで怖くて断念しようかなって思っていたから」


比翼は、冬雅が口にした提案に驚くほど速さで両手を握りると上目遣いでお願いされていた。

おそらく軽いはずみで言った冬雅はリアクションが大きく目を瞬かせていた。


「うん。任せて!」


快諾すると冬雅は俺へと近づく。少し嬉しそうにスキップして。


「えっへへ。お兄ちゃんがシスコンに萌える理由が今なら分かったよ。

頼られると、すごく癒やされました!」


「そ、そうか。・・・それって俺にわざわざ伝えなくてもいいんじゃないかな?」


「そんな事ないよ。理想の妹を知り自分の妹属性を知れば百戦危うからず。楽しみしていてくださいねぇ。お兄ちゃん!!」


「不安しかないんだけどぉぉーー!?」


そう遠くない未来に冬雅プランが結構することだろう。かなりはかどっているの飛び跳ねる

程の笑顔をみれば思う。

プレイを再開もとい冬雅の操作で始まる。血に染めた靴を入って

冬雅は軽く驚き比翼は顔を小さく悲鳴。

なんとか最後の間に辿り着いた。


「ここは魔女の部屋だねぇ。

瘴気みたいなのが漂って血に染めた家具が異常さを物語っている」


「な、なんでそこまで詳細に言うんですか!?怖くなるから、

もしかして冬雅おねえちゃん怖がらせようとか思っていない」


「・・・ホラーゲームの醍醐味だから」


「あぁっ、はやく進んでぇぇぇ!!」


揶揄からかわれた怒りで声を荒らげる比翼。冬雅けっこうS属性なのかもしれない。いや、振り返ると思い当たる節が多い。

怒られた冬雅は明るく謝りストーリーを進行しようと動く。

エレンの日記を読む、最後になるとラスボスが現れ急なセーブが出現。

そして極限状態の震え上がらせる展開とBGMからの捕まった

終了の鬼ごっこ。


「わぁ、わぁー。まだ終わらない。いつまで逃げればいいの!?」


弱音と恐怖を言いながらも上手く逃げていく冬雅。普通に楽しんでしているよ。


「やぁ、ひいゃぁ・・・こわいこわいこわい」


見ていた比翼の反応は大きい。

地獄に落とされて日が浅い罪人のような悲鳴。涙は頬を流れていた。

早くクリアしてくれと俺は心で祈る。祈りが叶ったのか捕まることなく脱出に成功した。そして

エンディングが入る。


「わぁー、色々と濃厚でよかったです」


冬雅は軽く身体を伸びをしていて

楽しそうであった。比翼よりも恐怖感は比較にならないほど高いはずなのに涙どころか涙目はなく

悲鳴もいつもの声量であった。


「まさか、こんな最後になるなんて・・・あれ。ハテナがあったよ、なにこれ?」


比翼は疑問符を浮かべて画面に人差し指で、その疑問を向ける。

冬雅もよく分からず首を傾げる。

ちなみに俺は知っている。


「ああ、実は真のエンディングがあるんだよ」


「そうなんですか」


「まさかのマルチエンディングだった!?」


比翼は目を大きく開き驚く。

ちなみにスタート地点で一時間何もしないエンディングもある。


「その真のエンディングだけど、恐怖の鬼ごっこから脱出する部屋の右ドアくぐり抜けて上の部屋にあるタンスからナイフを入手して、そこから特別な事をせず普通に脱出で見れるよ」


