第261話―マンガ家志望はかなり大変―

夏になるに従って町を歩く人々の格好は涼しいものになっている。

三好さんからエミリーさんがカップ麺とデリバリーサービスばかりで美味しい手作り料理を作って欲しいと連絡がきた。

今日は冬雅が学校にいて比翼は移山がいるので寂しい気持ちはないだろう。昼過ぎには帰る予定だ。

俺はエミリーさんの自宅に近いスーパーに入り何を作るか商品を眺めながら買い物をする。


(そういえば今日から袋の有料化だったなぁ)


2020年7月1日から実施された。

ずっと前から提案があった事を知っていたのに当日のスーパー入って思い出した。しまったなぁ、

エコバッグを持って来ていない。

他の国ではユニークな対策していて日本が対策をまったくせず悠長だったから不名誉の化石賞を受賞してしまった。

有料化と書かれているチラシは見立たない壁に貼られているの

見て改めて実感する。

それよりもエミリーさんが求めるものが優先だなぁ。


(これだけあればいいか)


レジで会計を済ませて目的地に向かう。エミリーさんが住んでいる場所は学生の街で名をとどろかせる、お茶の水にあるマンション。

年齢は俺と同い年、目指すものは違うが同じく28歳なのに夢を見て目指して諦めない精神に共通点で

親近感が抱いてしまい、それは勝手な仲間意識だなと自分の思考に呆れる。


「待っていたよ!いやぁー今日は真奈ちゃんは来ていないようだけど・・・はっ!ご、ごめん。

淫行と分かってしまって別れてしまったよね?」


「違います。前よりも絆は強くなっていますよ。それに淫行の心配は無いです。ご両親さんに許可を得ましたので」


エミリーさんの認識に俺と真奈は付き合っている事になっている。

実際は親友、何かあれば恋人になっているのは強く否定が出来ないけど。


「へへーん。知っているぜぇ!

事情はアカネちゃんから知らせてくれたからなぁ」


相変わらずテンションの高さに俺は苦笑する。三好さん、エミリーさんに伝えているからなぁ。

女子トークでもしているのだろう。

こうして気さくに話をされ、玄関で歓迎されると俺も隠したい事を出てしまう。

前にあったよりも僅かに長くなった金髪ショートボブとあどけなさがある碧眼ブルーアイズ

大国おおくにエミリーさんはノルウェー人で日本人の両方の血が流れている。


「長話の続きは奥に入ってからでもしませんか」


「おっと、そうだね。忘れてちまたぜぇ。わざわざ来てくれたのだから、おもてなししないと」


エミリーさんに案内され居室に入る。


「こ、これは・・・咲きに掃除をしないといけませんね」


「えっへへ、面目ない。リモート飲み会を沢山どんちゃん騒ぎで

パーリーピーポーしていたら

少し散らかしってしまったぜ」


「そ、そうですか。少しか?」


缶ビルの中からカーペットが濡れし、ピザの箱や脱服や下着も山のようになっているし。端的に言って汚部屋。異臭も漂っていて

不快な臭いが強すぎる。


「それじゃあ、洋服などを片付けてください。俺・・・私は食べ物とかゴミ袋に入れておくので」


「さすが、お兄様。感服しました」


「まだ何もしていないけどね」


「そんな事はありませんわ。

お兄様なら何でもやれます。

そんなわけで買った服や下着なんだけど、これとこれは洗濯して。あっちと、アレとは捨ておいてくれたら」


「おだてても、しませんよ。衣類はエミリーさんしてください」


「チイッ、上手く行くと思ったのに」


いやいや、下着まで俺に片付けさせようとするの間違っているからね。普通は恥らってよ。

冬雅なら下着を洗濯すると自分でやると恥ずかしがる。

ともかく急がないと帰るの遅れる。


「・・・つ、疲れた。夏だと疲労感が溜まっていく」


キレイになった居間。本当にエミリーさんは衣類だけで、それ以外は俺任せなのでスゴイ疲れた。


「お疲れー。お酒しかないけど飲む?」


「水道水から入れた水でお願いします」


汗を流していないエミリーさんは

カーペットで胡座を組んで休む俺の前に両手を膝につけて屈む。

水色のショートパンツで、そんな事をすると白い美脚が釘つけてしまうので、やめてほしいです。

あとあと、服から胸の谷間とか見えてしまっているから!

どんなポーズなのか気づいてエミリーさん。


「無理しなくても、お酒なら何でもあるよ。アルコール濃度が低いならいいんじゃない?」


「残念ながら俺は織田信長や竹中半兵衛たけなかはんべえと同じく甘党でお酒が好きじゃないんですよ」


「へぇー。んじゃまぁ甘いお酒がありますぜぇダンナ」


「・・・少し、いえやっぱり結構です」


「おぉー、動いていたけど自制心が難攻不落だね。じゃあ、ちょっこと買いに行ってくるよ」


「あっ、いえ。それぐらいなら自分で行きます」


俺が立ち上がろうと両手を床にカーペットにつけようとすると言葉での断るの無理と思ったからか立ち上がり玄関に早足で行く。


「いいって、んじゃあ」


自由奔放な人だなぁ。俺の周りの人達は大抵それだけどエミリーさんは特に。

買ったのは黒いコーラー。お礼をして受け取り喉を潤す。うん、

美味で一気飲みに挑みたくなるのをグッと堪える。

心身共に回復したので俺は台所に向かい調理を始める。


「おぉー和食だ!」


手料理をなかなか食べていないなら和食が欲しくてたまらないだろう。

メニューは醤油しょうゆの代わりにめんつゆ使った肉じゃが、味を強くする生姜しょうが使い他は豆腐やワカメや大根の味噌汁、ほうれん草と卵の炒めた料理。


「片付けていたら高カロリーばっかりでしたので、低カロリーの和食にしました。冷蔵庫にめんつゆがありましたので醬油を使わずカロリーを減らしました。

後はダイエットの生姜味噌汁や

ほうれん草と卵の炒めにも、めんつゆを使用しています」


「つまり、いつもよりもカロリーカットした和食か。

さて、味の方はいかに?・・・・・

こ、これは!?上手い!美味しい。ザ・和食の味だあぁぁーー」


「はは、和食ですからね」


余程お腹が空いていたからか和食が最近に食していないからか

オーバーリアクションで美味しそうに食べていく。

作りに赴いた甲斐はあった。

それから談話を続けていき満足したエミリーさんに玄関まで見送られマンションを出ると夜のとばりが降りていた。

帰宅すると冬雅と比翼の二人に明るく迎えられる。しばらくして心配していたと比翼に怒られたが、

それはまた別の話。もとい、話せる内容はほとんど無いからその日は無いだろう。

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