まどろみ/無い!!
ガサガサ。
私は
ガサッ、ガササッ。
ゆっくりと片眼を開ける。じゃあ、この音は誰がたててるんだ? 少し顔を持ち上げ、気配のある方に耳を傾ける。
あっ……あれは……。
目が合った。その音の主は完全に私に気づいた。すると一瞬にしてその場を立ち去ってしまった。明かりが無くて暗かったが、そいつの顔は見た。
何をしていたのかはよく分からない。まあいいや。関係ない。私は再びまどろみに身を任せた――。
――――――
「うわぁ! 何だこりゃ! 見ろ、タイチ!」
「おわ! こりゃ、何だか……さっきよりヒドくなってないか、トシカズ」
「う、うん。凄いね。徹底的」
足音がして、アイとマリアが上がってきた。
「ふぅ! さっぱりしたぁ~♪ あれぇ? みんなどうしたの? もうママ掃除終わったって言ってたよ……って、きゃあああああ!」
「わ! 何この散らかり方! 部屋中が滅茶苦茶になってる!」
マリアの言うとおりだった。
部屋に戻ってみると、棚からは本が引き抜かれ何冊床に落ちているし、ピンクのシーツはマットレスから外され、一部が引き裂かれたりしていた。
掃除してくれたアイの母親は、子供たちの文具や教科書を綺麗に揃えてくれたのだろう。
しかし今は、誰のものか分からないぐらい滅茶苦茶になっていた。
「取り敢えず、みんなで手分けして片付けない? もうアイのお母さんにばかり迷惑かけられないよ」
マリアが混乱する場を仕切りだした。
「うぅ……クマのラッフィぃぃ……ポンピングラビットぉぉ……私のお気にのシーツぅぅ……」
マリアは自分の部屋を汚されたショックから立ち直れないアイの背中を、優しく擦ってあげた。
それを契機に、それぞれが片付けに動き出した。
四人もいれば進捗はとても早く、落ちた本が綺麗に並び、千切れたノートで真っ白だった床が、だんだんと本来のカーペットの色を取り戻していく。
しかしここで異変に気づいたのは、いちばんぼーっとしていそうなトシカズだった。
「あれ……おかしいな……」
「ん? どした?」
「……無いんだよね、僕のメガネケースが」
「め・が・ね? ケース? もードンくさいな! そのへんにあるだろう」
タイチは面倒臭そうにベッドのあたりを指し示す。
「いや、そこも結構探してるんだけど、どこにも見当たらないんだ! ホント!」
「だからぁ、そのあたりに――」
「あ……あ……大変!!」
タイチの文句はマリア驚きの声に中断された。普段おとなしいマリアは大声をあげること自体が珍しい。
何事かと焦った全員が、マリアに注目した。
勉強机の隣で片付けをしていたマリアが、いまは目を見開きショックで肩を震わせていた。
「どうした、マリア!」
「な、無くなってるの……私のブローチが……」
「えぇぇ!!」
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