第195話―ふゆかじゃなく、とうがだ!2―
俺の家から右隣にある2階建ての普通の洋風建築を感じさせる家が冬雅と両親の家。ずっと俺の家で
泊まっていた冬雅が戻るのは、
久しぶりだろう。そのせいで
洗濯かごにパンツ騒ぎ発生したのだが、もう忘れよう。俺も、おそらく冬雅も黒歴史あるから。
「さぁ、上がって二人とも」
冬雅は家の鍵を開け玄関に入り、華麗にフィギュアスケートようにターンして振り返り家主の冬雅は歓迎の笑顔を向ける。
これだけで絵になるほど冬雅は容姿が美少女の中でもずば抜けているため、女性にはあまり関心がない俺でも、ぼんやりさせて
しまう。絶対そんなことしないが。
「分かった!比翼おねえちゃんただいま」
比翼の仮に住む家でもあるからお邪魔しますではなく、ただいまと言った。そして、冬雅に飛びつく。
「わぁー!?えっへへ、もう比翼かなり甘えたがりですね。よし、よし」
冬雅は、比翼の頭を優しく
立つ衝撃だった。
それに比翼は、まだまだ甘えるのが当然の年齢だ。
(普段は抜けているのに、包み込むような優しさや笑顔があるのが冬雅だからこそ比翼が急成長できたのだろうなぁ)
「ありがとう気持ちよかった。
次はおにいちゃんが冬雅おねえちゃんに抱きつく番ですね」
「「えぇーー!?」」
耳を疑うような発言。比翼は冬雅から離れて
「・・・・・そ、そうだね。うん!これは仲良しで恋愛関係じゃないから、わたしは恥ずかしくない。
お、お兄ちゃん飛び込んでください」
冬雅は腕を広げて、どうぞ!と言わんばかりに俺が飛び込むのを高揚感で赤く染まる頬・・・刺激されると、すぐとんでもない言動を遺憾なく発揮していた。
「冬雅、冷静になって考えよう。俺が飛び込んだら倒れてしまうよ」
とくに華奢な体型の冬雅なら、なおさらだ。刹那の秒、本当に刹那的にこう思った。飛び込んでみたいと。我ながら、そんな考えに至る事が疲れているのだろう。そうに違いない。
「わたしそれでもいいですよ。
お兄ちゃんの愛ならどんなものでも受け止めなくても、しっかりギューとしますので」
冬雅が力強くそう宣言した。
「茶番は終わりです冬雅おねえちゃん。それじゃあ、入ろうよ。おにいちゃん」
比翼は、俺の胸に飛び込んだと思ったら距離を取ったと思ったら左に立ち手を繋ぎ引いていく。
「ほら、冬雅おねえちゃん中に入ってください。掃除でしょう」
「そ、そうだったね。あ、あっはは」
冬雅は、何もなかったように振る舞おうとするが状況をついてこれずに拙い表現をする。まぁ、俺も比翼の縦横無尽ぶりに頭を抱えたくなる、いや抱えている。
話の区切りを強引につけさせ家に上がる比翼について行き雑巾とマイペットを引っ張り出すと、差し出される。どうやら、乾拭きでしろということだろう。
「とりあえず壁とか本棚など掃除でもしておくよ」
「おにいちゃん掃除中に本とか読んでサボらないでくださいね」
「ぜ、善処します」
本棚を掃除すると、高確率で本を読んでしまうんだよなぁ。それを比翼は予感したのだろう。
もう常習犯的な扱いなのだが、そこは気にしない。
「だ、駄目!?本棚は、わたしが掃除するから、お兄ちゃん!」
冬雅は慌てた様子で静止の声を上げた。必死になる冬雅をみるのは・・・珍しくないのだけど、別種の類のような違和感しか形容する
ようなリアクション。
「冬雅おねえちゃんあの慌てぶり・・・あぁー、おにいちゃんやめましょう。奥には見られたくない物が一つ、二つあるのだから」
「奥に見られたくないもの?・・・・・ああー、なるほど。
本棚を掃除するときは別の所で掃除をするよ」
「えっ、二人とも何を言っているのですか?」
冬雅は俺と比翼の気遣いに知らない反応を示した。どうやら演技をしてでも守り抜きたいものがあるのだろう。腐女子かもしれない
薄い本とか無いアピールをここは
あえて乗るとしよう・・・けど、
