第4話 初めての電話
お姉ちゃんに帰りが遅かった理由をめちゃくちゃ問いたざされながら食べた夕飯。その追及はお風呂の中にまでおよび、お姉ちゃんと入るハプニングがあったりして。逃げる形で解放された僕は自室へ。これ以上、進撃のお姉ちゃんに何かされるのは嫌なので鍵をかけて籠ることにした。
1時間から2時間程度、璃月と『レイン』でやりとりをして(内容は主ににちあさについて)。互いに『おやすみ』と送ってメッセージのやりとりを終えていた。
☆♡
現時刻、深夜0時。
僕は眠ろうとベットの中に潜ってみたけど眠れそうになかった。
仰向けから横向き(左)、横向き(右)、果てはうつ伏せまで、いろいろ試してみたもののどれも無理。努力は虚しく目がバッチリ冴えてしまっていた。
その原因はわかっている。
初めて彼女ができたという事実が嬉しすぎてもう眠り方とか忘れていた。僕ってどうやって眠ってたっけ。グーグル先生に訊いても教えてはくれなかった。
スマホを見てみる。
特にメッセージが来たとの更新は、残念なことになかった。
「んー、璃月は眠れているのだろうか・・・・・」
眠れていないのが僕だけというのはなんか嫌だ。もやもやするというか。僕だけが意識してるみたいで嫌だった。寂しかった。切なかった。
でも、『おやすみ』を1度送ってやりとりを終わりにしちゃっているわけで。これってもう1回送って大丈夫なのかな?
誰かと夜までメッセージをやり取りした経験のない僕には、悲しいことながらその答えは持ち合わせていなかった。
「待て待つんだ。宇宙町鳴瑠」
僕は思う。
メッセージでは『おやすみ』って言ったけど、よく考えたら電話では言ってない。あー、直接言いたいな。
というわけで、善は急げと僕は『レイン』で通話ボタンを押す。
規則的な、プルプル、という音が僕の鼓膜を揺らす。
それを聞いてると冷静になってきてしまった。
思ってしまったのだ。
いくら恋人と言っても、急に電話をかけるのは失礼ではないかと。しかも今は深夜なわけで。とんでもないことをしてしまったんじゃないか?
僕はそう思えてきて、通話を切ろうとした。
だけど、それはできなかった。僕が切る前に――ガチャリ。
『どおしたの?』
璃月が出てしまったからだ。
しかも、ワンコールくらいで繋がった気がする。めっちゃはやい。
「急にかけてごめん。なんか璃月のことを考えて眠れなくってさ。今、大丈夫?」
『んー、むぎゅー』
謎の唸る声が聞こえて数秒後、璃月は電話に復活する。
『大丈夫』
「さっきの声は大丈夫じゃない気がしたけど」
『やった本人がそれ言っちゃダメ』
「僕、何かした?」
『・・・・・』
わけがわからなかった。
『とにかく、平気だから。私もいつも寝てる時間なんだけど、なんか変なのが頭をちらついて眠れなかったから。ちょうどよかった』
「変なのって?」
『言わない』
「そっか。それは残念。まぁ、変なのってことはきっと、僕のことではないね。彼氏の事を変なの呼ばわりしないと思うし」
『それわざと?』
「ん?」
『ん?』
何かはぐらかされてしまった。
と、ちょっと待て、僕。
今の電話の向こう側にいる璃月って、パジャマ姿なんだよな・・・・・。
僕は璃月の私服はおろか、制服姿もじっくり見たのが今日が初めてだ。ようするになにが言いたいのかというと、僕は璃月のパジャマ姿がみたいなってことだった。
『急に黙ってどうしたの。もしかして、どうしたらこの世から戦争がなくなるのか、それについて考えてたんでしょ?』
「もちろん(嘘である)」
『うそでしょ』
「信じてくれないのかー」
『うん。君は世界平和よりも、私のことを考えてると思うから』
「バレたか。璃月がどんなパジャマを着てるのか考えてた」
『あーそいうことかー。残念なことにその期待には答えかねます』
