第206話―彼女達は夢を見て、俺はつかめず6―

香音と送ってから、俺は少し急いで家に帰る。


「お疲れ様、お兄ちゃん」


「ただいま・・・あれ?比翼がいないけど寝てしまったか」


玄関で待っていた冬雅。さすがに待っていたのは、そろそろ帰宅すると送ってから頃だと思う。

リビングにいれば玄関ドアの音で駆けつけるはずだから。


「うん、お兄ちゃんによろしくって言って眠ってしまいました。

・・・あの、夜の繁華街って言葉が、ずっと気になっていたんですけど・・・・・」


「えっ!ああ、えーと・・・変な事はなかったんだよ」


「気になります・・・」


目をうるうるとされお願いされるような事されると弱いんだなと

自分の弱点を一つ知ることになった。

香音とあそこを回った事は言いたくはなかったけど・・・別に問題は起きてはいないわけで状況を詳細に言ってもいいはず。

それに説明しないとモヤモヤさせたままになるし。


「実は――」


「――ふぇ!?お、お兄ちゃんその大人なホテルに行っていたんですか」


「もちろん何も起きなかったし、入ってもいないので普通に通過したんだ」


「そ、そうだよね・・・なるほど、そこで、どんな反応をするのか見るのも――」


聞き捨てならない独り言を耳にした俺は咳払いして思考を遮らせる。


「ゴホン、ゴホン。そこで通るのは2度と無いのと、デートの場所として選ばないように」


「わ、分かっているよ!最終手段として検討していますから」


その最終手段とはなんぞや?と思い俺は寝耳に水に呆気と取られている反応していた事に気づき咳払い。うーん、咳払いばかりしているなぁ。この話題と冬雅の計画を頓挫とんざさせようと衝撃を与える事を考えて浮かび即座に実行に移す。


「比翼か寝ているなら、たまには二人でデートを今からしないか?」


「デートですね。わかりま・・・・・へっ?おぉ、おぉぉ、お兄ちゃんとデートですか!?

しかも二人きりで、お兄ちゃんの口から・・・あっああ!!?」


(反応がスゴイ事になっている!?)


手をわなわなとさせて、炎が吹きそうなほど赤面し、口を開閉して何かを唸る美声。


「冬雅、比翼が起きてしまう」


おそらく比翼が爆睡中しているのは2階だろう。俺は上に指を向けてそう指摘をした。


「で、ですね・・・お兄ちゃんと二人でデートなんて懐かしいですね。えっへへ」


「さすがに外は無理だから家になるけど」


「そ、それって・・・すごくドキドキします。・・・知っていても」


言葉に懐かしいのは、確かに二人でなんて最近はなかった気がする。いつもは複数で・・・改めて

考えるとスゴイ事になっているなぁ。ここ最近は比翼と一緒が多いけど。冬雅とリビングに行き

映画や他愛のない話をして寛ぐ。


いつもの日常で、デートを意識していなかったら完全にいつもと変わらない日常。それでも冬雅は

二人きり!デート!イチャイチャ!

など楽しそうに口にしていた。


「ふわぁー、前は夜に強かったけど弱くなってきたなぁ。冬雅そろそろ遅くなってきたから

寝てもいいかな」


ソファーで肩が触れる距離で俺はそろそろ寝るべきだと思った。

幸せホルモンオキシトシンが分泌して眠気を忘却している冬雅に。

時刻はすっかり一日が過ぎて数時間が経っているわけで、いつもは早く寝ている彼女。そして、俺も眠たいのもある。


「そ、そうですね・・・お、お兄ちゃん大好きです。わたし、ずっとお兄ちゃんといたい・・・その、

ずっと隣に居てくれませんか!!」


これは冬雅が課している告白。毎日と宣言して大好きと愛情表現に

変化していたが、今日は告白の

定義に適した言葉だった。

いや、俺は何を驚いているだ。

それは十歳年下から美少女に告白されるのはドキマギするけど。


「ずっとは約束は出来ないけど、長く隣にいたいと考えている」


いつかは、冬雅が恋を冷めていなくなるまで隣にいようと思う。


「お、お兄ちゃんからそんな言葉が聞けるなんて感激です!

保護者的な意味だって分かっても」


彼女は、嬉しそうに笑いそして儚さがある。俺は、この回答でよかったのか自室に入って悩み続けるのだった。

それから翌日、いつもの朝と笑みを絶やさない冬雅を見て安堵する。


「およー、冬雅おねえちゃん」


「およー?あー、おはようの略だねぇ、およー比翼!

