第27話さあ、夏祭りの始まりだ!

地元の神社で祭りをもよおしていると事前に調べてくれた二人に案内され歩く行くこと数十分。

路傍ろぼうの人々は浴衣ゆかたやカジュアルな格好で同じ場所へ向かって進んでいる。

向けられる視線に俺達――否!両隣に立つ浴衣姿の妖精に心を奪われる人が

ほとんど。


「・・・えーと、お兄ちゃん。

カップルが多いですね。

わ、わたしとお兄ちゃんも

恋人みたいに見られているかも

しれないね。えっへへ」


年が離れて周囲は怪訝している。見当違いのようだよ。



「・・・冬雅スゴイよね。

好きだと頑張って告白をしたのに

振られても諦めずに挑むなんて」


真奈の言葉に誰に向けて言ったの

だろうか。俯いてボソッと呟いた

声は俺にか、冬雅・・・それとも

自分に対してなのか。

沈黙が数秒も発生する。冬雅も

聞こえたかもしれない。そうでなれけばポツンと言葉を発さない理由はないのだから。横を見ると

友人をうれい顔を。


「うわぁ、久しぶりに夏祭りに

向かっていると年甲斐にも無く

ドキドキしてきた」


空気を変えようと俺は聞いてないていで夏祭りの話題を振る。


無理に変えようとしているのが大根芝居に出ているなぁと思った。

とくに真奈は鋭いの見破るかもしれないが、大きな反対がなければ小さな変化はなかった。


(祭りに最後に行ったのなんて、もう覚えていないなぁ。まさか

女の子と行くとは当時の俺は想像もしなかっただろうなぁ。なんて妄想はあったかもしれないけど。・・・まさかJK二人と行くとは)


リア充イベントに無縁で興味もなかったけど二人といるからか

楽しみに覚えている自分がいる。

いつか、冬雅と真奈を選ばないといけない時が来たらその時は――


「そうですね。わたしも久しぶりで

ドキドキしてきます!」


「うーん、ワタシは去年では家族と行っていたから別に・・・

でも楽しみ」


真奈が最後に呟いた言葉に

俺と冬雅は同タイミングで声に出し微笑する。

どうやら、少し明るくなって

くれたようだ。


「そうなのか?それじゃあ

存分に楽しむことにするか

冬雅、真奈」


「はい!お兄ちゃん」


「っ!?そ、そうね・・・・・

お兄さんから急で申し訳ないですけど、そろそろ名前を教えてくれませんか?駄目かな」


「えっ!いや、いいけど・・・

山脇東洋やまわきとうようだよ」


「山脇東洋―――やまわきとうよう。

あれ?どこか聞いたことある

偉人にいったようなぁ?」


腕を組み違和感を覚えた真奈は忘却した記憶を探り始める。

冬雅は、首を傾げ交互に視線を向けて見守る。あまり有名じゃないのだけど聞き覚えがあるのは、

素直に称賛できる。


「答えを言ったほうがいいかな?」


「くっ!・・・お願いしますお兄さん」


「一体、どんなお兄ちゃんが・・・」


冬雅よ。それだと変身かパワーアップを期待にするみたいなんだが。

それに俺の名前は完全に偉人の名前なだけと心中で冬雅に指摘。


「山脇東洋・・・

完全に同姓同名の同じ漢字で

江戸時代に実験医学の先駆者と

記録されている医者だよ」


「あぁー、前に変わった参考書で

載っていましたねぇ。くっ!答えたかった」


真奈は悔しそうにしていた。もうそれクイズで間違えた浮かぶもので、それを悔恨という。


「おぉー!やっぱりお兄ちゃんの

名前だけあって、

やまわきとうようは、伊達じゃない!

・・・ですね。えへへへ」


冬雅は逆襲のシャアでも観ていたのかなと色々と思うことあるが、苦笑のみで返してと。

名前を教えてと真奈の言葉に

どこか軽いショックを俺は

受けていた。些細なことなのに、まだ名前を覚えていないことに対して。


「名前、負けしているけど

わるくないですよ。

・・・と、東洋お兄さん・・・・・」


「なっ!?」


驚愕の声を上げたのは冬雅。ついでに驚きのあまりに足を止める。

俺と真奈も歩を止む。

真奈は平常を装うとしているが目が少し上目遣いになっているのと潤っている。


「なんだか、下の名前を呼ばれるのも懐かしいなぁ・・・

少し嬉しかったよ真奈」


「・・・・・はい。

あっ!そのお兄さんがいいなら

下の名前で呼びますけど。

その、いいですか?」


どこか嬉しそうにしている。


「許可を不安そうにしなくても

もちろん呼んでくれてもいいよ」


「わ、分かったわ。

・・・東洋お兄さんもう一度だけ

真奈と読んでくれませんか?」


「了解、真奈」


「うん・・・・・ふっふふ」


ポニーテールの美少女は背中を向けられ、どんな表情が

読めないと一瞬だけそう思ったが

耳が赤くなっていたので理解した。


「・・・東洋お兄ちゃん。

真奈が下の名前を呼んだことを

教えてくれますよね」


「えっ?さ、昨夜の帰り道で」


なにゆえ訊くのでありますか!?