そう思ったけど首の傾げる角度や声調と頬の引きつたものは見えない。
「分かった。よく分かったよ冬雅おねえちゃん。これ以上の言及はしないので安心してください。
おにいちゃんはリビングとか掃除でもしてください。冬雅おねえちゃんは部屋でも掃除ことで」
「りょ、了解?えーと、なんだろう。誤解されたような釈然としないのは」
腑に落ちないながらも冬雅は2階にいき自分の部屋を掃除に足を向ける。さて本棚以外の掃除をするか。俺はまず初めに壁を拭いていく。以外かもしれないが、菌や
素早く丁寧に吹き終えた次は窓拭き、キッチンの掃除などした。
どれも綺麗な状態だったので厳密な言葉を使うなら掃除というよりも・・・汚れが無い場所をキレイにするこそ清掃。
「お兄ちゃん手伝いますよ!」
部屋の掃除か清掃どちらかを終えた冬雅が降りてきて助太刀にやってきた。
「ああ、頼むよ」
清掃のみで長時間も掛からずに終わる。手伝った労いに冬雅は紅茶と手作りのお菓子でもてなす。
「お兄ちゃんお疲れ様です」
「ありがとう冬雅」
紅茶を入れたマグカップ(お客用)を前に音を極力と立てずに置いた。感謝の言葉を伝えると、屈託のない笑顔で返してくれた。
「冬雅おねえちゃんこれ普段は使わない高いやつじゃないですか!?
おにいちゃんの前だからって気合を入れ過ぎじゃないの」
「う、うん。
「えっへへ、じゃないですよ!
この為に買ったんですねぇ冬雅おねえちゃん」
呆れてため息をこぼす比翼。俺が飲んでいるのがダージリンセカンドフラッシュでもごく僅かしか
入手しか出来ない貴重なものだと
分かると飲むのが躊躇う。
よ、よく味わないと失礼だな。
冬雅は俺が座る向かいに腰を下ろす。
「お、お兄ちゃんってお酒を普段は飲まない代わりに珈琲とか紅茶をたくさん飲むので色々と勉強して調べたりしました」
冬雅は照れ笑いで紅茶を啜る。
俺に視線を向けてくるのは満足してくれたかを言葉を待っているようだ。これは、どう言えばいいのか。感想なんて洒落たセリフを言えないんだがなぁ。
「えぇーと、冬雅ありがとう。
上品な
それに冬雅が作ってくれた美味しいお菓子も一緒だと特に」
「そ、そうなんですね・・・・・
えへへ、お兄ちゃんもっと褒めて。わたし頑張ったので頭をナデナデしてほしいかな」
「うーん、分かった。本当に頑張ってくれたから望みのままに」
俺は腰を上げると、やや前がかりになって冬雅の長い黒髪を乱されないよう加減で優しく頭を
「お、お兄ちゃん・・・大好き」
冬雅は、顔を少し俯けさせ想ったことを口にする。見下ろすと表情はよく見えなかったが口は緩んでいることが見てとれる。
「おにいちゃん!長いです。終わり!次はわたしの番だよ」
憤激する比翼に長く撫でていたことに軽く衝撃を受けた俺は手を離すと冬雅は名残り惜しそうに頭を
触っていた。もう少しだけと目が
訴えていたが我慢、いやそうじゃなくてこのへんで終わりにしないと。俺はそうして比翼の波のような黒髪を撫でる。
ときどき変な
声を出すのはやめてほしいと思う。俺がとんでもない事をしているのではないか答えのない問答を繰り返すから。
「・・・・・キャラが、魂の息吹が出来ない。どうしよう」
「お兄ちゃん?」
小説を書いていた俺はプロットが完成して、後は書くだけなのだが
キャラのイメージが掴めずにいた。主人公はこう動くと考えて想像の翼を広げようとするが、雲を掴むようで何も見えてこないのだ。それで、あんな言葉が出てしまい冬雅を心配させてしまった。
「いや、何でもないよ。ただキャラが動くことが出来ないんだ」
「キャラが動くですか?」
勉強の手を止めている冬雅は疑問符を浮かぶのが見えそうで、笑いそうになり堪える。
「なんて言うのか、書いているとプロットという用意されたステージをストーリーをキャラらしい
選択で壊していくような行動をさせるんだ」
