第231話―在宅勤務となった移山パート6―

真奈がラインなど伝えずの突然やって来た。居間で話をしたかった話で花を咲かせ、ゲームを興じていれぱ陽は沈んでいた。少しぐらいはいいかと思い俺は真奈とデュエルを再びする。そして――


「兄者、ご飯そろそろ出来たか?」


「わ、わるい何も作っていなかった」


「「ええぇーー!!?」」


不満の声を零す弟の移山と比翼。

忘れていてアレだけど比翼よ、君も俺と同じく夢中で遊んだ側では?対面には座った真奈は手札を置いて立ち上がる。


「お兄さんをカードゲームしようと誘ったのワタシですから、原因は時間を忘れるほど楽しんだワタシだから」


真奈はなんの迷いもなく俺を庇い、そのような事を口にした。


「いや、そもそも原因なんて決めるなんて必要は無いよ。

悪いのは大人の俺が原因だから」


座ったままではいられなく起立し庇おうとする真奈に心で謝罪して

俺は本当の怠惰である者を告げる。もちろん、その怠惰が俺なわけになる。


「お兄さん、ワタシそんな守られてばかりな子供じゃないですから。ですので責任はワタシが取って料理を作りますよ」


「いや、子供・・・JKがそこまでしなくてもいいじゃないかなと思うけど。だから、ここはゆっくりとして」


感銘して任されると想像をしていたが、まさかの反論と譲ろうとしない信念を感じて俺は言葉を一瞬だけ失ったが、しどろもどろにならないよう言葉を返す。

子供というワードに真奈の眉が揺れ動いたので、禁忌だなぁと感じてJKと言い換えた。効果はゼロ。


「別に怒っていないから兄者、真奈。普通にゲームして待つ、二人でゆっくりとしたら。

あと夫婦喧嘩もほどほどになぁ」


呆れてため息をする我が弟は、果てしなく面倒臭そうな表情でそう告げた。比翼は、「はぁー!?」っと移山の発言に強い不満を顔に現れ睨まれている。それに対して

人懐こい笑顔で対応。さすがっす。


「夫婦・・・喧嘩。そう見られているんだ。フフ、仲睦まじい夫婦」


仲睦まじい夫婦は言っていない。

俺は隣で幸せそうな笑みを零している真奈は両手を頬で当てて、または隠している?横目で見て

微笑ましい反応に心でそうツッコミを入れる。もし、この場に香音という美少女の皮を被った獣が

いたら狩られるだろう。・・・いつもの荒唐無稽な思考が現実味になっていると感じるのは俺だけだろうか。


「それじゃあ、お兄さん。

一緒に作りましょうか」


「えっ?ああ、いいけど。なんだか意見が変わっていますけど」


「いえ、こうして言い合っても決着しないだろうし。一緒にした方が2倍の速さで終わるだろうから」


手を握ると、そのままキッチンまで引っ張り進む。すごく意気揚々な真奈を見るのは本当に久しぶりで夫婦とか一緒に料理を断るほど

無粋ではない。

真奈は鼻歌を意識してかなのか尋ねないと分からない。ともあれ

冬雅に負けず劣らずの明るさで

調理をする。料理が出来た真奈は

ルンルン♪と別ヴァージョン鼻歌をして食事をする。途中から

不適切レベル発言する弟は、「夫婦なんだし、あーんとかしたら?」っと、あからさまに面白半分の笑みで言った。


「お、お兄さん・・・・・あーんしてください」


「なにっ!?山脇東洋いきます!」


「おにいちゃん、もう理解する限界値を突破して訳の分からないことを」


呆れている比翼に言わねばならないけど、逆に期待と幸せそうな笑みを浮かべる真奈に「食べれない」など言えるわけがないと。

夕食を食べ終え、このまま真奈は家に泊まるのだろうと勝手に考えていた。何度もあるので、尋ねる必要性もない。なので軽い気持ちと返事を分かりきっている比翼

は真奈に「今日は泊まるの」と上目遣いで訊く。


「山々なんだけどねぇ、ママとパパに心配させてしまうから帰らないと」


「ま、マジなの真奈おねえちゃん!?」


まさか帰宅しようと考えていたようだ。考えが外れたのは比翼も同じで絶句していた。それを視界情報で早く立ち直る。同じく絶句していたことで自覚して。


「えっ?帰るのか・・・」


「いや、そんなに驚くことじゃないと思うが兄者。ともかく送って行け」


「そうだな。アイアイサー!」


夜遅く一人で帰らせるほど、そんな事はさせない。必然こういう役目は俺になる。ユーモアな返事した俺に真奈と比翼はポカンと呆気に取られていた。


「お兄さんの元気がスゴイ!?」


「あれ、どんなテンションなんですか」


二人の対象的なリアクションに俺は、やるんじゃなかったと後悔する。

そして真奈と夜のとばりが降りる外に手を繋いで出る。


「お兄さん・・・キレイですよねぇ」


夜空を見上げる真奈は、そう言った。俺も見上げて確かにキレイだと純粋にそう感じた。黒の空を星と月でデコレーションされた、それはいつ年を経ても美しいと感じるのは変わらない。否!真奈と

