第108話フィールド・トリップ其の漆

目覚める。となり家のベランダを無意識に視線を動かし気づく、

今日は修学旅行でいないことを。


「お兄ちゃん朝だよ」


スマホで設定した目覚ましアプリだけが挨拶され、寂寥を感じずるにはいられなかった。


「・・・・・」


スマホを手にして、時刻は早朝。

階段を降り洗面所で顔を洗い、

朝食を作る。

今日はまいたけやしめじなどキノコ類を入れた味噌汁と卵焼き。


(二人分を作ってしまった)


頭は少し微睡んでいたのか

完全に覚めていないから、習慣で身についていた二人分。


「いただきます」


テーブルに座って食事の挨拶を

呟く。少しマナーに良くない行動でも一人だから気にすることじゃないかと、一人で解決させられる。


(冬雅がいないと、こんなに静かで寂しいんだな。

・・・いや、何をしみじみとなっているんだ。いつも一人だったんだ。だから寂しくなんてない)


冬雅が、戻るのは明日。

俺は冬雅と一緒に居たい思わない!いつかは、冷めて終わる。


「冬雅、会いたいなぁ――――

っ!!?」


俺は、なんて言ったのか。

自然と喉から出た言葉に驚愕だ。

朝からずっと考えているなんて

女子高校生なんだ。

離れている。

生きてきた年も学んだ数も

学業と仕事の悩みも人間関係も

周囲の人気も経験もまったく違っていて理解できるわけがない。

・・・・・そう、思っていたのだけど

ただいたい気持ちは

心に浸透していくのが感じて

分かっていく、理解できる。


(ただ逢うことが幸せで、

それだけで込み上げてくる明るくさせる感情。

花が咲くような笑顔を・・・・・

俺は見たい)


正直、心と頭がめちゃくちゃだ。

物事を俯瞰して状況材料を判断する理論的な思考――冷静な頭。

五感と心を激しく揺さぶりときには心地よくなった想い――心。

頭と心が乖離かいりしている。


(ハァー、恋愛がこんなに難しくって俺はすごく下手)


ため息をこぼしていると、スマホが鳴り響く。画面に冬雅とあった。


(はは、ラインでメッセージじゃなくて電話なのが冬雅らしい)


アプローチに俺は頬を緩める。


「はい、もしもし?」


『お兄ちゃんおはようございます!』


「っ―!?ああ、おはよう冬雅」


スマホ越しだけど確かに冬雅の声。鼓動が踊るように高まるのを

感じて、これが好きというものだろうか。


『えへへ、お兄ちゃん。

早速ですけど告白。

大好きだよ、遠く離れても』


冬雅の告白に激しく鼓動が高くなるは無かった。心が多幸感で浸透していく静かな幸福感。


「俺もそうだよ冬雅。大好きだ」


『・・・・・ふえぇ!?』


「・・・・・あれ?」


し、しまった。冬雅に対して好きかどうか考えていたからか

大好きという言葉が出てきた。


「ち、違うんだ冬雅。

妹として!そう、妹みたいで

大好きで・・・・・えーと、人として

でだよ」


どうにか、避けようとあれこれと

浮かんだ言葉を述べてみるが、

自分でも何を言っているのか

わけが分からなくなる。


『・・・・・・・・・・えへへ、お兄ちゃんが大好き』


「冬雅?恋としてじゃなくて」


『まさか、お兄ちゃんから告白してくるなんて、思ってもいませんでしたよ。えへへ、嬉しくって

幸せすぎます』


か、完全に誤解・・・今回は違うからどうしても強く否定ができない。まだ、迷っているのに。


「冬雅ーー、頼むから話を

聞いてくれ!」


『あっ、うん。そうだね。

でもお兄ちゃんが女の子として

わたしだけ大好きじゃなくて

親友とか仲間に向ける好きですよね?』


冬雅は、爛々らんらんとした声音で持論を述べた。


「まぁ、そうだね。間違っていないよ」


『ふぇ?自信がありましたけど

現実は意図を完全に理解は

難しいですね。お兄ちゃん』


長く一緒にいれば、色々と理解ができるのだろう。

実際は、今年ほ初夏ぐらいでの

半年程度に過ぎなけど。


「そのとおりだね冬雅。

でも、そこまで理解していたとは正直、驚いたよ」


そうなると、喜んだのは普通に大好きという響きか?親友ほどか。


『は、はい。お嫁さん候補ですから!』


お嫁さん候補か。

・・・き、聴いていると恥ずかしくってなったぞ!?


『はうぅ、お兄ちゃん。

すごく恥ずかしいよ』


だろうね。一撃必殺の込めた告白を敢行して撃沈するのが冬雅の

スタイルであるわけだし。


「真奈は、どうしている?」


『羽柴さんに捕まっていて

当分は開放はないから、少し先になればやりとりできますよ』


「そうか、楽しそうで何より」


『あ、あはは』


気のせいだろうか?冬雅が困ったような笑い声とおもうのは。


『そろそろ行かないと

いけません。お兄ちゃんまた』


「ああ、また!」


電話タイムが終わり、名残惜しくもあるけど早朝に話せてよかったと心からそう強く思った。

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