道祖の神の気のままに

 森。葉を揺らす木々の隙間には、人の手により作られたような道がある。

 この先は、さえずりの森と呼ばれる場所に繋がっている。小さな草原を挟んでおり、そこが境界とされている。しかし、この名もなき森をさえずりの森に含める場合もある。


 エルスメノス鉄道は、さえずりの森の先にある黒翼の谷という場所を避けて走っているので、さえずりの森にも通っていない。

 異変が起こっていると言えど、森の中は自然の音で満ちていた。


「と、得意げに言ったは良いけれど⋯⋯、宛はあるの?」

「あああああたぼうよ!」

「⋯⋯ラボ送りにしましょうか?」

「サーカス送りみたいに言わないでごめんて」


 意気揚々と調査を始めたはいいが、地図が読めなかった。

 二人に地図を読む能力自体ががない訳では無い。

 ここがどこだかわからないだけだ。


「まあ、いざとなれば飛べば」

「私たち気体じゃない」


 常温で気体の元素は空中浮遊が可能であるが、二人は固体と液体だ。


「ナンテコッタイ」


 エインはまさに意気消沈。


「あーあ。旅の神様とかが助けてくれないかしらー」


 何気なく呟いた。


「!」


 エインの言葉に続くようにそよ風が吹いた。それ自体は何らおかしいことは無いのだが、スイジーは僅かな異変を感じ取った。


「ね、ねえ、エイン⋯⋯その、今、何か」

「んぇ、どしたの?」

「⋯⋯いえ、何でも」


 エインは特に何も感じていない様子だった。今のは自分の過剰反応だったのだろう。

 だって、エインが気付かないで私だけが気が付くだなんて有り得ないもの…。そう心の中で自分に言い聞かせる。


「あー、じっとしてても意味無いわ。あっちの道に行ってみましょ」

「え?あ、待っ、待って⋯⋯!」


 駆け出すエインを追い掛けるスイジー。


 その方向は、今⋯⋯。

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