第189話―挑むホワイトデー2―

昨夜は手作り料理を作ろうと意気込んでいたが人生というものは

常に滞ることなく進むことレアケース。


キッチンを使おうにも冬雅や比翼がリビングにいる。彼女達のために作るホワイトデーのチョコを見ている中で作ろうかと一瞬そう

思ったがサプライズにならないし

止めるべきだろうと考えたが、

チョコを作ったことなど無く、ましてホワイトデーの渡し方さえ

いくつか訊いた知識によるもの。


(さて、どうしたものか・・・)


朝食を済ませ軽く掃除をした後は各々するべき事をする。冬雅と比翼は勉強を、俺は求人情報と応募用の小説を執筆だ。求人情報を見ると、この時期になるとこう思う。


(龍狩おろちがりでも働けないかな。龍の肉とか作ってみたいし)


今季のアニメでファンタジーの龍を狩る死闘と龍を使った料理シーン。料理を趣味で作る側からして

主人公の味を求めるのが、なんとなく共感できたりした。加えて、

あのキャラの動作がリアリティで迫力も。

空挺ドラゴンズは、老若男女ともに楽しめると個人的に思う。


「うわぁー、冬雅おねえもん!

分からない問題があったよ」


まるで猫型ロボットを頼るあるキャラのセリフみたいに比翼は姉と慕う冬雅を横から抱きつく。

ペンを走る冬雅は手を止めてため息をこぼして、親しい者に向ける微笑を浮かべた。


「解らないところ?どのあたりが解らないのかな?」


「この数式」


PCの画面を見ていた俺は冬雅と比翼が気になりチラッと視線を向けることにした。


「あー、三次方程式だね。複雑そうだけど基礎から説明するね」


「うん!」


こうして仲睦まじくしていると本当に姉妹に見えるなぁ。冬雅と最初に知り合ったときは親友がいなかったからコミュニケーション

得意ではないだろう。比翼は誰にでも上手く話すことが出来る

話術が秀でている。


(単に・・・いや、そんな分析すること良くないなぁ。理解できる答えが絶対だと信じようとする俺の悪い癖がある)


裏を読みすぎて見える表が見えなくなる。


「それで、――こういうことだよ」


「ありがとう冬雅おねえちゃん」


「えへへ、どういたしまして」


満面な笑みで返事する冬雅。冬雅の透き通る瞳を俺に向き、目が合う。しまった、一瞥いちべつのつもりが冬雅は視線を感じていたなら凝視していたと思われているかもしれない。俺は視線をノートパソコンに戻す。


「冬雅おねえちゃん。おにいちゃんと目が合って赤くなるのはウブ過ぎない?もう長いんだから」


「えっ!?そ、そんなことないよ。半年ともう少しで一年の関係だけだから大しては・・・長いのか。えへへ」


「冬雅おねえちゃん嬉しいのは解るけど急に笑うと危ない人みたいだよ」


姉妹だとしても、比翼が姉かもしれない。冬雅とはもう半年以上も経つのか・・・ずっと隣にいるようなイメージで逆にもっと長く居たんだと思っていたが。

さて最優先であるホワイトデーの事を熟考と即断即決しないと。

時間はあまり残ってもいない。


(チョコを作るにしても理由を問われて嘘をつこうにも看破されるのが見える・・・けど市販されているのも手作り渡されたみ身からして難しい・・・・・なら!)


確実に喜んでくれるのは?と五里霧中だった中で悩んで調べてベストである選択を俺はする。


「冬雅、勉強中で申し訳ないのだけど相談したいことがあるんだ」


「そ、相談ですか!?はい、わたしが力になれるなら喜んで!」


頼られて嬉しそうに、前のめりになる冬雅。まだ頬は赤いままだけど、相談という意外なら恥らっていたのだろうか?そこは訊ねることじゃない!


「実はホワイトデーにチョコを冬雅達に渡そうと考えていたんだけど・・・本当に情けないけどチョコを作るのは経験不足なんだ。

変な話だけど、教えて欲しいんだチョコ作りを」


選択したのは、解った上で教えてもらうことだった。本末転倒にもあるようなホワイトデーに

なるが、好みや完成など失敗するよりも確実に成功する方にした。


「えっ?おにいちゃんからチョコ貰えるの!?」


熱心に勉強していた比翼は顔を上げて驚いた顔で弾む明るさで、そう言った。


「ああ。渡すよ、先月に貰ったこらね」


「やったー!冬雅おねえちゃん作って貰えるみたいですよ・・・・・冬雅おねえちゃん?」


「はい、うん。えーと・・・お兄ちゃん!わたしの頬をつねってください」


真っ白な頬をつねるのは残念な事に俺は出来ない。それにどんな反応か顕著だ。


「冬雅、夢じゃないよ。・・・出来れば渡せたら良かったけど」


「ち、違うよ。サプライズは嬉しいけど教えることが出来るのが嬉しくて・・・ど、どうしよう。

お兄ちゃん教えると考えると嬉しくて意識が飛んでしまうよ」


頼られて教えることが出来ることに感極まった冬雅は小さな両腕を振って高いテンション。


「とりあえず、イラッとしたので冬雅おねえちゃんのほっぺたを引っ張る!」


「いたた。痛いよ比翼」


代わりに頬をつねるのは比翼。怒りの理由は分からないが、ともかくケーキ作るのが得意で冬雅の監修のもとなら出来るはずだ。


「早速で申し訳ないけど、材料を買いにいくから必要な物を教えてほしい」


俺は普段着の緑スウェットの内ポケットからメモとペンを出す。

日頃から小説のネタを浮かべたら忘れる前に書けるようにしている。


「お兄ちゃん落ち着いてください。まずは、何を作るかを決めてから材料を決めましょう」


まさか、冬雅から落ち着くように注意される日が来るとは。

俺は首肯してメモをポケットに戻す。斜向かいに座る冬雅は腰を上げて俺の隣に座る。


「パソコンで調べます。少しいいですか?」


「もちろん」


俺はパソコンの前から横に、その席を冬雅は正座から、こてこてと移動。冬雅はパソコンを素早く検索して俺に場所を開けて、片膝を上げて別の膝を上げる小動物のよう彷彿させる移動法をする。


「これなら難しくないですよ」


画面の前に座ると、冬雅オススメのケーキレシピの動画。ショートケーキやフルーツケーキなど。

どれも美味しそうで作れる自信はそれなりにある。けっこう前に作った覚えはあり自信がついていると思う。


「冬雅が好きなの作りたいから教えてくれないか」


「えっ?・・・お、お兄ちゃんが作ってくれるなら何でもいいですよ」


幸せだと言わんばかりに笑顔で答える冬雅。何でもなのが困るのだけど・・・こういうときは。


「比翼、勉強中に悪い。

ケーキを調べているんだけど決められなくて、それで比翼に選んでほしいんだけど」


「うん!好きなケーキ選べばいいんだね」


俺達の会話を気にしていた比翼に頼むと快諾。立ち上がり回ると俺の膝上に座りパソコン画面を大きな瞳で見る。比翼は即決した、人差し指で向けたのはチーズケーキ。

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