第31話 探索


 通学して来た二人はどこにいるのかといえば、彼ら——特に『白兄はくけい』はほぼ全ての課程を修了していて、気分次第で授業に出るのだという。


 この自由さはしゅう家の力もあるのだろう。武術の修練の為に行軍や試合には参加している様だが、その他は同年代の貴族の子弟達との交流を目的として顔を出しているの過ぎないらしい。


「つまり、どこにいても自由ということね」


 シュンはカイ達の言動を思い返し、授業の合間を縫って上級生の武術課程を見学しに行ったが、あいにくその授業には出ていないようであった。


 もっと実戦的な、例えば体術の組み手であるとか集団戦闘の模擬戦とか、あるいは騎馬訓練などであれば、彼らが授業に出てくるような気はした。


 残念ながらそれらの授業は年の瀬がせまった今は行われていない。


 実はシュンには二人を見かけさえすれば後をつける自信があった。少なくとも他の女子生徒よりは自信がある。身体能力だけそこらの女子生徒よりはひいでているからだ




 二人を見つけられぬまま、やがて本格的に雪が降り始め、女子寮の里帰りの期限が来た。誰もが自宅へ帰る日がやって来たのだ。


 この日から新年の開校日までは家が遠い者も一旦帰宅しなければならない。


 少し名残惜しい気持ちを抱えたまま、シュンは屋敷への帰路についたのだった。




 ショウ国第十二代国王・怜王れいおうは治世十三年目を迎えた。新年の晴れやかな日が続き、王都・華潤かじゅんはどこもかしこも祝賀の雰囲気にあふれて、街のあちこちで花火による祝いがなされていた。


 広い王宮の中に一つ特別な宮がある。東風とうふう宮である。ショウ国の王太子たる者がすまう王宮の中でも王城に次いで背の高い建物である。


 その宮殿の屋上に新しい王太子は友を傍にたたずんでいた。



 続く


 次回『少年たち』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る