第3話 塊と恵

 ケイは背が高く、色素の薄い髪は陽の光に当たれば金色にも光る。白皙はくせきの頬で、瞳の色も明るい色をしているので、どこか異国の風を思わせる処がある。


 彼は、高位の貴族から優秀な平民までが通う事を許されたこの国——ショウ国——随一の学校『教練校』において、数少ない女子学生からの人気が高い。もちろん成績も文武両道を行く青年である。



 一方のカイはケイとは逆に漆黒の髪と瞳、肌も日に焼けていて、さらに衣服も黒色の物を身につけている。


 理由あってケイと共に教練校に通う事を許されているが、彼自身は孤児であり本来ならば行く事が出来る身分では無い。


 そんな身分違いの学校の中で学生らが彼に一目置いているのは、ケイにも引けを取らない武術の腕であった。


 であったのだが、まさか今夜、彼の一撃を止める者が現れるとは思いもしなかった。


「どうした?伯父上に怒られた訳じゃ無いだろう?」


 ケイが不思議そうに言う。

 彼はカイの部屋にあった椅子をひっぱり出して腰掛けた。


 カイは急に身を起こして、ケイに失敗した一件を話して聞かせた。


「女だった…?」


 そこにはケイも驚いたようであった。


何家かけに娘がいる事は聞いていたが、腕が立つなど聞いた事がない。雇い人の誰かではないか?」


「奉公人という感じゃなかったぞ」


 男の服装なりをしていたが、その仕立ては上質なものであった事を思い出す。


「お前が女の子に負けるとはなぁ」


「ま、負けた訳じゃねぇよ!」


 そう言って怒ったり笑ったりしている様は、とても盗賊とその主人には見えない。まさに友人同士のものであった。



 つづく


 次回『紅華十二年』

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