ちなみに難易度が難しいモードでやろうとすれば麻痺のようなトラップとか加速してくるから、飛躍的に難しいが今回はノーマルなのでそこまでは難しくない。

そして強制セーブポイントから始まりナイフを入手した所で魔女に捕まる。触れる音と刹那のシーン、そしてゲームオーバー。


「きゃぁ!?捕まってしまったねぇ」


「うわあぁ!?」


「キャッァァァーー!?比翼こ、怖いよ急に抱きつかれると」


「だ、だってスゴイんだよ」


冬雅は最初よりも恐怖に支配されし比翼に抱きつかれ今日で大きな悲鳴が聞けた。リベンジして難なく入手して脱出をした。

そして真のエンディングへ、恐るべき真実と残るのは悲痛な感情だった。


「「「・・・・・」」」


過去に真のエンディングを見終わる。ここまで暗くなることは過去にあっただろう?否!ないであろう。

救えない最後に言葉を失う二人に

俺は明るく言の葉を紡ぐ。


「実はノーコンテニューで進むと黒猫の目的さらなる真実を知れるんだ」


「む、難しいそうですねぇ。ノーコンテニューは」


冬雅は笑顔を作って答える。さすがに最後のシーンで涙腺を崩壊していて流れる涙に見惚れそうにならないよう気をつける。


「ノーコンテニューなら真奈おねえちゃんに頼むしかないよ。おにいちゃん」


「たぶん真奈はホラーは得意じゃないと思うけど。簡単にノーコンテニューを目指すならスマホ版とかなら復活してノーコンテニューいけるよ」


すると冬雅は涙を拭うった後に答える。


「お兄ちゃん、それってノーコンテニューの定義から逸脱しているよ」


発言した俺もそう思った。操作性に難があるスマホアプリのスペシャルにはスゴイ事が書かれている。特に古参や大ファンな人には垂涎すいぜんな情報が。

思った以上に怖かったのか、二人は俺から離れてくれなかった。

夕食になると降りてきた移山は、またイチャイチャしているなぁと

呆れと優しい眼差しに誤解を解こうとしたが今更いまさらと返ってきた。

床に眠る時刻になると枕を持って隣に寝ようとするのを俺は静止の声を出す。


「ストップ!どうして左右から寝ようと?いや状況が分からなくて混乱してきた。説明はできる?」


「その。私、思ったよりも怖かったみたいで・・・お兄ちゃんの近くなら安心でドキドキ感で忘れてしまうから・・・・・」


ウサギの動物バジャマ姿の冬雅は

頬を赤らめてそう言った。

冬雅は恥ずかしいさで言葉を言えず照れてしまったようだ。


「いつ襲われるか分からないし。おにいちゃんに抱き枕にしたら

安心できる」


比翼は説明を終えるとすぐに隣にダイブして抱きつかれてしまった。


「けど、3人で寝るのは狭くして寝返りで難しいと思うけど」


二人から左右で寝てしまうと俺は寝返りをしないよう気をつけないといけない。すると考えこむ比翼が閃いたと表情に出る。


「じゃあ冬雅おねえちゃんがわたしの後ろから寝るのは?

遠くなるけど冬雅おねえちゃん的にわたしとおにいちゃん両方の抱き枕と考えれば」


それは比翼を挟んで寝ることだろうか。少し想像してみたけど、

なんだか背徳的な光景に思えるのは俺の思考が腐っているからだろうか?いや考え過ぎだね。


「そ、そんな夢のようなことが!?」


冬雅が俄然がぜんとやる気になり小さな拳を作り燃えている。


「わ、分かった。それなら布団をもう一つ出していくよ」


俺は自分の部屋にあるベッドではなくの布団で3人で寝るのかと

当然の疑問を抱くわけだが今更ここで突っ込んでもと諦めた。

二人分の布団を3人で横になる。

比翼と冬雅に抱き枕にされてしまい落ち着かない。分かった結果だった。


「お、おにいちゃんトイレに行きたいから一緒に来て」


もじもじする比翼に頼まれれば断れる事など無くついていく。

声を小さく話をしていたが、もぞもぞと動いていたからか冬雅が目覚めて同行することになった。

壁に背を預けて俺と冬雅はトイレの前で待っていた。


「お兄ちゃんって魔女の家に詳しかったりしたけど他にもホラーゲームとかしていました?」


「残念だけど他にやったのは青鬼になるかな。青鬼2からは複数のキャラが視点のストーリーがあるよ。

恐怖感より驚きの方が強くて重厚なストーリーにミステリーとか」


青鬼シリーズ。スマホのアプリで遊べて楽しめる。何故か大人な容姿の中学生なのが内心で突っ込んだ。

友達たけし彼を初めた時はチャラいそうなのですぐに消えるとホラーあるあるパターン思っていたが進んでいくとイメージが変わる。

おそらくプレイヤーの中たけし嫌いはいないと断言するほど重要的なキャラ。


「へぇー・・・そのこれからは一人じゃなくて、わたしと二人でしませんか?」


「えっ?」


恥じらいながらも勇気を振り絞っての言葉に年甲斐もなくドキッとした。

けど基本、一人プレイなのだけど指摘するべきかと思ったが、違う!


「もしかして、冬雅や比翼のように交代しながら進んでいくプレイを俺と冬雅で?」


「う、うん。比翼に誘うのは躊躇ためらうかもだけど。わたしならトラウマになる事がないと思うから」


魅力的な話だけど時間など気を遣わないといけないので一人の方が楽しいはずだ。

されど冬雅と二人で一緒にするのも悪くないと感じている俺も入る。


「分かった。だけど執筆とか色々とあるから長時間は出来ない。

するのは少しだけだと思う」


「うん。それでもいいよ」


不確かな約束になってしまったけど冬雅は不満など無かった。

曇りのない笑顔を向けられ心には甘酸っぱさで溢れる。


「お兄ちゃん・・・大好きです。

約束が叶ったら、きっと恐怖感よりも多幸感がいっぱいで別のゲームまでなると思います」


「本当にそうなってしまうだろうね」


今でもスイーツを食べた甘さのように心が満ちている。

今日も冬雅は告白、普段とは違う静かに微笑を浮かべていた。

甘い空間的にいるからか、返事に断らず俺は素直に肯定をした。

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