へんなかみさま

きのこ

へんなかみさま

あれ…真っ暗で何も見えない…どこだ、ここ。


ちょっと待て。あれ、確か俺は死んだはずじゃ…?

普通に学校へ向かっている途中で車に轢かれたのか。そうだ。思い出した。俺は死んだんだ。


そうかー。死んだのか。これからどこへ行くのだろう。天国か?極楽浄土か?それとも地獄か?まぁもういい。どこにでも行ってしまえ。




「おーい、起きとるか?お前の名はなんじゃ?」

「ん…んんん!?だれだ爺さん!?」

「爺さんとは失礼じゃな。儂はこう見えて神じゃぞ。」

ヒゲは有り得ない程に伸び、髪はほぼ無し。

一見見ると仙人のような感じだが、まあこういう神もいるか。

「あ、お前今"髪の無い神"とか思ってるな?つまらんギャグ言いおって。寒くなってきたわ。」

言っていない。何だこのへんな神さま。せっかくだから名前でも聞いておくか。

「名前は?」

おっと、聞く前に聞かれた。答えておこう。俺の名前は。

「角下 北宰。」

「かくした、ほくさい。ヒッヒッヒッ、どこぞの画家みたいな名前じゃの。」

笑い方がキモい。

「うるせぇ。爺さんの名前は?」

「お、儂か。名前を聞かれたのは何年ぶりじゃのう。三百年か、五百年か…」

いや答えろよ。あんたの話なんてどうでもいいんだよ。名前を教えろ。

「イヒヒ、名前はな、無いのじゃ。儂はあの世の入り口の門番をしとるからの。決められておらん。」

そうなのか。じゃあ俺が決めてやろう。

「ファニーゴッド。」

「なんだ、それは。」

「爺さんの名前だよ。決まってないならつけてやろうと思ってな。」

「イヒヒ、英語で"変な神様"か。いいではないか。これからはそう名乗ることとしよう。」

爺さんは嬉しそうにその場に座った。英語だけは得意だったからな、すぐに訳せた。

「あ、忘れるとこだった。小僧。ちょっと来い。」

「北宰だって言ったろ。なんだよ。」

「お前の行き先はな………」

あ、そうか。ここは入口か。忘れてうっかりここにとどまるとこだった。

「ここを過ぎてしばらくの所にある受付で聞くんだぞ。」

「いや今教えないんかいっ」

「イヒヒヒヒヒヒッ」

騙されたぜ…まぁいい。さっさと行くか。

「じゃあな爺さ…ファニーゴッド。また会う時まで。」

「さらばじゃの。北宰。」

やれやれ、本当に変な神さまだったぜ。まぁ楽しかったけどな。ふぅ。受付行くか。



「角下 北宰さまですね。はい。ありました。おめでとうございます。転生できますよ、しかももう一回人間に!」

「まじか!!よっしゃ!」

まさかまた人間に戻れるなんて!今度こそ青春エンジョイ!長生きしてやる!

「それでは行ってらっしゃいませー。」

「サイッコーだぜ!」







「あれ、北宰じゃないか。どうしたんだ、またこんな所に。」

「ようファニーゴッド。元、北宰な。生き返ったかと思いきや流産しちまって…また死んじまったぜ。」

「お前はとことん生きることの運がないの。

ヒッヒッヒ。今度はここで働くか?意外と楽しいぞ。」

「フッ、勘弁してくれ。……………少しだけ、やってみてもいいが…。」


どうやらこのへんなかみさまとは、まだまだ離れられなそうだ。

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へんなかみさま きのこ @mushroomdayo

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