第21話 雪洞
「いたか」
ホッと安堵のひと息をついてから、彼は力いっぱい雪の中から人を引きずり出す。柔らかい雪はただ三人の上に降りかかっていただけとみえ、三人は
「無事か?」
「おうよ」
カイが雪を払いながら立ち上がる。シュンとメイはどうやら気を失っている様だった。
元気そうなカイの顔を見て、顔半分を隠していた黒布が失くなっているのに気付き、ケイは眉根を寄せた。だが仕方あるまい。
「子どもと少女だ。お前の顔を見たところで大勢に影響あるまい」
「いいのか?」
「それよりも二人を起こせ。陽が落ちると動けなくなるぞ」
カイはシュンを起こしながら立たせた。荷はそのまま全て身につけているようだった。一方のメイは目覚めるなり泣きそうな顔をした。
「ばかだな、皆いるじゃないか」
『
「良く怪我もなく無事だったな」
「ああ、落ちたんじゃなく、滑り降りたからな」
そこの判断は二人とも同じであったようだ。
「ただ上から雪が落ちて来ちまったけどな」
埋もれたまま身動きできず、どうするか思案していた
「この雪では身動きが取れなくなる。体力のあるうちに雪洞を掘るぞ」
ケイが指示する。
ケイは辺りを見回し、雪洞を掘るのに適した場所を見つけると三人を呼んだ。
「
そう言うと山肌に沿った場所にあった雪の大きなかたまりを更に手足で固め始めた。
ある程度固めたところでケイは剣を抜き、それを使って雪洞を掘り出した。
「俺のもよこせ」
シュンがその背から剣を外して渡すと、カイも同様に固めた雪に剣を刺し雪をくり抜いてゆく。
二人の下級生は彼らが取り除いた雪を更に雪洞からどけておく。それを繰り返し、程なく四人が入れる大きさの雪洞が出来上がった。
「入りなさい」
中に入ると風と雪が遮断され、僅かだが暖かく感じられた。
思いの
良く見ると奥の方に少し高くなっている段が作られていて、出口の方は低くしてある。皆が中に入ると、ケイは雪を使って更に出口を低く狭く整えた。出入りするには這って移動する形になる。
その間にカイは床にあたる地面に剣で穴を掘る。
ぼうっと突っ立っているシュンとメイに『
「君達は持たせた油紙を出して。そう、高くしてある所に敷くんだ」
水を通さぬ油紙を敷いてその上で休むようである。
「ケイ、薪が少し湿っている。何かないか?」
カイの要求にケイは皆の持ち物を見て
中の乾いている部分を引き抜いた。そのままカイに渡す。
渡された方はそれを薪の中心に据えると火打石で火をつけ始めた。
「他の座布団を油紙の上に並べて。それから湿っている
ケイは出入り口に立てた剣に、器用に四人の外套を引っ掛ける。それでまた風が吹き込まなくなる。
「お、点いた」
火が付くと洞内がほわりと温かみを増す。メイとシュンの顔から笑みがこぼれた。
つづく
次回『お人好し』
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