第207話―彼女達は夢を見て、俺は夢をつかめず7―

俺は、女子中学生である比翼と一緒に寝るときに気をつけていることがある。それは、距離感だ。

同じベッドで比翼がくっついてしまうのは仕方ない。本当の身寄りもなく助けてくれる人は

いなかった。だからこそ、俺は

救いたいと思っているし成長して

離れてもそう思っている・・・けど。


「・・・どうしよう。これ脱出が出来ないパターンだ」


青空を照らす光が窓越しに射し込む。

目覚めた俺は、比翼にしっかりとホールドされていた状況に絶望する。


(腕は背中で引き寄せるように力を入れている。それに足はまで

動けないよう絡むようなこと

もしている。俺は抱き枕じゃないんだぞ比翼)


「すぅー・・・すぅー、」


気持ち良さそうで幸せに満ちた表情で半分は覚醒の俺も元気になりましたよ。

なので、解放してくれないかな。

ゆっくりと手と足をどけて移動を試みるが――


「んんっ、」


ご不満な声で比翼は俺の胸に顔をダイブした。頬ずりして、ほぼ

動物みたいであった。

寝返りで離れてくれないかなと僅かな望みも起きることはなく、

これ以上がないほど密着状態。


(・・・身動きが出来ないし、柔らかいし温かいから、このままでも――いや何を考えているんだ。

けど・・・これじゃあ)


「すぅー」


抱き心地が良かったのか比翼は安らかな笑みを再び浮かびて寝息を立て始めた。最終手段である無理矢理でも起こす選択も入れて

いたが。


「こんな気持ち良さそうにして

起こせないじゃないか・・・

過去とか夢を語った事を知ったら、なおさら」


そのまま俺は二度寝をしようとしたが、なかなか眠れずにはならなかった。無意識なのか判断出来ないが俺も比翼と一緒に寝るのが

熟睡を出来るようだ。

絶対に本人には言えないが。


「すぅー、すぅー」


再び比翼の眠りについた自然現象の音に聞こえて時間の経過を木にせず眠っていて、目が覚める。いや、目蓋まぶたは開けず頭は覚めたが正しいか。

比翼の腕は背中に回していたが今は俺の胸部に掌で触れていて足は

がっちりとしたままだが、

なんとか脱出が可能。そして慎重にやってなんとか抜けて部屋を出て、体や心が疲れが取れた足で洗面所で洗ってから冬雅が朝食を作っているリビングに入る。

半分は正解だった、もう朝食は出来ていてソファー前にあるローテーブルで勉強をしていた。


「おはよう冬雅。ちょっと起きるの遅くなった」


すると冬雅は立ち上がり俺の前まで小走り近寄り、満面な笑みで下から上目遣い。・・・これが計算で

やっているのだなぁと心で苦笑する。


「おはようございます、お兄ちゃん。そこまで遅くないけど、

珍しく長かったですよ」


遅いのに長かったって矛盾しているんだが、そして冬雅は俺の右手を両手で包むように握り胸の前に・・・触れるあたりまで引っ張る。さすがに意表を突かれたレベルじゃない行動に俺は数秒ほど

