第109話フィールド・トリップ其の捌(はち)

「えへへ」


お兄ちゃんとの電話という逢瀬おうせを名残惜しくドキドキと幸福感に満ちていくのが分かる。

ちょ、ちょっと恋人みたいな言葉もあり遠距離恋愛も体験した。

疑似体験ぎじたいけん(ニセ体験)。

そう思うと胸が高鳴って収まらない!


「東洋お兄さんにいつもの告白」


昨日と同じ場所で、電話し終えると傍らに座る真奈が微笑を浮かべて問い掛ける。


「えへへ、そうです。

お兄ちゃんも告白されて・・・えっへへへ」


「へぇー、んっ?・・・・・コクハク。えっ!?告白されたの!!」


「ち、違いました!わたしが勝手にそう解釈してまして、えーと

友情的な意味でして」


「落ち着いて、深呼吸しよう」


スゥー、ハァー。

胸が熱くなっていき乱れていた頭を綺麗に整っていく。

・・・うん、落ち着いた。

わたしこんなに乱心になるのか!っと見えざる一面を知って少しだけ驚いたよ。


「なるほど、大好きと返事して

告白だと勘違いねぇ・・・うらやましい」


数舜の逢瀬を伝えると、淡々とした表情と声音。だけど、最後のボソッと呟いたの聞こえてしまい

少し罪悪感になる。


「う、うん。今なら真奈にも

大好きって言ってもらえるかもしれないよ。だってお兄ちゃん真奈かなり大好きみたいですし」


恋愛観には少し自信がある。

それを培ったのがお兄ちゃんと真奈のおかげで、二人は虚構フィクション現実リアルでも類を見ない強く思っている。


「ハァー!?そ、そんなことないんだから!ど、ど・・・どうして

ワタシがお、お兄さんに」


喜怒哀楽がよく表れている。

最初は、パァーって喜が

次に白い頬を赤くなっていき他にも赤く混じる。そして、怒る。

まぁ照れ隠しなのは十中八九。


「ううん、間違いない!」


「っ――ぅぅ。

・・・・・お、お兄さんに心配しているだろうし!あ、挨拶もしないとね。それ以上も以下じゃないわ」


「うん」


本当は率直な性格の真奈。

俗に言うツンデレになったのは

いつ頃だろうか?

親友と思っているけど、高校入学して少ししてからで同じ塾に通う程度の知り合い認識。

お兄ちゃんに合わせてから

色々と理解して自然と親友だって

思えた。


こんなふうに感慨深くなるのも

お兄ちゃんのおかげで、わたしは知らずに成長したからかも

しれない。


「お兄ちゃんに告白された?」


真奈は、白のロングコートの内ポケットをスマホ入れたタイミングで、そう言った。

一応、無粋だと理解して。

けど、気になってしまい訊くことにした。


「さ、されていないから!

普通に世間話だけ」


「・・・・・意義あり!