一緒だからか今日は特に綺麗だという気持ちは強く込み上がるのを感じる。


「ずっと気になっていたんですが、今日は冬雅いなかったけど

・・・も、もしかしてスゴイ事を」


「普通に両親が帰って来ているようなんだ。普通に怪しまれないよう冬雅が、そう言って俺を当分は離れると普通に距離を取るようにしているんだ」


「お兄さんそれ全然、普通じゃないですし何回それを言うの?

冬雅の両親にデレデレする娘を見たらショックだし禁断の恋なのかな?って疑いたくなりますからねぇ」


年が離れている上に、淫行にあたるので禁断の恋になるんだよなぁ。本当に誰かに言われないと

自覚がないからなぁ俺も・・・いや

違うか冬雅だけが。


「それじゃあ・・・お兄さん!!」


「んっ、どうした真奈?」


真奈は足を止めた。手を繋いでいる俺も止まることになり数歩と先の俺は真奈に振り返ると頬の淡い赤は目立つようになっている。

何かの前触れで俺は自然と警戒心を鋭敏化する。警戒するのはバトル的な意味ではなくドタバタ系になることで。


「つ、月が綺麗ですね」


「えっ?・・・えーと、ムーンは綺麗だね。告白は先延ばしのままで。気持ちは嬉しかったよ。うん、ありがとう」


「どうして、サラッと次々と対処して言えるんですか!?

頑張って言ったのに、なかなか言えないセリフなのに。

強い告白を冷静に答えている!!」


どうやら失敗したようだ。真奈の握る手に力を込められ、攻撃しようとしているのだと思うが普段から身体を動かさない真奈の攻撃ではダメージは殆どない。

そんな事より真奈の気持ちだ。

急な告白に完全な避け方なんて求められても困る。


「えーと、夏目漱石の有名な訳文だから小説志望者の俺は知っているから意味は、もちろん。

えーと、聞きたいことはそれじゃないよね。別に慣れていないよ。ただ、冬雅に毎日とされたら・・・」


毎日と告白を敢行する彼女を頭の中で浮かぶ。毎日とされたら

響かない人はいないと個人的に思う。


「お兄さん、どう考えても慣れているよ。改めて、そんな事を

出来る冬雅がスゴイと思う」


「それは、同感する」


俺は真奈の呟いた言葉に首肯する。

俺もやれと言えば三日坊主になる自信はある。という告白は毎日するようなものではないからなぁ。

すごく今更すぎる疑問だけど。


「・・・ワタシが、こんな事をしたのは気になるよねぇお兄さん。

きっと冬雅に告白が減って寂しく感じている、お兄さんに告白しようかなとひらめいた」


人差し指を立てて微笑する。うーん、月光の下で真奈のような

美少女がすると眩しいなぁ。


「そうなのか・・・分かったけど。

真奈って思ったよりも感情的なんだね。改めてそう思ったよ」


好きな人のためになると、もっと行動的になるところが。

すると真奈はポニーテールを揺れ動かすほど首を横に振る。


「ち、違うから。いつもするわけはないから。特別なんだから!

ほら、別の話をしようよ」


「ああ、そうだな真奈」


話題を変えて盛り上がるのはゲーム。電車に乗り揺れる車内にいてもゲームの話題はする。真奈が家でしているのは動物の森で

楽しんでいることとか。俺が最後にしたのは、かなり前になる。

電車を降りて別の話題になり

人が見られても構わず手を繋いで歩く。そして真奈の家の前に到着する。


「お兄さん・・・送ってくれて、ありがとう」


「いや、いつものことだから。

楽しかったよ真奈」


すると、最後の言葉をした事に真奈は目を大きくして驚いた。

俺も内心ではらそんな恥ずかしいセリフを我ながらしたものだと思った。二人きりで談笑して歩いていた結果そう、させたかもしれない。


「お兄さん・・・ワタシも楽しかった。また一緒に楽しもうねぇ」


明るく微笑を浮かべる真奈は、満面な笑みのようであった。いや、そうであるのだろう。


「ああ、また一緒に俺も楽しみたいと思っている。それじゃあ」


「うん!バイバイ、お兄さん」


真奈は控えめながらも元気に手を振る。俺も小さく手を振り帰路につく。ときどき振り返ると、

真奈は手を振り続けていた。遠くなって姿は朧気おぼろげになっても、それでも手を振る。

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