第230話―在宅勤務になった移山パート5―
5月16日は雨天だった。もし雨が振った日には冬雅と窓を閉じたまま手を振り片手のスマホ持つ。
それはラインメッセージもあれば主にやり取りするのはビデオ通話。画面越しから冬雅も見て、視線を上げれば窓越しからも姿を目視が出来る。
わざわざビデオ通話をする意味があるのかなと思ってしまうが冬雅の楽しそうな笑顔を見たら、そんな疑問が無粋と思った。
『カリメーラ、最愛のお兄ちゃん!』
知らない海外の挨拶をされて俺も冬雅に倣って言葉を返す。
「・・・カルメラ冬雅」
『あれ、お兄ちゃんそれってお菓子のカルメラじゃないかな?』
カルメラと聞こえた俺は、自信満々に挨拶したのが
冬雅はニコニコと首を傾げて尋ねる。どうにか大人としての体裁を保ちたいが、変に言い訳をすれば
見苦しいと考えて嘆息する。
「・・・異国の言葉は得意じゃないからね」
『ふぇー、以外です。莫大な知識の宝庫ようなお兄ちゃんが』
「冬雅の中の俺ってそんな凄い存在なのか・・・知っている所だけで知らない知識だって多いよ意外と」
恋し熱中する冬雅のフィルター越しには美化し上位的な存在感に
なっているのだろう。その一端を知って俺の口は苦笑で漏れて心中は上位互換から見られて真実を知ったら恋をやっぱり冷めるのかなと考える。
『あー、でよね。つい知っているのが、お兄ちゃんだって思っていました。難しい言葉をよく使うし』
「ああ、漢検一級を密かに勉強とかするの趣味だからね」
『えへへ。スゴイ趣味だよ、お兄ちゃん・・・わたしの場合は、もっとスゴイけどねぇ』
「もっとスゴイ?というのは」
『お兄ちゃんと、こうして挨拶をするの』
「ああ、なるほど・・・納得だよ」
一応その趣味は俺も一緒だ。
当初は仕方なく、諦めようとしていたが、これは一日分も元気の
そんな愚考するほど俺は、冬雅の
好意や愛情を受けた。
『お兄ちゃんその・・・あの!』
白雪な頬は赤く染まり落ち着かない反応をするのは、これから
自分に課す事の羞恥心。
『雨が振る景色も静謐的で
「えっ、・・・ああ」
『その、失礼します。お兄ちゃんバイバイ!また、次に、それじゃあ!!』
通話を切り、二つの窓からの冬雅は脱兎のごとく部屋を出ていく後姿。今日の告白は冬雅のキャパシティが限界なんだろう。そんな詩のような告白をされて俺の心は
響くものはあった。
冬雅と朝の挨拶を済ませ一階に降りる。冬雅の言葉を借りるなら
逢瀬の一言。
「・・・おにいちゃん、鼻の下が伸びていて嫌なんだけど」
「えっ!?」
リビングに入るなり今日は俺よりも早く目覚めた比翼の第一声に
思考と身体が硬直する。
「ともあれ、おはよう。分からない所があるのだけど見てくれる?移山は知らねぇとか言うし」
年上である相手に呼び捨てで呼ぶ比翼。もし呼び捨てされても気にしないけど移山は、そこそこ気にするのに珍しいものだ。
「ああ、いいよ。どれが分からない?」
イラストレーターが書いて人物説明と出来事を書かれている歴史の本を開いていた。
難しいと言った歴史というのは
「えーと、厳島の戦いか。同じ主君を持つ
「うん・・・それで?」
恐らくゲームやドラマ等で興味を抱き調べたのだが理解が出来ない部分があったのだろう。その点だけを教えるのもいいけど、ついでに最初から最後まで短めに分かりやすく説明をすることにした。
「話は少し戻すけど
周辺を守りを固めた」
「知っている!そこから陶軍が2万の大軍で攻めて来て不利になったんだよね。毛利軍はわずか2千」
嬉々とした表情で比翼は言った。
な、なるほど倍以上の数と知っていたが数までは忘れていた。
「詳しいなぁ比翼は。それで続きをするけど毛利元就の三男であり
「・・・うん、んっ?」
まぁ、最後の出来事は衝撃があったようで違和感を感じた比翼は
疑問符を浮かべていた。
「毛利元就は小早川隆景にそれ以上を続けていたら守っている
催促したのは戻ってきて手伝ってと来たんだ。それで村上水軍を連れず小早川隆景は戻った。」
「えっ!?あれ、なんだか知っている情報とかイベントとか違う」
未知の情報に口を大きく開き驚く比翼。歴史は常に研究が進むと信じていたものが
「漁船に紛れて、なんとか宮尾城に戻った小早川隆景のおかけ。スゴイことなんだ。
士気は高くなったけど、それでも篭城のままで数の差も不利なまま」
「うーん、それスゴイ?」
その疑問に俺はインパクトが弱いから、どうしても小さく地味に思えて何がスゴイと言えば案としか言えないが。
「コホン。それで熟考した村上水軍は漸く動いてきたんだ。