お兄ちゃんの会話中に赤くなる

所々あったよ」


わたしが、必殺技でも放つように

力強く人差し指を向ける。

すると一陣の風が吹き荒ぶ。


「ぐっ!・・・・・お、お兄さんに

手を繋げなくて落ち着かないとか寂しいとか言われて・・・」


もじもじして、語る真奈の姿は

わたしでもかわいい!と叫びそうになるほどかわいいです。


「ふん、ふん。それで?」


「そ、それだけ。本当に終わり。

逆転に付き合ったから、もう

いいでしょう!」


悪ふざけに付き合ってくれたのは

少し嬉しいですが、それはこれと

別の事と考えるのが人類のさがなのですよ。


「手を繋げない・・・素敵だね。

まるで、恋人みたいですね!」


「あ、ああぁーー!もう終わり。

香音が過剰的なほど心配されているから、じゃあね」


し、しまったです。

真奈のためと、さり気なく支えようとして、やり過ぎてしまいました。反省しないと。


修学旅行2日目。

生徒を引率する教諭に従い向かうのは清水寺きよみずでら

まぁ、京都といえば定番ですからね。わたしは、お兄ちゃんがいないと寂しくなっていた真奈の手を繋ぎ清水寺の楼門ろうもん(寺社などで二階建て)を見上げる。


「ふえぇー、清水寺の正門だね」


「そうね。冬雅、知っていたかしら?この楼門は仁王門におうもんと呼ばれているのよ」


右手をギュッと力を入れた。

真奈は、興奮すると握る力を強くしてお兄ちゃんにドキドキさせているかもしれない。現に

少しだけドキッとする。


「仁王門なら、少し知っているよ。仁王におうがいるんだよね」


「像がね。

1467年から1477年の戦で焼失されてしまって元に戻したのが16世紀なのよ。そして重要文化財でもあるの。あの門は」


わたし的には、重要文化財と言われてもスゴイ門で別格だと

思わせるものがよく分からない。

でも、真奈にら審美観しんびかんが高く輝いて見えるかもしれない。


「さすが、マナペディア。

ううん、マナスーパーペディア」


「冬雅って、気が高揚すると

バカになるよね。たまに」


「バカじゃないよ。

わたしこれでも成績優秀で

才媛だってよく言われるんだからね」


嘆息する真奈。

それから、門をくぐり少し歩いて

自由行動となった。

真奈は、わたしを連れ茜と羽柴さん四人の昨日と同じメンバーで巡ることになる。


「それでは、どこに行きましょうか?」


茜のやんわりな問い掛けに

わたし達は3人は、うーんと唸る。学校の行事の自由という時間は何をすればいいか多々に悩まされるもの。


「それじゃあ、随求堂ずいぐどうはどう?」


真奈の提案に私も含め頷いて

向かう場所は決定。

さあ、足を進める。


「ここで、説明するけど」


き、来ました。マナスーパーペディアの情報が!


大随求菩薩だいずいぐぼさつまつる建物。

そして、胎内めぐりがあるのよ」


香音は、片手を上げ主張すると

意思だと分かった。


「昨夜、少し調べたですけど

安産や子育と縁結びが叶えてかれるんですよね真奈様」


・・・縁結び。


「そうね。縁結びは、あまり知られていないけど。

他には、胎内めぐり体験も魅力的で、好きな願いもできるのよね」


真奈と香音は、胎内めぐり体験に

意気投合して二人の世界となる。

わたしは、早々と下がって茜と

話をする。真奈の苦手な食べ物とか貴重な情報を知れた。

胎内めぐり体験ができる場所への

前に列があり並ぶと前の人が

振り返り、驚いた。


「ふ、冬雅達も来たのか?」


岡山くんだった。


「ふぇい?おぉー、香音も

いるじゃん。うぇーい!」


「騒がしい奴がいた。チッ!」


「・・・・カ、香音?」


撃沈された、岡山くんの友達。

羽柴さん同じグループなのに容赦ないのにもある。


「はっはは、振られたなぁしょう


「違うしょう。挨拶にそう思うヤバい。マジでノブ」


ノブは、場の空気を読まないあの人の愛称でしょう。

すぐ翔と呼ばれた人物は友達に肩を組み爽やかな笑みを浮かべる。

岡山リア充グループで、唯一の

女の子がいます。


「・・・・・」


(凝視しているけど、わたし何かしたのかな?)


思いもよらず岡山グループ四人と

出会ってしまった。

とりあえずは挨拶。


「こんにちは岡山くん。

奇遇だね!やっぱり胎内めぐり」


「こんにちは。ああ、そうだよ。

よろしければ俺達と一緒に

入らないか?」


「いぇーい!ヤバい。

牛鬼かっこよすぎだろ!」


翔と呼ばれる人は、突然と岡山くんを褒めてきた。わたしはびっくりだけど

岡山くんは慣れている!?


「ああ、サンキューなあ。

ここを出たら待っているよ」


「え、えーとお構いなく」


わたしは、やんわり断ろうと

試みる。


「気を遣わなくてもいいよ。

みんなで行くほうが楽しいじゃないか!」


い、いえその理屈はどうだろう岡山くん。けっきょく強く否定できずに別の話へと変わった。


岡山くん達は先に胎内めぐりに

行き。わたし達もしばらく経ってから中に入る。


(わぁー!?本当に真っ暗)


二人一組で入ることになり、

わたしと茜。次に入るのが

真奈と羽柴さん。この組み合わせは羽柴さんの強い望みで。


「茜、手を繋ぐ?」


「うん、そうさせてもらうね。

それにしても、外は明るい風情から闇夜の世界に変わってびっくりしたよ」


「はは、少し分かる。

すごく暗いよね」


わたしは、茜と手を繋ぎ緩やかなカープの道を進む。

縁結びとありましたので、願うのはもちろん、お兄ちゃんにわたしを大好きになってほしいこと。

でも、純粋に願おうが叶わないと

どこか思ってしまう自分がいた。

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