ひとまず解決?
「そうでしたか、ありがとうございます。フララさんも」
「いーえいーえ。私も出歩いてて悪いねぇ」
どうやら、フララはフィスプでは有名らしく、森に住むお人好しとして頼りにされているという。
今回もまずはフララを頼ろうとしたが、住み着いている小屋を何日も空けていたため、諦めたそうだ。
多分、既に調査をしていたのだろう。
「報酬については、遠慮しておきます。十割フララのお陰ですし」
「全部じゃんか照れるー」
「そうですか。⋯⋯では、代わりに、また何かあった時には頼りにさせていただきましょうか」
「もっちろん、任せてくださいなー!」
そんな三人の会話を聞きながら、スイジーは一人考えていた。
犯人の目的は一体何なのか。相当な力を持っているにも関わらず、周りの生命力を奪ってまでしなければ発動出来ない魔術。
もしそれが実際に発動されたとしたら?
悪いこととは限らないが、周りには何かしら大きな影響が出るだろう。
決して油断していけない。木の枯れた場所は他にもあるので、またどこか別の場所で行われる可能性は十分にある。
(生命を、奪う)
植物だけではなく、動物の命さえも。
誰も触れることはしなかった、あの小さな骨たちが脳裏に浮かぶ。
犯人はその被害を厭わない。
「そうだ、スイジーとやら」
「え?」
「お前さんたちが見たところ、私が犯人を追い詰めた場所なんだ」
「⋯⋯」
「あのリスの⋯⋯遺骨。というか、小動物の遺骨。他のところでは全く見かけなかったよ」
そう言うフララの意図は、一つぐらいしか浮かばなかった。
「はあっ、はあっ⋯⋯!」
月に照らされぬ木の影を裂くように、白いローブを着た人物が走っていた。
どうしてバレた?何度やっても、あの女は自分の前に現れた。
森を抜け、星空の見える場所まで辿り着いた。
ゆっくりと立ち止まり、呼吸を整え、方位磁針を腰にあるポーチから取り出す。
南へ来たらしい。
となると、向こうに見える仄かな明かりは⋯⋯ああ、あの村だろう。ある程度地図は暗記していた。
満天の星。
手を天高く伸ばす。星めがけて。
「私は」
ぎゅっと握りしめ、あの時の決意を思い出す。
「あの時聞いた声を忘れない。どこかの星から届いたあの声を。絶対、夢なんかじゃない」
なぜ自分の元に届いたかはわからない。それでも。
「私は星を目指す」
星へ繋がる道を作り出す。望遠鏡で覗くだけじゃ全然届かない。もっともっと綺麗な星々を私は知りたい。見たい。
争いごとにしか興味のない野蛮な奴らに見せつけてやる。星空の神秘を。恐怖を。広大さを。素晴らしさを思い知らせてやる。邪魔なんてさせない。絶対にやり遂げる。やり遂げるんだ。待ってて、星たち。
噛み締めるように呟くと、再び、濁りのない瞳で前を見据えて走り出す。
「絶対⋯⋯諦めるもんか!!」
邪魔なフードを乱雑に取り払う。
紺色の空に、尻尾をつけた星が見えた。
「⋯⋯約束、だから」
流れ星が落ちるように儚く、少女の口から零れ落ちた。
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