思考が停止させた。

これだけは適応できない冬雅の行動に表情は薄紅うすくれない色で頬が染まっている。

この流れは告白だ!と俺は硬直した思考を不可解な行動をここまで計算と一部は咄嗟だと理解した。


「冬雅・・・比翼が、まだ眠っているから当分は目覚めないと思う」


「知っているよ、ナポレオンのような長時間に眠るからねぇ。

お兄ちゃん・・・出来たら、このままずっと、こうして一緒に暮らしたいです。愛している・・・お、お兄ちゃんと一緒にです!」


「えっ!?」


その言葉に俺は不吉な予感を覚えた。日常では絶対に言えない

言葉を軽々と言えるはずがない。

だとすれば、何かあったのだろう。とくにそんな突飛な発言をしてしまうぐらいに焦燥感しょうそうかんになるのが、急な引っ越しだろうけど確認して

見ないと分からない。


「冬雅、少し落ち着こう。

話はいくらでも聞く、座ってゆっくりと話そう」


「・・・えっ?は、はい。

恥ずかしいけど嬉しいです!!」


羞恥心と笑みを上昇したスゴイ照れ笑いをした。あれ?なんだか

思っているのと違うような。

皿を並べたダイニングテーブルに向かいで座り、お互い詳細に喋って釈然としなかった事は理解した。


「なるほど、いつもの告白で俺が誤解していたのか」


「むぅー、お兄ちゃん!違います、いつもの告白って言いますけど簡単じゃないんですよ。

大好きだって知っているお兄ちゃんだからハードルは低くても

すべてを包み込む爆発を起こすほど恥ずかしいんですよ!」


いつもの告白をした言葉が不平不満だったようで、敵意が皆無の睨まれながら冬雅オリジナルの

信条を貫く事が、いっかに大変かを述べる。


「ご、ごめん。てっきり引っ越しとか離れるんじゃないか思っていたんだ」


「そんなこと無いですよ。お兄ちゃんと離れるなら、わたし、これから生きていけません!」


冬雅は、無駄に無駄のない動きで立ち上がり腕を高く上げて宣言する。なんだろうこれは。


「いや、そこは生きよう。

俺が悲しくなるから」


冗談でも、そんな事を聞くと冬雅が好きなのか厳密な判断中にいる

俺は軽々しく言わないで

ほしいと思う。


「はぐっ。お、お兄ちゃん・・・わたし心配してくれるのは嬉しいけど、好意的な言動みたいで困ります」


「好意的と言っても、仲間とか家族・・・もちろん恋の対象を見ていない妹を指します。恋人以上の関係ではないですよ」


我ながら頭がおかしい発言に失笑しそうになるか、起きない。

冬雅の事になれば可笑しい発言も

なかなか出来ないのは、不謹慎な

言葉をやめてほしい感情が強く上回っているからか。


「えへへ、お兄ちゃんそれはツンデレですよ。きゃーーヤバいですね。大好きです、お兄ちゃん」


「ああぁっーー、落ち着いてくれぇぇーー!!」


自由すぎる解釈がどう受け取ったかは知らないが妄想が爆発して

嬉しそうにデレデレ状態になる冬雅。ツンデレ思われたことや、

何故か相思相愛の認識されると

堪えれる容量を超えた。


「キャッ!?お兄ちゃん急に叫ぶと驚きますよ。わ、わたしだって相思相愛と思っては・・・」


「話を変えよう冬雅!

