第123話 心を隠して
武芸試合の決勝は順当に、というべきか
ユウは剣は得手ではないと聞いていたが、なかなかに強く、ここまで進んできたと見える。カイに言わせれば呉家の圧力でもあるんじゃねぇかと言うかもしれない。
その四人を上階から眺めて、
「シュンが出た方がマシだったんじゃないの?」
と言う。
「まさか。いくら私でも剣技で決勝に残りはしないわ」
「でも四人のうち三人が
『
「花蓮、あなた『白兄』の応援してなかった?」
「そりゃ格好良いもの。応援しちゃう」
そこへシンがおそるおそる口を挟んできた。よほど花蓮が苦手と見えるが、興味の方が強かったらしい。
「『白兄』というのはあの左端の人——ですか?」
シンの
「そうですよ。とてもお強い方です。学業も立派にお修めになって、人柄も素晴らしい方です」
「そんなに強いの?」
シンの興味は武芸の強さにあるようだった。
「ええ、そうですとも。隣の——
「その二人が、周家の
少し影を含んだシンの呟きを耳にしたのか、
「
それは、
「は、失礼致しました」
その
「そんなことないでしょ。『白兄』は周家の人だし、呉家の跡取り息子もいるのよ。有力な家の者があそこにいるのは本当の事よ」
「
娘を
「あんたも仮にも王太子なんだから、ちゃんと覚えときなさいよ。この年頃の者たちにとって、『白兄』の存在は大きいのよ」
ビシッと、人差し指を目の前に突き出されながら言われたシンは目を丸くする。今までただ怖いだけだった
「……はい」
言うだけ言うと、花蓮は視線を競技場へ戻した。無視された
「ほら、『墨兄』の隣が呉家の方です。この方は剣よりも槍が得手です。人柄は——うーん、私は嫌いですね」
「えっ? まじで?」
高潔なシュン姐にも人の好き嫌いがあるのかとシンは驚いた。見上げたシュンの顔は悪戯っぽく笑っている。
「お強いのでしょうが、慕われる
「じゃあ、残る一人は?」
「私よりも何大臣の方がお詳しいのでは?」
水を向けられた大臣が、皆の視線を受けて頷く。
「
藩の名にシュンがぴくりと眉を上げた。皆は聞き流していたが、大臣の話ぶりではよほど腕が立つようである。
——やはり
シュンはそれを心に留め置くことにした。何大臣にすれば『白兄』やカイとも並ぶ腕だと見込んでいるのだろう。
そこへ、シンの何気ない言葉が飛んで来てシュンの胸を刺した。
「シュン姐、あの人——『墨兄』が顔を覆っているのはなぜ?」
つづく
次回『孤独に差し込む明るい光』
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