第9話この言葉は完全に夫婦です!

「・・・ど、どうしよう。

なんだか落ち着かない」


閉めたカーテンの隙間すきまから

陽光が窓越しにし込み

ローテーブル上にある

スマホに午前4時と表示している。

二度寝しようと試みるけど・・・

失敗して断念。


「隣部屋が、お兄ちゃんで。

この部屋を貸してくれたけど、

昨日の夜にわたし大胆にもほどが

あるよ・・・でも泊まれたわけで・・・

えへへへ。

ち、違う、違う!

心を整理整頓しないと、また過剰な

告白が出てしまう!?」


着替えが自宅なので

持ってきていない。

そのため、制服のまま寝ている。


さいわいなのは、準備が

あること。寝癖ねぐせとか

香水もしないとねぇ」


ふっふふ、午前4時なら完璧な姿で

お兄ちゃんに会える算段です。

好きな人の前には最高状態にしたい。

ドアを開けて足音を最小限に立てずに階段を降り

洗面台に向おうとして居間のドアが開いた。つまり―――


「あっ!おはよう峰島みねしまさん」


「い、いやあぁぁぁぁーーー!!?」


お兄ちゃんとばったりと会いました。嬉しい、顔を見れてドキドキそして今のわたしを見ないでぇぇ!!

全力で踵を返し寝ていた部屋に戻る。


「あ・・・ああ!どうして

お兄ちゃんが」


「そ、その・・・どうしたんだ。

悲鳴を上げていたけど?」


施錠したドア越しから、最愛の人から

心配してくれました。嬉しい

けど、今のわたしを見てほしくない。

それを伝えると納得してくれました。


「お兄ちゃん!起きるの早いーー」


「まさか自分の家なのに、

しかも早く起きて怒られたとは」


リビングテーブル定位置&《アンド》向かいあって座り朝食を食べます。


(今日の朝食は、

ウインナー隣にレタスとサバ味噌汁?ですね。なんだか、家事と料理がスゴいのだけど)


家事、料理も滅多にしないわたし

でもすごいと思うほど腕前だ。

けど、今日はシンプル。


(そう考えると、わたしって

釣り合っているのかな。

一応、わたしの取り柄と言えば

スゴくかわいいことのみで

お兄ちゃんは気配り達人レベルで

料理のバリエーションある。

それに、見てくれる姿勢の優しさも・・・あれ?

どうしよう、スペック高い!!)


でも、それで諦めない。わたしの

唯一で一人しかいない愛おしい人。


「お、お兄ちゃん。

いつか、わたし頑張って

相応しい女の子になって・・・

そのときは、結婚してください!」


「んっ!?・・・ごほごほ」


「だ、大丈夫ですかお兄ちゃん」


噛んでいる中でもわたしの決意による宣言にお兄ちゃんは動揺と驚きで咳き込みました。

で、ですよね。想いが熱くなって

そこまで配慮を出来ず素直になり過ぎました。

気をつけよう、うん。


「わ、私はニートだから

結婚相手しないほうがいいだろう」


ムッ、納得できない。


「それなら、わたしが働いて

お兄ちゃんには家事やわたしを

待ってくれましたら。

でも、小説家になっても

わたしの帰りを待つ立場に

なりますね♪」


はっ!お、お兄ちゃんが少しだけ照れています。

かわいい!やはり好きかな?もしかしなくても好き!

どうしよう!?分からないのが余計に妄想を勝手にしてドキドキを繰り返しいきます。


そんな幸せの時間は終わろうとしています。テレビのニュース番組の時刻表示を見て・・・

登校時間、学校いきたくない。

だけど行かないといけない。わたしは笑顔を浮かべながらお兄ちゃんの話を続けて靴を履く。


「と、忘れていた。峰島さん」


「はい。なんですか?」


正午しょうごのお弁当。

作ったから、どうぞ」


「あっ、ありがとう・・・

ございます。えへへ、

愛妻弁当ならぬ、あいふ弁当ですね」


「なっ!?そ、そろそろ

行ったほうがいいよ」


「えへへ、はーい!

いってきます。大好きなお兄ちゃん」


ハァー、幸せです。

夢に見た!言いたいセリフで朝に出かける場面も叶いました。できれば、新婚生活なら

良かったけど・・・いえ、

考えによれば新婚生活です!