今日は真奈に会いに行こうと考えているんだ」


また、繰り返しそうなので今日の

話に話を逸らそうとした。

ちなみに話題が浮かんだのは、朝食か昼食の後に話をしようと

決めていた。


「真奈の家に?それなら通い妻のわたしも行かないとですね!」


両腕をグッと頬の前で拳を作って揺るぎない決意を表す。

その前に通い妻って、どこでそんな言葉を覚えたのですか。


「通い妻は、そこまでしないのとコロナウイルスが広まっているから留守番をしてほしい」


「・・・お兄ちゃんが、堂々と不倫宣言した」


俯いて冬雅は、ボソッと呟いた。


「い、いや不倫とかそんな話していないじゃないか。それに

そんな関係じゃない。あれ?俺はどこまでツッコミすればいいのか」


不倫というワードに俺は焦って誤解を解こうとする。不意にそんな言葉にも反論したが、

ラブコメ主人公の誤解だ!発言する気持ちが少しは理解できてしまう。


「えへへ、お兄ちゃん冗談ですよ。

真奈、きっと会えなくて寂しい気持ちを忙しさで忘れようとゲームや勉強に没頭しているとはずですよ。なので頭をなでたり頬をツンツンして可愛がるべきです」


「最後の助言は参考にはならないけど分かった。少し遅くなるけど夜には帰るよ」


「そのまま真奈の家に泊まってもいいですよ」


想い人に好意を抱いている美少女を会いに、ここまで勧めるのも

なかなかないだろう。冬雅の行動は理解できるけど時々、

器が大きすぎて驚くことは幾度もある。


「冬雅も随分と冗談を言うように。泊まらず帰るよ」


「むっー、お兄ちゃん。嬉しいけど真奈は、わたしや比翼よりも

デリケートだから大事にしてください」


もちろん大事にしている。真奈の

気持ちを少しでも薄れていくのを

俺は、考慮している。このまま

強く想って叶わなかった時に

深い悲しみさせたくはないと思っている。


「ふっわあぁ。はよう、おにいちゃん冬雅おねえちゃん」


「あっ、比翼。おはよう」


欠伸をして入っていくのは比翼。

覚束ない足取りで、ゆっくりと歩いて俺の隣に座る。高確率で隣に座るんだなぁと俺は思い苦笑する。

3人、揃い朝食を済ませて比翼に

遅くなる伝える。最初は、「うん。へぇー。分かった」で生返事なまへんじで次第に思考が回るようになってから「ふっへぇぇーー!?」と叫ぶほど驚く。

外出の準備を整えて俺は玄関ドアノブを少し握り振り返る。


「それじゃあ、行ってくる」


「やだ!おにいちゃんが行くなら、わたしも行きたい!」


猛反対するは比翼。すっかり着替えを終わらせ靴を履く所を冬雅に

止められている。


「ダメだよ比翼。外は危険だから、ねぇ」


「嫌だぁ!冬雅おねえちゃんは真奈と遊びたくないんですか!

おにいちゃんも冬雅おねえちゃんも心配し過ぎだよ」


それも自覚しているけど、もし俺が一人暮しなら杞憂きゆうや平気など軽視していただろう。

だけど、冬雅や比翼が感染や

死亡する可能性が低くても

苦しむと考えれば、やり過ぎになる。


(本当は、真面目で優しい比翼は賢くても若いから遊びたくて

重きを見ているか。勉強とか

進路と同じぐらいに真剣に考えてしまう。俺はそういう時期は一瞬で、友達の友達ことで実際は他人だから深く考えなくていいか

結論したけど)


「・・・やっぱり比翼、俺と一緒に真奈に会いに行くか」


けど、比翼がここまで行きたいとなれば行かすべきだろう。

危険だけど、同じ都心で注意して

行けばおそらくは大丈夫はずだ。

遠くないうちに、本格的な都市封鎖ロックダウンなどがあるだろう。


「やったー!でも急に変えて、どうしたの」


「そ、それなら、わたしも行く」


「言いにくいけど冬雅は我慢してほしいかな。けっこうな真奈の両親に大人数で行くと迷惑だろうから」


それに冬雅は真奈と臨機応変にある学校で会えるだろうから

比翼ほど気持ちは強くないと考えている。


「・・・分かりました。気をつけて、お兄ちゃん、比翼」


眉根を下げた顔で手を振り見送る。


「ああ、すぐに帰るから。行ってくる」


「じゃあねぇ。冬雅おねえちゃん」


腕に抱きつかれ俺は外に出る。

比翼がいるので行き違う人とは距離を取って目的に向かう。

コロナウイルスがあるとはいえ。


(平日だっていうのに、普通に人がいるなぁ。感染者が増えていっているのに)


ニュースを見れば前よりも感染者が増えているというのに、冷静に考えれば明日には自分もその一人

と考えると思っていたが

想像したよりも軽視する人は多いようだ。若い人は軽視する理由は

免疫力とかだけど、年配の方は

感染すればアウトなのに、歩いている人が結構、多い。

軽い衝撃を受けて真奈の家にたどり着く。インターホンを押して

15秒ほど経ってドアが開く。


「二人とも久し振りだね」


マスク姿の真奈が、歓迎の言葉を発した。柔らかい糸のような栗色のポニーテールが揺れて笑顔を

見せる(マスクで口は分からないけど目を細いのが理解)彼女は懐かしい。


「真奈おねえちゃん!」


「フフ、比翼すこぶる元気だね」


胸に抱きついた比翼を勢いよく抱きつかれ倒れないように、

バランスをなんとか取る。

真奈は微笑ましい表情で比翼の頭をでる。


「真奈、元気そうでなりよりだよ」


「お兄さんも・・・えーと、は、ハグする?」


「しないよ!?」


手を鶴翼の陣ように広げて、ハグすると赤面して訊ねた。

断ると真奈は残念そうな安心したような複雑そうなため息をこぼす。

恥ずかしいならしなくていいのに

俺は嘆息した。

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