二十

『コンビニで買い物するのって結構難しいですよね?』


 照美がそう切り出す。


「いや、なんも難しくないやろ。普通にレジ持っていくだけやんけ」


 明人が返す。


『そうですか? ほんなら、うちがコンビニ店員やりますんで、あなたは客として来てください』


「まかせとき」


 明人の合図で二人はコント漫才の形に入る。


 ――ウィーン


 明人が動きで自動ドアを表現する。


『あ、うちの店引き戸ですよ』


「いや、どこのクオリティ求めてんねん! どうでもええやろ、そんなもん」


『おかえりなさいませー』


「掛け声おかしいねん! メイドコンビニか! ニッチな商売すんなよ」


『成人コミックはあちらになりますー』


「いや、お買い求めてないねん! 顔で判断すなや! なんやねんコイツ……」


「あー、とりあえず喉乾いたしコーラでも買うか」

 明人がレジに持っていく素振りをした。


『ありがとうございます。ピッ、百三十円になります。……温めますか?』


「温めるかっ! お前冷たいコーラ、レンジでチンしてるやつ見たことあんのか!」


『ないですね』


「ムカつく奴やなぁ。……あ! 今大きいのしかなかったわ。ごめん、これ、一万円で」


『天国の店長ぉー! 一万円入りまーす!』


「悲しっ! なんで急にそんなシリアスな話なんねん!」


『それではこちら、大きい方から五、四、三、二……』


「なんで減ってるねん! 普通五、六、七……やろが! カウントゼロなったら年でも越すんか!」


『あ、お客様。ただいまキャンペーン中でして、こちらのクジ引きに挑戦出来ますよ』


「え! ほんま? それは嬉しいな……って、何これ! なんか手入れたらヌルっとしてんけど」


『中に生ガキが入っております』


「なんやそれ! 気持ち悪っ! どんなクジやねん!」


『一等はノロウイルスとなっております』


「そんな当たり要らんわ! 無茶苦茶やんけ! もうええわ!」


 明人が照美に大きくツッコんだ。

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