第26話―3人の夏祭り―

次の日にいつものように冬雅が来訪する時間帯だろうと予感した。


数時間後にそれは的中する。冬雅の親友(前よりも

仲良くなってランクアップ)の

平野さん―――真奈がやって来た。

苗字を呼ぶと不満らしく下の名、

さん付けなしと要求された。

そんな十代のパワーを遺憾いかんなく発揮をし、端的に言って俺はすぐに疲れた。


こ、これが若さか・・・(遠い目)


赤い彗星が、身分や名を再び捨てサングラスをした時期のクワトロ・バジーナ気持ちが理解できるような、しないような。

二人のあふれんばかりの元気な眼差しと言葉を

手心を加えてはくれず、遊び続けた。


夕方から夜のとばりが降りる時刻に二人は、家に準備が

あると述べると家を出た。

ついでに夕食の準備はしないでと

念を押された。


まぁ、平野さん・・・違った!

真奈から事前に知らせてくれた。

どうやら祭りに出掛けることらしい。

冬雅らしく、俺に秘密にして

サブライズをする浴衣姿で現れるのだろうと容易に想像ができた。


「真奈が言ってくれたのは助かった

っと言えばいいのか分からないなぁ。

ともかく、気になるのは真奈が

向けているのが冬雅に近いことなんだけど・・・・・」


自意識過剰だと思うけど、ギャル風の真奈の反応は一変していた。

ときどき頬を赤らめたり、満面な

笑みを浮かべるのが増えたりと

明らかに熱っぽい顔をしている。

急にそんな表情するなんて。


しかし、証拠材料が弱く少ない

部分もあって、ただの勘違いかもしれないが。

仮に恋だとしても、それも成人男性に慣れていない少女の不慣れな感情の誤解だと結論している。


(これが、完全に見当違いなら

平和的に済ませる。 そうなのだろうと済ませていいのか?)


ずっと、恋の悩みなど俺らしくないと

考えながらも、中断せず思考は回る。

暗中模索という考えまでする段階に

なると、ピンポーンと聞き慣れた

音が鳴る。もう毎日だからね。


「はーい」


もう知っているが、もし別人の可能性も予期して声を発してドアを開ける。

解りきっていたが、二人だった。


「ど、どうですか・・・

お兄ちゃん?」


「・・・・・・・・」


二人とも頬を赤らめ俺の返事を期待して待っている。冬雅はいつものように勇気を

出して訊いてきた。

一方の真奈は視線を横へ向けて返事を待つ。

前へ真っ直ぐ見ようとしない。


着物姿・・・まさか、ここまで変貌するなんて!

冬雅は、水色と蓮色はすいろ

着物。水色が多めで裾や袖のあたりに

蓮色。背まである黒髪は、

真っ直ぐな形を変えず。しかし

上に百合の花で髪飾りをした。

お嬢様のような品位を高めさせ

聖なる少女がさらに高め

天女へと昇華した。


清楚なギャル真奈も同じく

大きく変化していた。

純白の着物。そして、明るい黄色の

帯でギャルさは影を潜め

天使のように清楚感を飛翔させた。

もし、羽があればと悔やむ。

サイドアップポニーテール変化なしと

右の前にバラの髪飾りをしている。


「二人ともスゴく似合っているよ。

はっきり言うと、冬雅は

輝いているようで目が離せないよ。

真奈は天使のようで妖精のような

幻想的に美しいよ」


「か、輝いている!?えへへへ。

ドキドキしましたお兄ちゃん?」


「は、はっあぁぁ!!大袈裟おおげさよ!・・・でもありがとう。

その、もっと見ていいわよ」


冬雅は不安が見える表情を完全に

霧散し満足感で満ちた満面な笑み。

真奈は、やっと前へ向き視線を

泳ぎながらも否定と感謝。

そして、もっと見ていいと許可を得ました。


(・・・いや、なに普通に賛美を

言葉にしているだ俺は!

あくまで、面倒みがいい大人として

付き添うだけで、二人は子供らしく

楽しむべきなんだ)


冬雅の狙い通りにドキドキさせられ

たが、想像以上に美しくかわいいと

思っての感情。

この高ぶりが、好きとは別だと

心は知って。その証拠に視線を逸したくなる衝動の類や頬が熱くなるのも

感じない。純粋に美しくと―――

芸術すぎての興奮にすぎない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る