第36話 部屋訪問と占い
木をふんだんに使用した茶色を基調とした天井の高い2階だての部屋。小さな階段があり、そこを昇ると小さなスペースがあってそこが2階のようになっていた。壁で区切らず階段や段差などを利用した高低差による階分けをしているためか、閉塞感はなく開放感があった。
これをひとえで言葉にするなら「どっかの匠が作ったもののよう」だった。
また、壁やら、天井には少し変わった窓がはめこまれており、そこからは日差しが入ってくる。また、多くの本が収納されている本棚や、小物が置かれた家具たちは物理的に浮いていた。これは匠でも作るのは無理そうだった。
クローゼットも中々大きく、服が多そうだった。
璃月が僕の部屋に訪れた時に軽く話しには聞いていたが、こうして実物を見るとこの感想しか湧いてはこなかった――。
「ファンタジーな部屋だね」
「でしょ」
その部屋の感想が嬉しかったようで璃月は自慢げに笑う。そのことからわかる通り、彼女自身この部屋がお気に入りのようだ。
「この家具ね、魔法都市パリラエッフェルから輸入したの‼浮遊魔法ってのが付与されててね、すごいんだよ‼」
自慢げに語る璃月。
僕や璃月はこの町の出身だから魔法が使えないけれど、他の町や都市には魔法が存在するため僕は対して驚きはしない。
バックグラウンド、というか世界背景というか。
その点について語る機会がなかったから言ってなかったけど、この世界にある街はどこか変わったところが多い。片隅市周辺には学園都市とかあるし、ゲームでなんでも決まる都市もある。また、年柄年中不思議なことが起きる都市もあるわけで。海の向こうには魔法の都市があってもおかしくはない。魔法都市に至っては、ここら辺の学生たちは修学旅行で行ったりするし有名だった。
そんなわけで、片隅市もどこか変わった町になるのだけど。えーと、たしか・・・・。何かの伝説が残る伝承都市などと呼ばれていたはずだ。まぁ、僕たちがイチャイチャをする分にはなんら関係ないため、今は語らないでおこうと思う。
また、他の街でもし世界が崩壊するほどの大事件が起きようとも、街と街の間には次元の壁なる見えないものが存在するため、地続きで行ききはできども、こちらの世界にはなんら影響を及ぼさないということも一応付け加えておこうと思う。
そんな感じの話はさておき。
僕は真剣な表情をつくると訊ねた。
「璃月、ベットの中に入ってみてもいいかな?」
「彼女の部屋に来て、2言目がそれなの!?」
「ダメ、かな。部屋の中に漂う璃月の匂いだけじゃ我慢できなくって、もっと強い刺激が欲しかったんだけど・・・・・」
「恥かしいからやだよぉー。あと普通のことみたいに変態発言しないで」
「むー、ケチ」
「私が悪いみたいに言わないでよ。そもそも、私のベットは衣服厳禁だよ?」
なにその「この車、土足厳禁だから靴脱いで」みたいなの。
そう言えば、璃月は寝るときは全裸なんだっけ。あれ、てことはだよ――、
「僕が全裸でベットに寝て、しかも毛布にくるまれば。実質、全裸の璃月に抱かれてることになるのではないでしょうか?」
「ならないと思うの」
というよりも、璃月はあそこでいつも全裸・・・・じゅるり。
思わずベットに視線を固定してしまう僕。そんな僕の頬をつねりながら、璃月は自身の方へと顔を向けさせ顔を赤くしながらも嬉しそうに文句を言う。
「もー、えっち。ベット見ちゃダメ。私を見てて」
「ごへん、ここはらはりふひをみへまふ」
「鳴瑠くんも男の子だから全裸の私と抱き合いたいのはわかるけどね」
璃月はそっぽを向く。
たぶん、彼女がやりたいことなんだと思う。まぁ、やってみたくないかと訊かれたらやってみたいけど。
頬から璃月は手を離すと、紅茶を一口飲んで喉を潤すとカップを置いた。僕もとりあえず、紅茶を頂く。
「それで、ベットに入れないとなると、何する?」
「彼女のお家に来て、ベットイン一択だったのすごいと思うの」
「そーかな、えへへ」
「褒めてはなかったかなー」
「うーん、それじゃあ、僕の部屋に行った時みたいにさ。璃月が持ってるえっちなものでも探す?」
「私、えっちなもの持ってない。持ってないったら、持ってない。私えっちくないから持ってないもん。だから、探しても意味ないから探さないもん」
