第124話 料理とエプロン お昼ご飯作り編

「よーし、鳴瑠くん。お昼ご飯を作るよ‼」


 僕の家のキッチン。

 時間はお昼前。

 髪の毛を2つのお団子にまとめた可愛い璃月は拳をあげて宣言する。

 その際、普段は腕があって見えないおっぱいの横側を見ることができ、「いいものが見れた、えへへー」と思いながら僕は自然と笑顔になってしまう。

 どんなときでも彼女は僕を笑顔にしてくれる。とっても素敵な女の子だ‼

 改めて璃月の良さを発見しもっと彼女を好きになると、僕も「おー」と続く。

 これから始まるのは、璃月と一緒にお昼ご飯作り‼

 少し前、僕と璃月それからお姉ちゃんと夕ご飯の買い物に行った時に、僕たちは『一緒にご飯を作ろう』という話をした。それが今日、現実となったわけである。

 作る献立は、クリームシチュー。

 寒い日が続く冬には身体が温まってピッタリだと思う。

 とってもいいと思うの。

 まぁ、作り方、どころか食材すら何を使うのか全然わかんないけど。

 とりあえずは、今から食べるのがとっても楽しみ‼

 このような考えをしているところからわかるかもだけど、僕の料理経験は皆無だ。

 料理関係でしたことがあることと言えば、お母さんの手伝いでお箸と料理をテーブルに運ぶこと、あと電子レンジとティファールを使うこともできるくらい。

 それでも今の僕はとってもやる気に満ち溢れていた。

 だって璃月と一緒だもん。

 彼女と一緒なら僕はなんだってできちゃうし、運動以外なら何でもやる気になれるのだから。僕は胸の前で両手を握ると、よぉーしがんばるぞい‼と意気込んだ。

 そんな僕とは裏腹に、璃月はというと真剣な面持ちをして口を開いた。


「さて、鳴瑠くん。まず、お料理をするにあたって、正装ってものがあります」

「さすがの僕でも知ってるよ、エプロンを付けるんでしょ」

「大正解。流石は鳴瑠くんだよ。というわけで、はい、どーぞ」


 そう言ってエプロンを差し出してくる。

 お母さんに訊かないとエプロンの場所とかわからない。ここは璃月から借りることにしよう。差し出されたそれを「ありがと」と言って受け取る。

 慣れない手つきで付けてみようとしたとき、なぜだか璃月は「待って」と僕に抱き着き動きを止めてきた。何か間違った付け方でもしてしまったのだろうか?

 抱き着かれたことに喜び、待ったをかけられたことに不安になる。

 2つの感情が入り乱れる中、僕は訊ねた。


「間違えた付け方しちゃった?」

「ううん、付け方はあってる。心配ないよ。だけどね――」

「だけど?」

「――どーして鳴瑠くんはお洋服の上からエプロンを付けようとしてるの‼」

「ごめん、璃月。タイム。時間を頂戴?」

「お洋服を脱ぐ時間だね。いーよ、待ったあげる」

「違うよ、僕の求めてるのは服を脱ぐ時間じゃなくて、璃月の言葉を理解する時間」

「あ、そっか、鳴瑠くんはお料理したことないから馴染みがあんまりなかったかもね。この機会に憶えておくといいかもね。エプロンは裸の上から付けます。マジで」

「そうだったんだぁ、さすが璃月。物知りだ――とかならないよ。さすがの僕でも嘘だってわかるよ!?」


 璃月は僕のツッコミなどどこ吹く風。

 キョトンとした顔をして可愛く小首を傾げたりもしてる。

 そんな璃月がすんごく可愛いよぉ。璃月が可愛いのは世界の理なのでさておき。

 流石の僕でも裸エプロンがデフォルトではないことを知っている。

 そもそも裸エプロンって普通に危険じゃないかな。

 特に油で揚げる料理だとすんごく大変。

 油がはねてエプロン以外のところに当たったらすんごく痛そう。料理したことがないから知らないけどね。僕はそんな適当なことを思いながら服を脱いでみる。

 全裸になった僕は、それからエプロンだけを付けてみて――、


「きゃー、ナーくんが、はだかえぷろんすがたになってくれたぁぁぁ‼」


 ――裸エプロンに。

 僕のそんな姿を見た璃月は、語彙力低下の歓喜の喜び。

 もうはしゃいじゃってとっても璃月は可愛いなっ。

 それはさておいて、1つ言い訳をさせてほしい。

 仕方がなかったんだ。

 璃月が僕の裸エプロンを待ち望んでたみたいだし。

 それに応えるのが僕の役目だと思うわけで。

 これも全部、璃月のため。

 そう思えば、裸エプロンなど、僕にはお茶の子さいさいなのである。

 とはいえだ。

 むぅー、エプロンの裾、短すぎないかなぁ。

 僕は基本的に璃月に裸を見られるのが好きだ。めっちゃ興奮するし大好き。そんな僕ではあるのだが、この裸エプロン姿は少しばかり違った。

 やってみて思ったのだが、すんごく恥かしくて仕方がない。

 何が恥ずかしいってこの中途半端感だ。 

 全裸なら全部見えているために、逆に落ち着くし。ノーパンでのワンピースや璃月の制服は下から見られるか見られないかのギリギリを楽しめた。

 けど、この裸エプロンは違う。

 前だけが隠れており、後ろの背中やお尻は隠れておらず丸見えという状態。そもそも、エプロンで前側がちゃんと隠れているのかも怪しい。近くには鏡がなく、僕に確認することは不可能。どっちなのかわからない不確定な状況に興奮を覚えてしまう。


「むぅー、璃月。恥かしいよぉ」

「モジモジしながらエプロンの裾をひっぱるナーくん、えっち可愛い――あっ、そだ。私ね、いいこと思いついたの。更にえっちくする方法思いついちゃった‼」


 そう言って璃月はてとてと僕の部屋に向かう。

 え、置いてかないで?