おはようございます、お兄ちゃん!」


「ああ、おはよう冬雅」


その違和感は冬雅が、この恋が終わるのを恐れているのを

知っていながらも俺は明確的な解決は出来ない。それは彼女自身で乗り越えないといけない。

昼は冬雅と比翼を教える範囲で教えて分からないところは一緒に考えながら調べたりしていた。

休憩に冬雅と比翼が運動不足はなっているだろうから、かなり前に流行ったビリーズブートキャンプを一緒にやる。


「ハァ、ハァ・・・ハイパーインドアになった俺は、激しい運動は得意じゃないからなぁ」


誰に対しての言い訳したかは、ともかく疲れる。


「はい、お兄ちゃんタオルです!」


「ありがとう冬雅。もしかしなくても冬雅は息切れとか汗をかいていないけど?」


「えへへ、よく見てますねぇ。

体力は自信がありますので!」


「ハァ、ハァ、ハァ・・・もう、動けない」


比翼はうつ伏せになって倒れた。

大袈裟だなと思いながらも、思ったよりも運動不足なのと、これ以上は意欲が無くなると思い終わりにした。夜になってそれは襲ってきた。


「手、手が痛いのと足が痛い!

見事な筋肉痛になってしまった」


「お、おにいちゃんのバカ!激しい過ぎて痛い思いしたよ!!」


比翼もその例外にはならず、筋肉痛で悲鳴を上げて、提案した俺を罵声をぶつけた。今日は比翼が

俺と寝ることになったのだが

お互い後になってから筋肉痛で苦痛に苛まれる。

電気は豆電球、もうお互いベッドに入ったが、眠りにつけずにいるのは痛みが原因。


「わ、わるい。まさか、こうなるとは思ってもいなかったから」


「おにいちゃんのバカァ!

初めてなのに激しいのを選ぶから。・・・むぅー、別にいいけど」


不平不満を口にして俺は甘んじてそれを受ける。アメリア用では

もっと過酷なトレーニングだけど

日本用でも難しいし、過酷。

涼しい顔と楽しそうに終始していた冬雅のスペックの高さに畏怖を覚えたものだ。そのまま目蓋を閉じて意識を途絶えて眠りにつけるかなと数分ほど経つが起きない。


「ねぇ、おにいちゃん」


比翼は小さな声を発して俺の背中にギュッと服を掴む。話しかけられ俺は目を見開き、振り返らずというより振り返れない。


「んっ、比翼どうしたんだ?」


「もし・・・おにいちゃんが会えなかったら、わたし死んでいたと

思います。再婚した相手に滅茶苦茶にされて自殺を・・・もし、おにいちゃんじゃない人と泊まっても同じ選択をしていたと思います」


どんな表情をしているかは、見えないが解る。おそらく比翼は、

愛おしそうな表情をしているのたろう。それぐらい読めるぐらいに

比翼と長くて実際は短く居る。


「・・・比翼」


どう言葉を返せばいいのか俺は出てこない。真剣で真っ直ぐな彼女に答えれる言葉がなかった。


「えーと、おにいちゃんから大事な事を教えてもらった。物事の善悪とか裏表とかも、冬雅おねえちゃんには恋をしたら正しいアプローチとか」


「いや、冬雅のは特殊だから!」


もし冬雅のようなアプローチをする人が二人もいれば驚きだ。

毎日と告白なんて実行したり通い妻を通り越して泊まってもいるし。あまり参考に出来ない。


「あっはは。知っていますよ。

やり方の想いとかを見てきたんですよ。だから、夢を見れるようになったんです」


「夢を?」


世間的には家出少女の比翼の夢。

きっと、容易には掴めず挫折や苦しい現実を前にするだろう。けど、俺は応援するしその道を作れるようにする。冬雅達もきっと

応援するし、俺よりも力に

なれるはずだ。


「うん。おにいちゃんのお嫁さんになるのも一つですけど、

苦しんでいる同じ境遇とか助けられるような・・・漠然としているけど救えるようになるのが、

わたしの夢です」


「それは、大きな夢だな。

まぁ、ゆっくり模索していくといいよ比翼。具体的に進む道を」


強く応援をしないよう俺は言葉を選ぶ。そこで絶対に叶うとかなと

使えば軽い言動に見えて性根は

真面目な比翼はかせになる。それはいいけど我ながら臭いセリフに恥ずかしくなる。


「うん!ありがとう。おにいちゃん!」


比翼はこれからどうなるか、分からないが立派に成長していくだろう。

俺は、おやすみと告げて眠りにつくのだった。

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