軽いノリで提案しただけなのに否定が必死過ぎる。たぶん、何かしら持ってるぞ、これ・・・・。
「もしあるとしたら鳴瑠くんの写真くらいなんだから‼」
「お願いだから僕をR18指定しないで!?」
「鳴瑠くんは私を惑わすし。えっちなことばっかり考えてるし。えっちなことしか言わないから、そろそろ存在をR18指定した方がいいと思うの」
「そーしたら、璃月と一緒にいられなくなっちゃう‼」
「む、たしかに。やっぱり鳴瑠くんの成人向けコンテンツ化はまた今度にする」
一生やめて。
存在がR18は生きていくのがつらい。
「というわけで、えっちなもの探しはやめとこ」
「うん、そうしようか」
下手なはぐらかし方をされた気がするが、同意しておくことにした。とはいえ、僕はまだ璃月がえっちなものを持っていると思っている。
居心地の悪さを感じたのか、璃月は浮いてる本棚から1冊の本を取り出すと、僕に訊ねて来た。
「そーいえば、鳴瑠くん。君は何型なの?」
「血液型のことかな」
「うん、そ」
「えーと、AB型」
「ふーん、そっか。ちなみに私はB型なんだけどね、ふむふむ」
パラパラと本をめくり目当てのページを探し始めた。
読んでいるのは占いの本のよう。そのような本を持っていることから、璃月は占いを見るのも趣味のようだった。
きっと今は、僕との血液型相性占いでも見ているのだろう。
「あ、見つけた」
「どーだった?」
「うーん、これ間違ってる」
あまりよくなかったのだろうか?
僕が不思議そうにしていると、本をこちらに向けて見せてくる。
「だって見てよ。私たちの相性がたかだか80%の好相性とか書いてある」
「んー、んん?占いとしては良い方じゃないの?占いのこと対してわからないけど」
「え、だって私たちだよ。余裕で100%超えてなきゃおかしいと思の。全然わかってないよ、私たちのこと。自分を信じろってことかな?」
そう言いながら、璃月は本を閉じた。
僕は確信した。
璃月はおみくじで大吉がでるまで引き続けるタイプだと。また、大吉でも内容が気にくわなかったら、平気で引きなおすと。
そんなリセマラをやらせないように、僕が注意を払おうと思った。
「うーん、本は信用ならないから、鳴瑠くん。私が占ってあげよーか?」
「いいけど、できるの?」
「できるよ、手かして」
僕は手を差し出す。
どこからともなく出した虫眼鏡で「ふむふむ」と手相を見ている。
「どーやら、鳴瑠くんは好きな女の子がいるみたいですね」
「わ、当たってる‼」
「しかも、その子は近くにいます」
「それも当たってる‼」
「で、それは私ですね」
「当たってる‼」
「すごいでしょ」
「もうちょっと、占いぽいのないの?」
「ひどいよ、もっとのってよー」
璃月は「むむっそれじゃ、ねー」と僕の手をもう1回よく見る。それから言いづらそうに苦笑いを浮かべた。
「・・・・君、生命線みじかいね」
「知りたくなかったよ‼」
「でもね、私も短いの。ほら見て見て、ね。だからお揃いだよ」
「もうちょっとポジティブなところでお揃いがよかったよ‼」
「むー、文句多いなー」
つーん、と口をとがらせる。
その様子は可愛いし、手相の確認をし終わってもぎゅーと僕の手を抱きしめ続ける様子は可愛い。何が言いたいかと言うと、璃月は可愛いということだった。
で、何をしても可愛い璃月は何かをひらめいたような顔をする。
「これだけは確かだよ、鳴瑠くん」
「なに?」
「鳴瑠くんには運命の相手が見つかってて、その子とずーと一緒にいられて結婚するの。それでね、子どもは1人で。幸せに生きて行くんだー、えへへ」
そう言って、璃月は微笑みを向ける。
聞いて僕はこれが『占い』ではなく『予言』であってほしいなと心の底から思う。
子どもの人数などについてはあとできっちりと話しを詰めるとして。僕は今思う素直な気持ちをぶつけることにした。
「そうなると嬉しいかな」
「安心しなよ。私の占いは当たるから」
「そっか、なら安心だね」
対して僕は占いは信じてはいない。だけれど、璃月の占いなら信じようと思った。
僕と璃月は紅茶を飲んでほっこりしたのだった。
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