第161話タピオカは時代遅れ!?

前に訪れた喫茶店を俺は冬雅と比翼の三人で入店。ミルクティータピオカとチーズケーキを注文。

冬雅も俺と同じ、比翼はタピオカ抹茶とパンケーキ。注文した物はすぐに持って運んで来てくれた。

作るのが早くて驚きだ。ケーキは時間が掛かると思うけどスピードの秘訣が気になっていると比翼は大きくため息をした。


「はぁー、故郷のタピオカが飲みたいです」


「んっ?・・・えーと、どうしたの比翼。やっぱり帰りたくなった?」


チーズケーキを頬張っていた冬雅はすぐに口を空にさせてから言葉を発する。冬雅の問いは寂しげであった。


「ち、ちがうよ!冬雅おねえちゃんとおにいちゃんが、わたしの・・・・・・・今の家族で、パパはいないし。新しいパパじゃない人といるのは居たくない」


「ご、ごめんね比翼。もう言わないから、よし、よし」


涙を堪える比翼の頭を冬雅は慈しむ優しい笑みででる。


「そうだよ比翼。私は・・・いや俺は比翼の本当の家族だって思っているから」


「・・・ありがとう。おにいちゃん、冬雅おねえちゃん」


比翼の心の傷はまだ癒やされていなかった。否、もしかすると2度と癒やされない傷かもしれない。そう思えるほど深く刻まれ呪いとして中学生の女の子に与えた。

その家族に元を逃げた先に神待ちというおぞましい選択をするしかなかった。いつからか、この世の中はここまで人の心を腐敗させたのか。比翼には家族と言った言葉は本当にそう思っている。表面上はただの赤の他人だが

一緒に暮らした短い時間と楽しんだ日々が思い出としてある限り

家族と言って過言じゃない。


「比翼が家族なら、お兄ちゃんとわたしはパパとママですね」


「なぁっ!?」


「ははぁぁ!!?」


何故か一番に驚いたのは比翼だった。あまりにも大きい叫び声に俺は周りのお客さんや店員にすみませんと頭を下げる。

12日の日曜日に珍しく三人なので

デートに行きませんか?と冬雅がいつもの突拍子のない発言により行くことになった。


(空は青いなぁ。デート日和びよりと明るい気持ちになったけど、今は汗が止まらないやぁ)


もう周囲の視線が痛い。昼過ぎなので遅い昼食かおやつに入ったお客さんが咽喉?とか神持ちとか

ひそひそ聞こえるのですよ。ええ、違いますよ。シスコンだけどロリコンじゃない。


「いえ、冬雅おねえちゃんが妻になっても一人だけというのは不公平な気がする!わたしもおにいちゃんのお嫁さんになる。

これで一夫多妻です」


「えへへ、それはいいかもしれませんね。あと真奈も入れて――」


「冬雅と比翼。頼むからやめてくれ」


お嫁さんとか言わないでくれ。

しかし何故か刺すようで蔑視されることはなかった。それどころか何もなかったようになる。


(もしかして、お兄ちゃんの呼称で妹と勘違いしたからか)


ようやく平和になり、俺はタピオカをじっくり味わう。


「それにしても東京ってタピオカ専門店が少ない上に種類も少ないと思いませんか?」


パンケーキを喉に通す比翼は不満そうにタピオカを見てそう言った。


「そうかな?わたしには専門店が多いと思うけど」


「ほら、わたしって熊本県が生まれ育ちだって前に言ったんだけど・・・わたしがいた所だとすぐに専門店がいっぱいあったよ」


「へぇー、そうなのか」


俺は比翼の言葉に興味を持った。


「そこまで言うと気になりますね。お兄ちゃん、比翼いつか熊本でタピオカ巡りしませんか?」


「うん。きっと喜ぶよ二人とも。特に甘い物には目がないおにいちゃんには」


「私って比翼にそう思われていたのか」


「えへへ、無自覚ですね。お兄ちゃんは。わたしは去年ぐらい知っていましたよ」


冬雅はえへん!と自慢気であったことに苦笑するしかなかった。


「知っていました。熊本の生まれである人はタピオカなんてインスタ映えなんて考えていません」


まぁ熊本県はタピオカが早く広まったのもあってインスタ映えなんてないだろう。比翼が小さい頃にあったならガラケーの時代だし。

談笑して店を後にしようと俺は会計しようと財布さいふを出そうとポケットに入れる・・・無い。別のポケットを探してもない。入念に探してもない、ない、ない!・・・・・頭が真っ白になり俺は店員に待ってもらうよう言葉を発した。パニックって言った記憶がない。健忘症けんぼうしょうかな?それよりも俺は外で待っている冬雅を呼び代わりに会計してもらった。


「お兄ちゃんドジっ子みたいでかわいいかったです。払うわたしが恥ずかしい気持ちだったけど、

それを上回るほどかわいいかったです」


「わ、分かったから何も言わないでくれ冬雅」


「えへへ、どうしようかな?」


まさか冬雅に揶揄からかわれる日が訪れようとは。住宅街の道を3人で家につこうと進む。


「スマホ決済とかしていないけど冬雅はしていた姿を隣で見ると

少しカッコよかったよ」


なんとか話題を変えようとして

スマホ決済をした冬雅を見て抱いた感情を伝えた。嘘を言えば見破る可能性があるので本当の事にした。冬雅は寝耳に水な衝撃を受けたようでポカンとしていた。


「か、カッコいいですか・・・」


「あれ?もしかして失礼な事を言ってしまった?」


「ヤバいよ、おにいちゃん。

普通はかわいいだよ!」


比翼にとがめられた。


「や、やった。お兄ちゃんからカッコいいって言われました。

う、嬉しいです。えへへ」


頬を赤らめて嬉しそうに照れ笑いをする冬雅。


「冬雅おねえちゃんらしいです」


比翼の言葉に激しく同意だ。

鼓動が高鳴ると風が少し強く吹く。寒さが肌に撫で、落ち着け!と指摘された気がした。

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