「どうして・・・・もしかして、中学校のジャージとか?僕的には全然ありだけど』
『中学のジャージで興奮しないで。そーゆんじゃなくて、全裸なの、寝る時』
「これは予想外」
『寝るときは、全裸派。もしかして引いた?』
「ううん、興奮した」
『私は引いた』
「引かないでほしかったなー」
『嘘、冗談。引かれてどう思った?』
「決まってるよ。興奮した」
『さすがに引いた』
「ごめん嘘。冗談だから、引かないでほしいかな」
『仕方がないから冗談ってことにしたあげる。まぁ、大抵のことでは君のこと引かないから安心していいよ?』
危なかった。
深夜のテンションは恐ろしい。
それにしても、
「全裸派かー。是非とも璃月のパジャマ姿を自撮りで送ってほしかった」
『おじさん化してるね』
「僕は高校生だよ。しかも顔とか可愛い部類の男子高校生」
『自分でゆっちゃダメだよ。それ』
「でも、璃月のが可愛い」
『うん、そこで私より自分のが可愛いとか言ってたら、自撮り写真送ってあげなかったよ』
「それって送ってくれるってこと?」
『うん、そゆーこと』
よっしゃ、全裸の自撮り写真とか、しゃっ‼
めっちゃテンション上がった。でも、犯罪の匂いしない?大丈夫かな。心配になってしまう僕がいる。
――カシャ。
微かにカメラのシャッター音がして現在撮影中の模様。
『レイン』では通話をしながら別の操作をスマホでできるらしい。写真を撮っている音がリアルタイムで聞こえてくるのは僕得でしかなかった。
で、待つことしばし写真が送られてすぐに開いた。
さて、どんな写真かな‼
そこに映し出されたのは、首から上の璃月の写真。残念なことに、全裸ではなかった。
だが、彼女の顔は目を閉じ唇をこちらに出しているようなものだった。いうところのキス顔写真ってやつ・・・・――たまらず僕はキスをしてしまった。
まぁ、璃月にはバレないと思うし。うん、普通にセーフってやつかな。ずっと黙っているのも変に思われるので、僕は急いで言葉を紡ぐ。
「これは全裸でも、パジャマでもなかったけど、うん。いいね。僕は好き」
『そっか。で、キスした?」
僕は一瞬、黙る。
お風呂に入ったのに、もう1回入りたくなるくらいに冷や汗をかいてしまった。
黙ったら負けだ。攻めろ、僕。
「ううん、してないよ?」
『さっき、ちゅ、て音、少し聞こえた』
「マジですか!?」
『マジです』
これ逆に恥ずかしいヤツじゃん‼
こんなことなら無駄に隠さなければよかった・・・・。
項垂れる僕に璃月は。
『はい、送って』
「え、何を?」
『もちろん、君のキス顔写真』
「え、僕も送るの?」
『もちろん。私だけ写真送るのはずるい』
「んー、そうかもだけど」
『全裸写真でもいいけど?』
「それはそれで悪くないけど、今回はキス顔にさせてもらいます」
『ん。待ってる』
で、自分で撮ってみる。意外とこれが難しい。
数回撮ってみて、どうにか自分で許せる範囲のモノができあがったので送ることにする。
写真を確認したのか、璃月は。
『うん。可愛い顔だね。実物を見るの楽しみだね』
「むぅ。僕も楽しみ。あと、璃月のが可愛いよ」
『ふ、ふーん』
からかわれそうになったところを、僕はカウンターを入れることに成功。
そこからなぜか璃月の声はない。
寝落ちしちゃったのかな?
彼女に呼びかけようとしたとき『ちゅっ』と、微かに僕の鼓膜を揺らした。
それは先ほど自分で出した音と似ていてすぐに検討がついた。
「あー、これわかるね・・・・・・」
『なにが?』
「キスしたの」
言った瞬間、通話が途絶えた。
初めての電話はこれで終わりか。まぁ、『おやすみ』が言えなかったのは残念っだったけど。これはこれで悪くなかった。
とはいえ、電話をする前より眠れそうになかった。
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