第4話アニメを一緒に見ませんか

『お兄ちゃん朝だよ。ねぇたら・・・

早く起きてよーー!』


スマホごしから聞こえるは最愛なる

妹の声に深い眠りから目覚める。

スマホ・・・を手にし、欠伸あくびをこぼしながらもゆっくりと上体を上げる。


「おはようございます」


お隣さんの女子高校生である

峰島さんが明るい笑顔で挨拶。

可愛い柴犬の動物パジャマをして。


「ああ、おはよう峰島さ・・・

みねしまさん!?」


「驚いていますね。フフ、隣いる

と考えるとドキドキしっぱなし

ですよ。・・・あの、さきのかわいい

声は妹さんですか?」


どうやら、妹の声をお隣さんに

届いていたようだ。

表情には明るい声の一方に不安を隠せずに思える。

その前に、これを聞こえたとなれば

すこぶる羞恥ものだけど。


「え、えーとですね。

・・・目覚ましアプリです。はい」


「へぇー、そうなんですね。

・・・お兄ちゃん」


「お、お兄ちゃん!?どうして

その呼び方を?」


「えへへ、この響きが好きなのかな

思って・・・まさか相好を崩すとは

思いもしませんでしたけど」


相好を崩したって・・・えっ?それって、

スゴく笑顔していたのか俺は!?

キモかっただろうな。


「そ、そうだ。早く朝食の準備を

しないと!じゃあ」


これ以上、話をすると精神が

疲弊ひへいする。俺は危機的に感じて朝食と口実にして

強引に話を終了させる。


「あっ・・・・・」


驚きの声を背に聞き取りながらも

ドアを開けてすぐに閉めてから安堵する。

それに覚悟をせねばならない。


これからは恋愛対象を冷める

まで好きアピールに耐えないと

いけない。そう考えると・・・

ため息が自然とこぼれたよ。


居間に入るとピンポーンと来客を報せる鐘。あれ?十分ぐらい

しか経ていないのに早くないか。


仮に好きな相手の家で

化粧とか髪の手入れとか準備すると思うけど・・・

そ、そうだ。今どき珍しいセールス

かもしれない。


「はーい。どなたですか・・・

は、早いですね峰島さん」


まさかの告白敢行した彼女だった。


「は、はい・・・その上がっても

いいですか?」


当たり前だが、寝間着ではなく

オシャレな白のブラウスと

アイボリー色(黄色がかった白)フレアスカート膝丈。

着替えるの速すぎる。


(上がられるのは、まずい。

昨日は顔をぐしゃくしゃ泣いていたからで、女子高生を家に上がらせれば

峰島さんに変なうわさのリスクが・・・・・)


「や、やっぱり正式に恋人じゃ

ない。だから入るのは・・・」


「で、ですよね。わたしみたいな

女子高生を上がらせるのは

無理ですよね」


気丈きじょうにいつもの笑みを振る舞う姿。

されど感情は抑えきれず涙腺から流れていく涙。


「えーと、約束だし。

朝食を今から作るから、せっかく

だから一緒に食べませんか?」


「は、はい!」


暗い表情から明るい表情へと

一気に変貌。

どうして、俺はこう冷たく突き放す

ような事ができないのか。

料理が完成して食卓しょくたくへ並ぶ。


「ウインナーと目玉焼きとレタス。

次は豆腐とうふとワカメの

普通の味噌汁・・・それに白いご飯」


峰島さん明るく食材を言いますけど

すごくオーソドックスだよこれ。


「日曜日は、簡単なもの決めていて

不満をぶつけると思ったけどなぁ」


「わたし一人暮らしで、食事は

パンとか外食がメインでして。

家庭で作る料理は懐かしいです」


そうだったのか。学生とはいえ

一人暮らしだと、自分で料理など

するのは大変で義務もなければ

作ろうとしないのが普通か。自分で考えて納得。


女の子なら作るぐらいはするのは、

古い考え方だって大人になって

自分から作って、その心理に至った。

俺の場合は料理を作れば小説のネタになると目的で。


「隠し味とは言えるものじゃないけど、ちぎったレタスに

塩コショウを軽く振るっているから

美味しいと思うよ」


「えっ?だ、大丈夫でしょうか」


説明からすれば雑と思うよね。

不安そうに拒否の言葉を発した事に心苦しそうにする峰島さん。


「騙したと思って一口だけでも」


「は、はい・・・・・うっ!?

ふぇ?お、おいしいです。

マヨネーズやドレッシング

かけていないのに」


信じられないと衝撃を受けている。

ちなみにこの味を発見してから

レタスの上に塩コショウ。

これだけで、マヨネーズなんて

いるかぁ!と言えるほどに美味しい。


「これ、けっこう個人差がある

と思うけど私と峰島さんは好みは

同じかもしれないね」


「お、同じ・・・はい!

好きな人と同じって運命的で

ドキドキするしヤバイです!」


で、出た!狙っているか知らないが

かなり熱いセリフだ。とりあえず

向かいに座る峰島さんの視線を

逸らすことにした。


「そ、そうだね」


「懐かしいです本当に・・・

わたし小さい頃にこうして、家で

食事なんて・・・・・あ、

ありませぇんから」


箸を止めて肩は震える峰島さん。

テーブルの上に涙がポロポロと音を

立てる。

その涙は、温かい一緒の食事に

感動したんだと一瞬で理解する。


「まぁ・・・たまには一緒に食事

してもいいよ。

私は料理するのは得意だからね」


俺も同じで誰かと一緒なんて久しぶりで涙腺が危うい。


「で、ですけど・・・ここまで

ほどこしを受けていいの

でしょうか・・・・・迷惑じゃあ」


見返りなんて求めていないのだが、

一方的に与えるのは嫌なんだろう。ここを誤魔化しても解決しない。

なにか・・・ないか。あっ!あった!


「それじゃあ、私の小説を

読んで感想をお願いしていいか?」


「・・・か、感想ですか?」


「そう!実は小説志望者からして、

読者の感想なんて垂涎すいぜんだからね。

もちろん、つまらなかったら

読むのもやめてもいいよ」


これは、都合が良すぎないか頭に

よぎた。小説の感想を求めるのは

使うべきじゃないか。


「そ、それでいいなら。

小説を読ませていただきます!」


「ああ。無理難題で申し訳・・・

読んでくれるの!?」


「はい、わたしのためにも

なりますし」


わたしのため?個人的な目的が

あるのだろうか。

そんな事を考えながら、視線をテレビを向ければ、画面下にある

時刻表示には午前8時28分。


「あっ、そろそろプリキュアが

はじまる!」


「・・・え?プ、プリキュアですか」


リモコンを手にして俺はすぐに

ニュースからCMに変える。


向かいのJKさんはポカンと

呆然とする。

だ、大の大人がプリキュアを見て

キモイとか思われたかな。

で、でも大人でも見るんですよ!


「純粋なんですね」


「それは、違うと思うけど・・・

イヤだったら変えるけど」


「あっ、いえ構いません。

たまには見たいですので」


柔らかい笑みの返事をされると

27の俺が子供で女子高生の峰島さんか大人みたいだと思った。

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