「へぇー。なんだか、カッコいいです!お兄ちゃんカッコいいです」
「はは、ありがとう」
冬雅の羨望の眼差しに俺はそんなこと無いんだけどなぁと思い感謝をする。冬雅の眼差しや想いに
は元気にさせてくれる不思議な力がある。
「用意はしていた。けど
「うーん、わたしには執筆経験は
冬雅は腕を組んで一緒に悩んでくれた。頼んでもいないのに解決策を考えてくれて俺は言葉にせす
感謝を心で呟く。今はお礼すると迷惑か邪魔になるだろうから。
「それなら取材は?」
真剣に勉強していた比翼が、走るペンを止めて俺にそう助言した。
俺と冬雅は一理はあると同じリアクションしてしまった。軽度な呆気に取られた冬雅は頬だけ赤くなる。
「そ、そうだね。お兄ちゃんどのキャラクターに悩んでいるのですか?」
「主人公かな?おそらく取材しようにも男友達っていないからなぁ」
「そうなんですね・・・お兄ちゃんの場合だと年下の女の子なら悩むことないですけどねぇ」
「・・・言われてみればそうだな。年下の女性しか友達が・・・いや友達なのかよく分からないけど」
真奈なら間違いなく友達だけど、他の人は知人だと認識しているけど。それで言うなら近い年で男性の知人はいる。主にエミリーさんの知り合いだけど。コホン、ともかく取材はどうするか。
「・・・お兄ちゃんいないんですよね男性の友達は」
「な、なんだか煩わせてしまい、すみません」
この事も含めて、冬雅には近い女の子と俺と楽しげに話をしているのもストレスになっているかもしれないし。
「構わないよ。お兄ちゃん少し待っていて準備しにいくから」
「準備って?」
「見てのお楽しみです!」
冬雅は明るくそう言うと、マスクをして外に出て行った。急な行動力で唖然となるしかなかった。
リビングで同じ反応していた比翼は肩を
「何か思いついたようだね」
「・・・だな」
それだけ言って俺と比翼はやるべき事に再開する。俺はノートパソコンをぼんやりと見続けて悩む。
どれほど時が経ったか分からずに
ぼんやりしていると、玄関ドアが開き冬雅が戻ってきたのだと気づく。そして居間に向かい開けると――
「「えっ!?」」
男装した冬雅だった。
「待たせたなぁ。わたしは――
コホン。
長く伸ばした黒髪を後ろに束ねてのポニーテールの凛々しいサムライを彷彿させる。そして服装は、少し派手だった。
冬雅イメージカラーであるオレンジ色したロングコートと裾が向かいにつれ細く
「ふ、冬雅おねえちゃん?なにしているの言葉遣いとかも」
「それは、取材のために決まっているだろう。まったく比翼ときたら」
やれやれと仕草をする冬雅。・・・・・色々とツッコミ満載なのだが、演技や仕草は上手い。
大きな欠点は男らしくするつもりなのだろうけど、声が女の子らしすぎる鈴を転がす声。そのため、
どうしても萌えの印象が強い。
いや、取材なのだからそれがいいのだけど。
「なんかバカにされたのだけど。冬雅おにいちゃんの方がわけがわからないよ!いきなり男装して
あったのそんな服装」
「うん。実はそうなんだ。
いつかはお兄ちゃんに見せてみようと勢いで買ったけど、使う場面が無いって気づいて眠っていたんだよ」
「もう、どうしてそんな無駄遣いするの。あと、口調が戻ってる」
「あっ!・・・・・そ、それでは・・・・・あれ?お兄ちゃんって言うのはおかしいですから・・・兄さん!さっそく始めましょう」
男装した冬雅は俺の手を・・・ではなく袖を優しく掴んで引いていく。そこは演技では出来ないのがなんだかシュール。それよりも取材って。
「
「兄さん違うから・・・オレは――
ふゆか改めて、とうが。元々のの容姿が整っている。花を恥じらう美少女が今や
さて、誰か説明してほしい、この状況になってしまった事に本当に教えてほしい。
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