「ふーん♪ふーん♪」


鼻歌を口ずさみながら、軽やかな足で学校へ向かう。

今日も通学と通勤の男女に視線を

向けられ辟易してくる。

心を奪われ見惚れる

リアクションを毎日と見ていると

精神的に疲弊ひへいしてくる。


(ハァー、皆さん・・・。

クラスメイト、貴方もですか)


シェイクスピアの悲劇シリーズ作品に

読んだ『ブルータスお前もか』風に

心で呟いてみる。


「やあ、おはよう冬雅ふゆか


教室に入り今日も注目の的です。

校庭を見渡せる窓際の席に向かう途中でわたしに声を掛ける。

凛々しい男の子です。

いつもは左の隣だけで挨拶して終わるのだけど。


「おはよう岡山くん」


「そ、その放課後なんだけど

一緒に遊ばないか?」


「ごめんなさい。塾があるので」


「そうか・・・塾、頑張って」


「あの学園一のイケメン

牛鬼ぎゅうきが声を掛けても

ダメとはさすが、学園一の美少女!」


「ヤバみ!ちょーかわFだから

牛鬼と似合うと思うんじゃん」


今日も岡山牛鬼おかやまぎゅうきの周りはリア充のサークルを展開。その前に牛鬼という

メジャーな妖怪と似合うと言われているようで不満なのだけど。


「ハァー」


溜息をこぼして、わたしは座り視線を前に向けば

最も仲がいい友達の二人がいます。


「あはは、学園一位のスーパー

イケメンにもときめかないか冬雅は」


透き通ったハスキーボイスの女の子。

明るい茶髪の

サイドアップポニーテールをした

白磁はくじの肌とパチリとした

可愛らしい目。

平野真奈ひらのまなとは友人だけど、親友とはいえない間柄。


「難攻不落だね冬雅さんは」


もう一人は物静かで喋るのが苦手な印象を持つ塾で知り合った女の子。

黒髪ショートと怜悧れいりで優しいそうな瞳。

三好茜みよしあかねも友人だけど心をうち溶けるほどではない。


「真奈、茜、おはよう。

えーと、見られていたんだ」


イケメン俳優やモデル並だから

迷いもなく断った事に訝しんでいるよう。


「誰もが目に行くような容姿

なんだから自然と行くよ!」


「はい。私でしたら、喜んで

ついていくと思います」


真奈と茜は、岡山牛鬼に視線を

向けてそう言います。岡山牛鬼は、成績優秀で運動抜群なうえに眉目秀麗ときて誰隔てもなく優しい。

もはや、少女マンガの

完璧イケメンを具現化した存在。


(誰隔てもなく優しいけど・・・

真剣さがない。例えば現状の悩みや

原因を平和的に解決させるけど、

先や評価を下げたり嫌われる

ような言動はしないよう気をつけたりする部分があるように思える。

つまりは余裕と嫌われたくない条件で助けに行く人。

それは・・・わるくはないのだけど)


じっくり悩みを考える真剣さが

ない。それが普通で当然その点を除いたら立派な人。

わたしの推論だから、違うかも

しれないけど。

それはともかく、わたしは知っている、途轍とてつもなく優しい人を。


(えへへ、わたしの絶望を救った

山脇やまわきお兄ちゃん!

早く帰って告白をしてドキドキさせて

わたしもドキドキする!)


授業中でもお兄ちゃんの事を考えていて気づけば正午が訪れた。同じ塾の友達と机を

合体させ食事タイムとなります。


「最近、冬雅ってワタシ達と

一緒に行かなくなったよね」


明るい真奈まなが突然に言う。


「え、えーと・・・そう?」


「そうだよー!少し寂しいよ冬雅」


「一緒に行かないのは・・・・

好きな人ができたから?」


「そ、そんなことないよ。

ほら昼食を食べようよ!」


危なかった。茜は核心的なことを言って冷やとした。

気をつけねばと思い、わたしはカバンからお弁当を取り出す。


(あ、あれ。お弁当ってたしか・・・・・

あ、あいふ弁当!?)


わたしは、愛を感じるお弁当を開く。

種類が豊富な食べ物。

レタスとウインナーにミニトマトなどなど色んな

組み合わせをして華やかだった。


「うわあぁーー!

なに、そのお弁当。気合が

入っているよね」


「・・・驚いた。料理もできたの?」


「そうなの!見ているだけで、

幸せになれると言うのか・・・

食べるのが勿体もったない!」


これがあいふ弁当!えへへへ、

わたしのために作ったのだから

じっくり味わいながら食べないと。

あまりにも、顔がニヤけてしまい

周りは驚いていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る