おそらく小早川隆景は動くと読んで宮尾城を士気を上げていたんだと思う。それでも暴風雨の中で船を動かして陶本陣の背後を取る
危険な作戦を実行するほどしていた事から」
比翼は静かに聞いていた。頷く事もなく真剣な顔で聞く。歴史を愛してやまない比翼らしい反応に
俺も眠りし歴史の魂が叫び心が踊り熱くなってくる。
「それで勝ったんですねぇ。
つまり全ては掌の上とかじゃなく奇跡的に勝利するほど厳しい戦いだった」
具体的に説明をしたい所だけど、
やり過ぎると理解する範囲が限界に達しそうになるので、いくらか
端折る。活き活きとする比翼は両手を拳を作り上と下と繰り返す動作に癒やされながら首を肯定に振る。
「ああ、辛勝した。例のごとく
なっているからねぇ」
ピンポーン。と来訪を報せる音が居間に響く。配達員だろうかと思いながら俺は比翼に「少し待っててくれ」と一言を伝えてから
腰を上げて向かう。玄関先に立つ美少女に俺は言葉を失う。
「お兄さん、こんにちは。久しぶりですねぇ」
「真奈・・・ああ、こんにちは。
雨が振っている中で
「うん!来ました」
パーカーに膝丈の白スカート。雨天用にラフでオシャレな格好の上にレインコート。傘を閉じて
挨拶する真奈の姿にまるで絵画だなぁと心が油断があれば見惚れてフリーズが起きる。
「あっ、真奈おねえちゃんだ!
おねえちゃんーー!」
「ストップ。抱きつくのは手を洗った後にお願い」
「ラジャーです!」
手を前に出してストップさせる真奈、比翼は口を尖らせて少し不満そうに納得する。
自由奔放な比翼らしい反応に真奈は微笑む。
洗面所で手洗い、ついでにマスクを外し、顔を洗う真奈。どうやら化粧はしていないようだ。タオルを渡すと、ありがとうと笑顔で言った。拭き終えると俺に選択カゴに入れる。振り返った真奈に
俺は手を伸ばす。
「・・・・・?あっ!・・・うぅっ」
最初はよく分からないと仕草して、賢明な彼女はすぐに理解に至る。真奈は、ゆっくりと俺の手を軽く
握り具合で真奈の気持ちが此方まで伝わるようで、恥ずかしそうで
嬉しそうにする真奈を見て落ち着かない気分になる。
「えいやぁー!」
「・・・・・・・・」
それをただ傍観で見る比翼ではなかった。俺の空いた手に勢いよく握る比翼であった。両手に花を
体現した俺は居間に入りソファーで座る。そしてローテーブル上には直前に熱くなって語ったきっかけの歴史に関する本。ハンヴィー本ではないよ。
「これは、比翼のだよね?」
「どうして分かったの真奈おねえちゃん!?わたし言ったけ」
「比翼が好きそうな装丁だったからかな?」
「納得できない!それ、納得できない!?」
そんな理由で納得が出来ないと連呼をした。年が近い年下の女の子をナチュラルに頭を
「ふん。真奈おねえちゃんそれで、わたしが喜ぶと思わないことですねぇ。もう少しの頭をなでなで続けてください!」
「ふふ、いいよ。なでなで」
しかし、ここで問題は発生する。
真奈と比翼の間に手を繋いだままの俺がいることに。真奈は手を伸ばしてソファーの上で膝立ちで
俺の後ろから手を伸ばし比翼を撫でているのだが、距離が届くのにそれなりに伸ばす必要があり、つまり右から真奈の身体が当たっていて腕に胸が!という邪念を払うことに強いられた。
(どうやら真奈は自分の胸が俺の腕にかなり・・・当たっていることには気づいていない。
指摘が出来るわけがないなら、
本人が気づくか回避するしかない!オブラートで迂遠なセリフで)
「本を読んでいた比翼が分からない部分があると言われて厳島の戦いを教えていたんだ。内容がけっこう長文だからねぇ」
「ふーん、どれどれ」
「あっ!」
頭を撫でるのやめた真奈は、テーブル上に置かれた本を前のめりになって文字を追う。なでなで中断され残念そうにした比翼。すまぬ。
「
「あー!桂小五郎の先祖だよね、それ。知っている超、知っている!!」
真奈の
は目を輝せる。二人が楽しそうにしている所で俺は指摘するか悩むが結局は正しい情報を言おうと結論。
「二人とも実は、その桂元澄だけど厳島に誘導しようとした話だけど実は無かった可能性もあるんだ」
「「えっ?」」
二人のキョトンとして声はハモる。
「
「そ、そうなんだ・・・
いや好きで得意分野だけだったから尊敬の眼差しを向けないで真奈。
「おにいちゃんよく知っているよねぇ真奈おねえちゃん!」
「ふふ、そうだねぇ」
あー、ご両人それは俺がいない場合でお願いしたい。
ここまで褒めて、賞賛されると、汲めども尽きぬ知恵の泉だ。
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