第57話 警告
「
「何をだ?」
「……私のことを
それを聞いたケイは一瞬で悟った。血の気が引く。
「まさか、周公が君を
「では白兄が根回しをしたのではないということですか?私はてっきり、白兄のおかげだと」
驚きのあまり、お互いに質問をぶつけ合う。しかしこれはこの場の者が答えを知ることではない。
「馬鹿な、いつの間に……」
ケイはそう言って、カイを見る。普段はだらしなく座っている彼も、居ずまいを正していた。
「バレたんなら、それはそれで仕方ないだろ。初めに決めた通りにするだけだ」
カイの言う、初めに決めた通りにする事とは、この隠れ家にシュンが通うことになった時に三人で取り決めた事だ。
一つは、シュンは何も知らず、
周家にシュンの事を知られたら、そのような話をもって体裁を整えようとしていたのだった。
「……何かある」
ケイは呟き、シュンを見る。
周公がシュンの事を知っている、という事実は、自分達が彼女の事を黙っていた事と反する事態だ。
どこからその情報を仕入れたのかはもはや分からないが、周公の手の者が定期的に三人を見張っていた事がありありと伝わってくるのだった。
逆らうな。
勝手な事をするな。
計画はこのまま。
それがケイに突きつけられた警告だ。
少し青ざめた顔でケイは考え続ける。
——大丈夫だ。
逆らってはいない。
勝手をしたのは彼女を利用する為だ。
計画には支障ない。
だからシュンの命は守られる。
だが、「知っているぞ」という警告とともに、ケイは周家本家に呼び出されているのだと感じた。
「白兄……」
はっと気がつくと、シュンとカイが心配そうに自分を見ている。いつもなら「心配無い」と答える所だが、ケイは、
「本家に行く」
と言って、立ち上がった。
「ケイ、どうした?」
「これは呼び出しだ」
カイにそれだけ言うと、シュンに聞こえぬように小声でささやいた。
「始まるぞ」
それを聞いたカイの瞳が暗い光を帯びた。
春——。
都も花々であふれ、人々の心も浮き立つ。市場も活気付き、市井は賑わいを見せる。
それを懐かしく思いながら、東宮の中庭に咲く梅や木蓮を、シンは眺めていた。
友にして仲間で、今は自分の側付きをしてくれているソウも、同じようにぼんやりと空を見ている。
自分達が居なくなったあの街は変わっただろうか。
そんな事を思っても、確かめる
そこへ一人の貴人が現れる。
「お待たせいたしました。さ、行きますぞ」
「……」
仕方ない、というようにシンとソウは立ち上がると、何大臣の後について行く。
今日はシンの兄である
二度目の対面である。
つづく
次回『兄王』
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