「そ、そうだったのですか。

お兄ちゃん!わたしの事を

冬雅って呼んでください!

いえ、愛していると追加します」


「ふ、冬雅・・・で勘弁して下さい」


珍しく冬雅が嫉妬していた。

真奈と話をしても嫉妬するような

素振りが無かったけど、さすがに

許容範囲外だったのだろう。

無茶な要求をつける羽目になった。


さて、祭りに遊んだのって学生だったので、大人になった今は

懐かしむ場所である。そして、

二度とあの頃に戻れない郷愁感も・・・


「東洋お兄さん。

なに、つまらない顔をしているん

ですか!ワ、ワタシが楽しいのに

東洋お兄さんも楽しみなさいよ。

これは、命令だから東洋お兄さん!」


「東洋お兄さんって、呼べて

幸せそうですね真奈は」


「そ、そんなことないよ冬雅。

東洋お兄さんが好きなのは冬雅

だって知っているよ」


「ふえ!?・・・・・あっ」


真奈にわたしを愛しているのですかとすがるような目で見てくる。

それは、いいけど、良くないけど、前を見ないとなぁ。

今は歩いているわけで・・・・・


「冬雅すまない」


「え・・・えっ?」


露店が並ぶ狭い道を3列で人混みが

多い場所の中。前を見ず進めば衝突

しそうになる真奈の右手を掴み

少し強く引く。それが引いた軽い衝撃に冬雅が俺の左肩に顔を預ける形になる。


「キャッァァ!?」


「なつ!?はっ・・・えぇぇー」


狼狽うろたえて唸るのは真奈。

移動しないといけないのだが、

不可抗力で起きたことに足を止める。


「ご、ごめん冬雅。怪我はないか?」


「は、はい・・・お兄ちゃん」


「ふーん、ラブラブ過ぎるよね

二人とも」


真奈が不機嫌な声で抗議の眼差しを

向けてきた。


手を離そうと思ったが冬雅が

離そうとしなかった。それならと言葉で説得を試みるも

俯いた状態で首を横へ振り拒絶した。

ずっと、繋いで歩かないといけないらしい。仕方なく従うことにして会話をしながら歩き続ける。


「あれ!リンゴあめだよ。

ワタシ買おうと思うけど

東洋お兄さんと冬雅はどうする?」


「欲しい!」


冬雅は即答した。そんな満面な笑みに真奈は微笑む。


「冬雅は、甘いものが好きよね。

東洋お兄さんは、どうします?」


「私は自分の財布で買うよ」


この流れにして、真奈が奢るよう

で俺だけは、そのルートを避け財布を取り出す。


「東洋お兄さんけっこうです。

ワタシが行きますので

東洋お兄さん」


異議を唱えさせる時間も与えず

リンゴ飴に一直線に向っていく。

少し離れて待つよりも真奈の隣に

立つ。待っている間に会話をする。

順番がこちらに来ると財布を出す

タイミングを失い真奈が

会計を済ませた。


リンゴ飴を口の中にめながら歩いて行くと俺達は気づいたのだ。


「・・・東洋お兄さんどうしよう。

片手が塞いでいるから射的が

出来なくなった!!」


「そ、そうか。でも私が持つから

安心して遊んで行くといいよ」


「うぅー、そうさせてもらいます」


「冬雅わるいけど、手を離してくれ

ないかな?」


「うぅー!」


小動物に睨まれたようなかわいい

威嚇を唸り俺は苦笑するしない。

ため息をこぼしながら、自分の

分を口にリンゴ飴を運ぶ。


「東洋お兄さんなんだか、

すみません。ワタシ東洋お兄さんのその優しいところ嫌いじゃ

ありませんよ!」


真奈の言葉はツンデレと呼べるレベル

と同時に進歩している。

前よりも素直になって自分の想いを

言葉にしている。それが進歩と

称賛していいのか分からないが。


「はい、お嬢さん」


射的を商売しているのは、20代ぐらいのお姉さんでタンクトップした

アウトドアで親しみやすい印象だ。


「これが・・・・・」


コルク弾を入れた銃を構え放つ。

しかし、一発目が外れた。


「なるほど、このズレと空気抵抗も

だいたいは理解した。

次は狙い落とす」


真剣な表情で片目を瞑らずに

銃を放つ。そして商品に命中させ

落ちたことで小さな犬ぬいぐるみが

落ちる。薄い袋で包んでいるので

汚れはつかないだろう。


「よし!次は私が挑もう」


リンゴ飴を先に食べ終えた俺は真奈にそう言っま。しかし、実際は難しいものであった。

はずれや当たっても取れるレベルで

終了した。真奈は射的が得意んだなと勝手にそう思いながら戻る。

それから真奈にからかわれることになった。

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