 ここは僕の家。

 誰かが帰って来たら、裸エプロン姿を見られることになるわけで。

 お姉ちゃんに見られる分には問題ないかもしれないけど、お父さんとお母さんはまずい。家族会議まったなしだと思う。はやく、璃月、帰ってきてくれないかな。

 1人じゃ不安・・・・ていうか、待て待て。璃月が一緒でもこの状況はアウトじゃないかな。ちょっと興奮が冷めて来てしまった僕がいた。

 それから璃月はすぐに戻ってくる。

 どうやら、僕がいつも使っているウィッグを持ってきたよう。

 いや、なんでウィック?

 僕が聞こうとしたとき、彼女は先に僕の頭にそれを付け僕を男の娘――ルナにしてきた。それから「私とお揃いにしたあげる」と言ってお団子結びにしてくれた。

 えへへ、璃月とお揃いの髪型だ。

 うれしいなっ♪

 彼女に可愛くしてもらって、僕は楽しくなってしまう。

 そんなウキウキな僕から璃月は一旦離れると、僕の全身を確認。

 どこかのプロデューサーが如く、腕組をして頷くと真剣な面持ちで口を開く。


「うん、男の娘――ルナちゃん状態で裸エプロンの方がえっち。この子、可愛い顔して、エプロンの見えないとこには、えっちなのを隠し持ってる。この背徳感いい」


 うぅぅ、僕の彼女。

 自分の彼氏をどれだけえっちにできるか、ただ考えてたみたいだぁぁぁぁ‼

 純粋に璃月とお揃いの髪型にしてもらって喜んでいた僕がバカみたいじゃないか。ちょっぴり泣きたくなる。なるけど、ぶっちゃけよう、璃月と僕も同意見。

 普通の僕よりも、男の娘の僕――ルナの方が裸エプロンはえっちだと思います。

 似たものカップルがここにいた。

 それは置いて起き、実のところ僕は璃月にお願いしたいことがある。僕の裸エプロン状態の最終形態になったわけだし、僕のお願いをきいてもらうことにしよう。

 そう思い、僕は口を開く。


「ねーねー璃月。お願いしたいことがあるの」

「どうしたの。鳴瑠くんは、私好みのえっちぃ恰好になってくれたし、お願い何でもきいたあげるよ。ま、何もなくても何でもきいたあげるけどね、えへへ」

「それじゃぁね、璃月。僕ね、僕ね、璃月の裸エプロン姿が見たい‼」

「え、私の!?」

「うん。僕、思うんだ。撃っていいのは撃たれる覚悟がある人だけ。それって裸エプロンも一緒なんだよ。裸エプロンにしていいのは裸エプロンにされる人だけなんだ」

「それ、使いどころが難しすぎるよ」

「というよりも、璃月。何でも言うこと聞いてくれるって言ったじゃん‼」

「うん、ゆった。私、鳴瑠くんに嘘とかついたことないし、鳴瑠くんがしてほしいってゆーなら裸エプロン姿にもなったあげる。ちょっと待ってね、準備する」


 ついさっき「裸エプロンが料理する時の常識だよ?」的な嘘をつかれた気がする。

 けど、そんなことはどうでもよかった。

 だって、璃月が裸エプロンになってくれるんだもん‼

 璃月はそれから、エプロン、洋服、下着、と順々に脱いでゆく。そして、最終的には青色のいっぱいフリルの付いた可愛いエプロン1枚だけとなって――。

 これはやばい‼

 璃月のおっぱいがでかすぎて、エプロンがノレンみたいになってるじゃん‼

 くぐりたい‼

 めくってくぐって中に入りたい‼

 また、僕の興奮を加速させるのは、それだけではなかった。

 璃月は普段、裸でも結構堂々としてることが多い。多いのに、裸エプロンでは恥かしいのか、僕と同様に裾をひぱってモジモジしているではないか。その璃月の新鮮な行動は、いつもとは違う可愛さと同時にえっちさもあって最高過ぎるッッ‼


「うぅぅー、ナーくん。これ・・・・思った以上に恥かしいよぉ」

「えへへ、モジモジしてる璃月も可愛いな、えへへ」

「うぬー、私、ナーくんに辱められた気がするのぉ・・・・」

「僕の方が先に璃月に辱められた気がするんだけど、それについては」

「わーわー、知らないもん。むぅー、こうなったら――えい‼」


 裸エプロンの璃月は、裸エプロンの僕に飛びついてくる。

 それからいっぱいちゅーしてきて甘い声で言う。


「クリームシチューに使う食材よりも先にナーくんを調理してやるんだから」

「え、わーい、僕ね、璃月に調理されたい‼」

「こら、今日はナーくんもお料理する日なんだから、調理されるだけじゃダメなんだよ。きちんと、私のことも調理するんだよ。いい?」

「うん、調理するぅー」


 僕の記念すべき、初めての料理は璃月となったのだった――。

 ちなみに、お昼は食べそこねたに決まっている。

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