黄金の葉

「あ、あっちに開けた場所がありそうよ」


 木々の隙間にできた細い道を歩き続けていると、エインが突然言った。


「川」


 耳を澄ますと、水が流れるような音がする。

 深呼吸をしてから、スイジーはそちらへと向かう。

 足元に気をつけながら、少し下り坂になっている道を進む。やがて地面には小石が散らばり、さらに進むと小石だけとなった。

 水は穏やかで、そこまで深くはなさそうだ。

 しかし念の為警戒して、あまり近づかないでおく。


「上流の方まで見えるわねー」


 そんなスイジーを気にすること無く、エインは川辺に寄る。


「あ」


 いきなり声を上げたかと思うと、ガバッとこちらに振り返って、


「橋みたいのが見えるわ!よかった、向こうに渡れるわね」

「橋?」

「そ。あんた、水には入れないでしょ?」

「⋯⋯そ、それ、は」


 確かにその通りだ。しかし、長い間ともにいるとはいえ、そのようなことをエインに告げたことは一度ももないはずだ。どうして知っているのかと少し困惑する。


(入れたらぶちのめすってあいつに言われてるからね⋯⋯)


 エインが誰かに、脅される勢いで言われているなど想像もせず。


「あたしも濡れたくはないし、川辺に沿っていきましょ」

「ええ」


 川の中には、小さな魚が泳いでいる。

 この川が生きている何よりの証拠である。

 このまま異変を放っておけば、この命たちは滅んでしまうかもしれない。


 元素は、死なない。自然が全て滅ぼうと、生命が全て絶えようと、死ぬ事は出来ない。そう、生きてなどいないから。

 だからこそ、今ある美しき生を無闇に脅かしてはならないと強く思う。


(もう二度と、侵すようなことがあってはいけない)


 噛み締めるように心の中で呟いた。


「階段だわ、あそこから上がれそう」


 橋の横には、恐らくこの川辺へ降りるためであろう石の階段がある。

 綺麗に整えられた階段を登り、橋の向こうに目を向ける。

 するとそこには⋯⋯。


「あっ」


 目的地へと着いたことを示す光景が広がっていた。

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