古の地下民族?
赤髪の少女はソファに座っていた。気だるげな目の先にはテレビが置いてある。
一体どのようにして電気を通しているのやら。
「ふむ、雨ですか。道理でじめじめするわけです」
「お姉、ここら辺はそんな変わんないと思うよ」
ソファの後ろから、黄緑の瞳の少女が顔を出す。同じく真っ赤な髪である。
「うーん、それもそーですね。でも外に出たくはないですし」
「もー、お姉ったらぐうたらー。内職しかしてないしー」
「三人の可愛い妹が頑張ってくれているからです。私は幸せ者です」
「そうやって褒めたって何にも出ないけどお仕事行ってくるからね!」
「行ってらっしゃいですー」
いつも頑張ってくれている末っ子に手を振りながら、ソファの横に置いてあるダンボールに手を伸ばす。
中には、ビーズなど、アクセサリーの材料が入っている。
「さて、始めま」
「おーねーえーちゃーんーっ!」
小さな少女が、レーザービームのごとく飛んできた。
「大変、大変なのっ!奥から人が!奥から人が!」
「落ち着けです、ゆっくり話すです」
「うん、あのね、お姉ちゃん⋯⋯」
時は少しだけ遡る。
「この先に明かりがあるみたい。水の音がするから、通り道がありそう」
「そうでございますね。さて、少し登ってきたような気がしましたが」
オウカとフェルニーは、既に10分ほど歩いていた。そして、ようやく広間へと出れるようだ。
広間の入口には、柵がある。
扉などは着いておらず、跳び越えるしかなさそうだ。2人はひょいと、いとも容易く越えた。
「まあ、こんな洞窟に大きな川」
「本当でございます、水汲み場のような…」
木の桶が置いてある。近寄ってみれば、最近使われたのだろう、湿っているのがわかる。
「今も誰かがこの辺りで暮らしているようでございますね」
「こんな地下にねえ。日の光を浴びたくないヴァンパイア、逃亡中の犯罪者とかかしら?」
「ふふ、冗談とも言いきれないのでございます」
恐ろしいことを言いながらも、笑顔は崩さない。
「さあ、先へ進みましょう」
次の通路は、随分と様子が違った。綺麗に人の手が施されている。つまり、先程までの通路はほとんど利用されていない、ということだ。
「だとすると、あの炎は魔術とか魔法の類いってことになるわね」
「やはりそうでございましたか」
落ちてきた部屋にあった松明。魔術や魔法でも、炎のようなものは生み出せる。現の炎か虚の炎かは見分けがつかないが、元素的に二人にはわかったのである。
「ところでオウカ様、この先が行き止まりだったり見知らぬ場所に出たりしたらどうす」
「風を感じてください」
「善処します」
そんなこんな話しているうちに、次の部屋も見えてくる。この通路よりも低くなっているので、はしごでもあるのだろう。
と、その時。
「そこにいるのは誰ですか」
少女の声が響いた。道の先からだ。
その正体を確かめるため、二人はそこから飛び降りる。
空洞の中にいたのは、赤毛の少女。
「全く、どこから鼠が入り込んだのやら」
「入口⋯⋯いや、裏口?からです」
「落ちてきました」
正直なお二人だこと。
「テルー、報告を」
少女は呼びかけると、どこかで足音がしたと思うと、遠ざかっていく。
「そのまま受け取るとすると、三人以上はいるようですね」
「このようなところまでやってくるだなんて、一体何が目的なのです?」
「人探し?」
「そうでございます」
何とも正直なお二人だこと。
「人を探してここへ、と?」
「いやまあ」
「偶然と申しますか」
恐ろしく正直なお二人だこと。
「……」
おかしいね、正直に話しているのに冷たい視線を向けられているよ。嘘も時には役に立つと言うけれど、本当らしいね。
「さては組織の人間ですか」
果たしてなんの組織なのかは分からないが、恐らく人違いだろう。
「組織には所属しているけれども」
「ええ、確かにしているのでございます」
そうそう、Elementsという組織に⋯⋯果てしなく正直なお二人だこと。
「ならば、覚悟は出来ていますね?」
おっとすれ違いが生じてしまったような雰囲気だ。正直さ故に。ちゃんと話し合わないとこういうことが起こる。
少女がペンライトぐらいの棒を取り出したと思うと、次の瞬間、カッ!と、まるで剣を成すように赤い光が放たれる。
「どこかの映画で見たことがあるような」
「それ以上は駄目です検閲により私たちが作者もろとも削除されてしまいます」
ひえっやめとこ。
「その口から漏れる言葉を、組織の情報にしてやりますっ!」
小さな身体が、レーザービームのように飛んでくる。
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