隠された地下通路

 扉を開けた。

 綺麗に整った家具と、やはりそれに積もる埃。

 壁際のシェルフに、目的のものは置いてあった。


(これは!)


 それは、写真。埃を払ってよく観察する。

 写真には、二人の少女と老夫婦が、笑顔で写っている。


 一体なぜ、このような場所に?

 疑問が浮かぶのは当然のことだった。何しろ写っていたのは⋯⋯。




「あら、フェルニー。早いわね」

「何もございませんでしたので」

「⋯⋯そうね、こっちも」


 本当にただの放置された屋敷だったようだ。


「あとは地下ね」


 と決めるのはまだ早いようだ。


「地下があるのですか?」

「恐らくね。正確には空洞っぽい何かが。普通の地面とは思えないくらいの原子の存在を感じたわ」


 元素は、自分を表すそのもの、つまり同じ種類の原子の存在を、察知しようと思えば、それが可能である。


 オウカは、先程自分が探していた方の階段下まで歩いていく。

 そして、そこに敷かれているカーペットを退ける。凄い埃だ。

 するとなんということだろう、目視では何も見えない。


 フェルニーも近づいていく。


「綺麗に隠してあるようだけれど」


 オウカは、床板に手を付き、捻るようにして押した。すると今度こそはっきりとした変化が起きた。

 床板の一部が動いたのだ。


「しかし、持ち手がないと開けにくいですね」

「そうね」

「うーん、仕方が無いですね」


 フェルニーは、スカートの中を漁り出したと思うと、金槌を取り出した。そして、それを振り上げる。


「壊しましょう」


 床板は無残に散った。


「なるほど、ドアと同じでね」


 消えた床板の先には、ぽっかりと穴が空いていた。

 これはフェルニーのせいではなく、元からあったのだろう。


「降りましょうか」


 遠くにに小さな光が見える。


「ええ」


 オウカが飛び降り、少し間を空けてフェルニーも飛び込む。フェルニーは魔法では飛ぶことが出来ないが、魔術なら話は別だ。



「着いたっと」

「えいこらさっと」


 器用に着地する。


 そこは、四角い部屋だった。

 洞窟に手入れが施されている。


「明るい」

「松明がありますね」


 ということは、今も誰かがここにいるのだろうか?


 落ちてきた穴の反対側には、道がある。

 しかし、そこに明かりはなさそうだ。


「仕方ないわ、私が松明代わりになる」

「わたくしにはあまり近づけないでくださいまし」


 オウカは手を広げる。そして、そこに小さな炎を生み出す。


 フェルニーがオウカの後ろを歩き、通路を進んでいく。

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